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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1179.狂


 確かに……
 食習慣で他人を判断する事は控えるべきだと私、観察者は思う。
 鯨だとかカンガルーとか犬や猫、昆虫から発酵食品、イカ蛸ナマコに雲丹うにルッツ……
 厳密には習慣とは違うかも知れないが、ハラルや酒類禁止等も含めれば、世界は禁則品に溢れているのだ。

 日本人に当たり前な卵の生食や刺身などもその一部と言っても良いだろう。
 賛否の声は止む事無く、事の正誤は宗教観や慣習を争い続け堂々巡りを繰り返している。
 一概に過ちと断じる事は難しいのだ。

 だがしかし……
 同種を食す、このタブーは世界中のほとんどが認める所であった。
 しくも前述のプリオン、レイブ曰く可愛らしいやつの存在が洋の東西、宗教観の違いさえ越えた、共通の価値観となっていた筈である。

 皆さんの時代から見れば一昔前、狂牛病と呼ばれていた病気を覚えておられるだろう。
 文字通り、牛の脳が海綿状に変異する事で奇行を始めたり奇声を発する事から名付けられた病気である。

 プリオンとはたんぱく質からなる感染性因子であり、正常な部位を次々と書き換えて広がりやがて脳の機能に著しい障害を引き起こすのだ。
 因みに、プリオンにはDNAやRNAの様な核酸は含まれていない。
 細菌が繁殖したり、ウィルスが寄生した生物の機能を使って増える事とは違い、只、侵食し続け壊し続けそして発狂させるのである。
 他の事に置き換えるとするならば、他民族の土地に植民した者が文化や宗教を持ち込んで徐々に社会に浸透していく様と、問答無用で皆殺しにする侵略の違いと言えば判り易いかも知れない。
 どちらも多くの死をもたらすと言う意味では似通っているかも知れないが、残虐性に於いてこの二つは一線も二線も画するものだ。

 言うなればプリオンは燎原りょうげんに放たれた火の様な物だ。
 燃やし尽くされた後、そこには何も残ってはいない…… 繰り返すがこれは脳の内部の話である。

 狂う、それは言葉にするよりも途轍もなく恐ろしい事ではなかろうか?
 実際に奇行が見られたり奇声を発し歩行が困難になっていなくても、比喩表現として、狂う、この言葉を想起する場面は数多くあるだろう。

 何かに熱中するあまり、常軌を逸した行動をする人間を見た場合、○○キチ○イ、○○狂と表現する事は、放送禁止用語となった後にも数多く耳にする事がある。
 表現が忌避された理由には、心や精神を病んでしまった人々や、生まれつき脳に障害を持っている人々、しくは様々な理由で認知機能の低下が見られる人々等への配慮が見られる。
 汚い言葉、使ってはいけない表現、既に進歩した我々には不要な文字、それが『狂う』と言う言葉なのだそうだ。

 この忌むべき言葉は皆さんの時代の英断によって果たしてこの世から消え去るのだろうか?
 未来を知る私、観察者がネタバレ的に断言しよう、答えは否、である。
 『狂』、それは人間の心に根深く染み込んで忘れ得ぬ恐怖と拒絶本能を喚起する物。
 最も忌まわしく唾棄だきすべき行為、同種食いを表す文字なのである。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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