【2302】 堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第三部 六章 リベルタドーレス ~解放者たち~
2302.アクアワールド
慌てるレイブを嘲る様なシュカーラの声音は非常に清々しい物であった。
「あぁ…… あぁ、潤うぅ! 只の水がこれほどに美味であったとはぁ…… むふぅん、甘露甘露ぉ~♪」
「えっ? ええぇぇっ! マジっ? 美味しいのか、これ?」
尋ねておいて答えも待たずレイブは横方向に百八十度回転し、うつ伏せに浮かんだままゴクゴくと喉を鳴らしながら大量の海水を飲み始めてしまった。
「プハーッ! 何だよめちゃくちゃ美味いじゃんか! ちょっと辛いけどイケるな、これ! 出汁かな? 隠し味的な旨味が凄いんだよ、うんっ! 天空海爺さんてやっぱボケてたんだなぁ~、ノット アクアワールドだったかぁ~ あーそれにしても美味過ぎて飲んでも飲んでもまだまだ飲みたくて堪らないぞっ! 後引くわぁ~! どれどれ、もう一口っ!」
再び飲み始めたレイブ、一口どころかウワバミ並みの勢いで海水を腹に流し込み、結果、浮力が少し減ったらしく沈みかけたりしている。
言うまでもないが海水なんか飲んだら駄目だ、良く聞く塩分濃度がどーたらこーたらだからである。
具体的には、海水の塩分は人間の血中濃度の四倍程度、パスタをゆでる際の塩水に比べれば凡そ半分程度の濃さである。
だから飲むには飲める、但し、摂取した余剰な塩分は排出、つまり排泄する事になる、尿として。
この作業を担うのはお馴染みの腎臓だ、そして大量の水分を要する事も想像に易いだろう。
肉体は大切な排出作業を行う為に全身から必要な水分を腎臓に集中させる、海水まで飲むほど渇き切った体から、である。
これが脱水症状を起こして更に渇く、飲む、渇く、やがて死に至るループのハメ技となるのである。
無論、海水の危険性は塩分濃度だけに留まる訳ではない。
レイブが絶賛していた旨味、まあそれもあるのかも知れない。
何しろ海だ、昆布やもずく、各種磯の風味や貝出汁なんかも利いているのも当然だろうし、鰹やトビウオだって泳いだりしているのだから、ちょっと贅沢な合わせ出汁っぽいのかも知れない。
だがしかし、海の中には安全な出汁成分だけがある訳ではない。
ビブリオ菌やノロウィルス、各種大腸菌がオールラインナップで漂っているだけでなく、フグやカサゴの毒やら産業廃棄物やらだだ漏れし尿処理場のお水やら溜まり過ぎた汚染水、おっと失礼、処理水とかだって含まれているのである。
幸いレイブは幼児期から毒を摂取し続けて来た、所謂、特別な訓練を受けた上でのチャレンジだ、一般人が真似さえしなければ問題無さそうに見える。
しかし、如何に丈夫な消化器官や腎臓を持っていても脱水症状には抗えない、正に、海舐めんなっ! なのである。
天空海爺さんの教えは正しかった、ボケてはいなかったのだ、まだ。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です。
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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