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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1183.成語


 天幕の先に集まっていたのリーダー達を見た狙公そこうは一瞬で理解した。
 肉と血、臓物の入り混じった臭いの中でこちらを凝視する狙には、理性どころか一片の正気すら感じる事ができなかったのだ。

 それどころか、全員が軽く腰を浮かせて今にも飛び掛ろうとしている感じにも見える。
 いや、口元の涎が一気に増えた辺りに確信しか浮かばない。
 所謂いわゆる、命令の徹底? 損耗した兵の所在? 処罰? 薫陶くんとう? 何それ美味しいの? 状態である。

――――やべぇ、食われるっ!

 本能的な理解の直後、狙公は干将かんしょうを鞘から抜き放ち、こちらに向けて飛び掛ろうとしていた狙の群れに向けて構えたのである。
 しかし、構えた剣を振る事は無く、只、その赤黒い切っ先を狙に向けているだけの狙公。
 それだけで宿営の中は阿鼻叫喚の声が満ちた。

 切っ先を向けられた狙は、瞬間で目の焦点が合わなくなり、腕足問わず四肢の関節がガクガクと震え始め、程無く均衡を保てなくなった体を地に投げ打って、ピクピクと全身を痙攣させながら泡を口元に覗かせ始めたのである。

――――良し、次は手下共だ……

 小戎しょうじゅうの狙が残らず昏倒した事を目にした狙公は、周囲に点在している配下の宿営を回って歩いた。
 干将を鞘に戻す事もせずに抜き身のまま、無言で足早に移動し続ける姿は、端から見る者がいれば酷くいびつな行動に映った事だろう。

 実際、敵のみならず味方の兵からも気味悪がられてまともな人気の無い狙の宿営でのこの夜の出来事を、隣接している切り立った岩山の上から見つめ続けている者の視線があった。

 視線の主は低くくぐもった声で呟く。

「人の欲とは恐ろしい物だ…… 狂気を一軍にまで組織するとはな…… どうやら、こいつは無用の長物、いや忌むべき邪剣とでも言うべきか……」

 そう溢した声の主、目撃者である『盗みの悪魔』の名はアンドロマリウス。
 魔神王ルキフェル直属の魔王は手にした陰剣、莫耶ばくやを粉々に握り砕くと視線を狙公に戻すのであった。
 配下の狙全てを廃人と化した狙公は、人目を避けながら陣を抜け、北西に向かって裸馬を駆り始めていた。

 狂気を抑制する莫耶が失われた今、制御不能な人食いの化け物、同種食いを新たに産み出す事は無いだろう、そう判断したアンドロマリウスは身を起こすと魔界へのクラックへと溶ける様に姿を消したのである。

 全ての元凶ともいえるレヴィアタンは海中でバカンスひゃっほぉー気分で居た様だ、馬鹿野郎がっ!

 余談では有るが、逐電した狙公のその後は謎に包まれている。
 反して、干将は七星剣と名を変え、秦の始皇へ、そして西涼の董卓とうたくへと受け継がれて行くのだがこれは、まあ別の話であろう。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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