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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1149.鬼神


「嘘でここまで連れて来たくせに随分な言い草だな、おいっ! ……ペトラ、ギレスラ、テューポーン…… 少し離れて見ていてくれ、今からコイツをぶっ飛ばして謝らせてやる」

『おうっ! 目にもの見せてやれレイブ!』

『そうよ! 同じヒト種がレイブお兄ちゃんに勝てるもんですか!』

 ジーッ……

 ギレスラ、ペトラの大きな声に対して、ペトラの頭の上に乗ったテューポーンはシャドーキックも止めて成り行きに息を飲んでいるようだ。

 岩太郎はペトラの声にだけ反応を返した、曰く。

「ヒト種? ああ、そうか、そう見えるんだな…… 残念だったね、俺はヒトに似て非なるもの、動物界、脊椎動物門、哺乳こう、霊長目、ヒト科、ヒト属、鬼神種なんだよ、所謂いわゆるオニってヤツなんだ」

 レイブは静かに答える。

「御託は良い、泣かしてやるからかかって来いっ!」

 岩太郎もとい、鬼神種らしい男前のオニはホブゴブリンを無反動で飛び越えてレイブに踊りかかるのであった。
 振り下ろされた手刀を回し受けたレイブはその重さと鋭さに驚いた事を悟られない様に意識しながら心中で唸った。

――――鬼神? オニって事はズィナミ学院長と同格? 確かに鋭さも狙いの的確さも凡百のそれとは違う…… ならっ!

 レイブを包んだ闘気は忙しなく動き続ける両足と、慎重に構えを維持し続ける両腕に集中して行くのであった。

 誰がなんと言おうと、たとえ役立たずと心無い蔑称べっしょうで呼ばれていようとも、自身の研鑽は只々、いつか再び魔術師として復活を果たす、その日の為の鍛錬に他ならない。
 故に、戦闘時に想定する相手は常に人外、飢えによって凶暴さを増した巨大なモンスターなのである。

 人が再現不可能な膂力りょりょくのみならず、様々なスキルやブレス等の特殊攻撃手段を有し、時には上空や土中、暗闇から襲い掛かる凶悪な集団に対して、対人戦闘は無駄、とまでは言わないが、あくまでも修練の枠を超える物ではなかった。

 ニンゲンの中では大柄な自分であってもモンスターと対峙した場合に体格差による勝利は望むべくも無い。
 その事を幼少期から様々なモンスター相手に戦いを余儀なくされてきたレイブには至極当たり前の摂理として骨の髄まで染み込んでいたのである。

 旅立ちの前、学院の模擬戦に於いて生徒たちと戦った際にレイブは様々なモンスターの戦闘を模していた。
 対戦したモンスターの模倣が出来るほどの観察力と再現力、それこそがレイブが育んできた魔術師としての戦闘方法である。

 そして、初見の相手と戦う場合、レイブが好んで模す魔物の名前はアル・マハラージ、それであった。
 ウサギに酷似した最弱の魔物である。
 小さな体躯に貧弱なパワー、野生動物相手であっても時に背を向けて逃げ出す事すらあるモンスターは、レイブにとって自分達、非力なニンゲンの姿と被って見えたのだ。

 そして観察の末に発見したアル・マハラージ唯一の武器と呼べるもの、それが素早くトリッキーな動きを可能にするフットワーク、そして敵の一瞬の隙を逃さない反転攻撃を可能にする俊敏な体重移動法である。

 幼い頃、『反射』によってジャッカロープを狩る日々の中、追い詰められたかに見えた小さなアル・マハラージが巨大なジャッカロープに対して見せた逆転技…… 脇をすり抜けざまに鋭い耳を硬質化させて切り裂く様を見た時の興奮は、長じた今でも鮮やかに覚えていた。
 ねぐらに戻った後、連れて戻った二匹のモンスターの遺骸を使って、師匠達に詳細に説明したものだった。

 その夜から、アル・マハラージのステップ模倣はレイブの日課と為り、優しい師匠たちは生暖かい視線を送り続けたのである。
 
 そして今、レイブは一匹のアル・マハラージと化していた。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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