【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1700.傀儡
ここに着いて最初の頃、屋敷に落ち着いた当初のサタンは非常に楽しそうに日々を送っていた。
田舎(魔界)出のサタンには見る事柄全てが物珍しく、キラキラ輝く瞳で街の中を歩き回っていたのだが……
ヨハンが警護に付けてくれた二つの騎士団のリーダーは例の地下牢の門番だった兄妹で、程無く気安い関係になれたのだが、彼等の配下や屋敷の使用人はそうはいかない、市井の一般領民は殊更だ。
神の母に対して万が一にも失礼が無い様に…… そんな配慮から出された御触れのお蔭で、出会う人々全員がサタナキアに対して頭を垂れてうやうやしく言葉を捧げたのだ。
曰く、
『ああ、神の母よ、我が家は貴女の御子、イエス様に縋る者です』
だとか、
『私は真実を知る者です、我が信仰は偉大なる貴女様だけに…… バアル様ぁっ!』
だとか?
大概はこんな感じであった。
その度にサタンは思った。
――――ちっ! 本人に言えよっ! アタシ関係無ーじゃんっ!
と……
そもそもこの誤解を招いたのはサタナキア自身の責任だ、間違い無く。
神の母、マリアについては当時のバアルの姿を模しただけ、悪気があった訳では無いのだから、まあ、功罪は判断し難いかも知れないが、カーミラが覚醒時に呼んだ『バアル様』を否定せずに誤魔化したのは不味かったな……
化けてるとか偽者だとかは言い難いかも知れないが、せめて他人の空似だとか、良く間違われるんだけどぉ、そんなに似てるぅ? 位は言っておいた方が楽だったかも知れないよね。
そして、サタナキア自身の憂鬱の種もこの事に起因していたのである。
領内の人間達はこの数週間の間、グングン凄まじい勢いで信仰に傾倒して行ったが、その人々は教会に足しげく通い始めるか、若しくは遠く離れた地中海に向けて祈りを捧げ始めたのだ、見た事も行った事も無いカルタゴに向かって、である。
当然、信仰によって高められる魔力の量や質はイエスを通してゼウスのルキフェルやバアルに贈られ、サタナキアにはこれっぽっちも注がれる事は無かったのである。
自前の軍勢と、信徒の信仰による自身の強化を目指したサタナキアの目論見は見事に外れてしまった。
であればさっさと帰れば良いのに、割と寒め(極寒地獄)なニブルヘイムより暖かく、食事や待遇、街の賑やかさと周囲のちやほや具合に後ろ髪を引かれて立ち去り難くなってしまっていたのだ、誘惑する側が魅了されてどうするって話である、やれやれ。
「あーこれからどうしよっかなー、あーあー」
相変わらず不愉快そうな声を発して花壇の中を転がるサタナキアである。
その様子を屋敷の一角、陽の当たらない暗がりからジッと見つめていたのはニャー、カーミラであった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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