【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1329.先んずれば…
この場に立った私はゆっくりと川縁まで歩を進めた。
春の季節がら、岩山から解け流れる雪は川の水位を嵩上げし、緩やかながらも滔々とした流れの力強さを湛えている。
キラキラとした光を反す水面はまるで、この関を渡らせない様に立ち塞がる敵意に満ちた視線の如く私を刺し貫いて見えた。
私は怖じた。
川の水深はどれ程深かったとしても私の肢を擽る位だろう。
だと言うのに私は怖気付いてしまっていたのである。
無論、水嵩にでは無い。
それまでの安全で清潔な暮らしとの決別、目の前の川がそのボーダーに感じてしまったのだ。
幼い頃からの夢や先祖代々の宿願よりも、庇護された安寧を望む心が上回っていたのだ。
臆病に他ならない。
勇む心を失い見苦しく残された匹夫の自尊心だけが言葉を選ばせた。
『水位が高すぎるし水温も低そうだな…… 大事な役目を前に風邪なんぞ引いても詰まらんからな、えっと、もう暫らくこちら岸に留まった方が――――』
ピョン ダッ! シュタタタタッ!
『えっ?』
臆病な言葉が終わるのを待たず、不意に背中から飛び降りたペジオが川に向かって走り出し、勢いをつけて川面をバシリスクばりに駆けて行ってしまったのだ。
しかも前肢も付いての本気なウサギ走りで、である。
『う、嘘だろ……』
思わず呟いたが、口にするまでも無く現実だ。
しかし、バシリスクの様に大きな後肢でも無いのに一体どうやっているのだろうか?
いや、まあ、後肢はそれなりに大きいだろうが前肢は極端に小さかった筈だ、摩訶不思議だ。
そう思って見つめていると、やはり無理があったのだろう、川幅の半ばの辺りでチャプンと沈んで見えなくなってしまった。
『ぺ、ペジオッ!』
叫びながら慌てて周囲を見回した私の視界に、少し下流の岩に縋りつき、上半身をプルプル震えさせながらよじ登ろうとしているペジオの姿が映った。
大概の兎がそうである様に、破壊の権化と呼ばれた脚力を誇るペジオを以ってしても、非力な上半身では自分の体すら支えられないようだ。
但し、ペジオはペジオ、無論凡百のウサちゃんとは違っていた。
自らの命を維持する為に、長く強靱な前歯を岩に突立てる事で、なんとか凶悪な流れを耐え忍ぶ事に成功していたのだ。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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