【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1321.ちきしょう
出発の際、私は一行に聞き止められない様に小さな声で数度のスキルを発動した。
先祖代々から伝えられた一族の固有スキル『範囲治癒』だ。
倒れて身動ぎもしないままの手下たち、様々な魔獣達に対して、不思議な感情が沸き起こってしまったからだ。
こちらが望んだ訳ではないが、私を慕って付いて来た子分たち……
彼等を置き去りにして先祖代々の目標で、私自身の夢であった場所に、独りきりで旅立つ事への贖罪や後ろめたさ、若しかしたらそれらですらない単なる気紛れだったのかも知れない、が、私は自分の魔力の限界まで使い切る勢いで治癒を掛け続けた。
「一緒に来るなら早くしなさいよ! 置いていくわよ」
『は、はい! 今行きます!』
赤壁に急かされた私は第二の故郷、シセンの森を後にした。
最後に確認した魔獣達は、全身に生気が戻り、顔色にも僅かな回復の兆しが見えていた。
思いがけず安堵の息を吐いた私は既に気持ちを切り替えていた。
ここからは『森王』になって『極東ニンゲン』の役に立ち、先祖の渇望していた立派な王を目指す為に邁進するのだ、振り返っている暇など無い。
北に向かい、最初の岩山を登り始めた時、覚悟を決めた私に赤壁が声を掛けてきた。
「ねえ、豚猪? アンタ、名前はあるの?」
あるに決まってんだろ!
『はい、ダソス・ダロスって呼ばれてました』
「ふーん、二歳だからダダ坊で良いわね、そう呼ぶわよダダ坊」
まあ、いいや、どうせ選択権とかないんだろ?
にしても、すっかり二歳児扱いだな…… これも、まあ良しとするか。
始めは二歳児のごとく、とか言うしな、ん? 処女だったかな?
そんな事に思いを巡らせていると、脱兎、いいや野うさぎが私の背中に飛び乗ってきやがった、こええ。
あれ程の破壊力を有しているとは俄かに信じられない軽やかさで、数回の跳躍を果たしたピョン壁は頭の上に辿り着くなりサワサワと私の頭を弄りだしたのだ。
横に並んだ獅子壁が、前方から目線を逸らさないままで話し掛けて来た。
『『治癒』は疲れるでしょう? 欠損した組織や機能不全に陥った部位自体を修復するからなのよ』
『えっ? あ、あの……』
こっそり『治癒』した事はバレていたようだ……
どう説明したものか? 思い悩んでいる私に赤壁が振り返って声を掛ける。
「今度パリーグが『回復』を教えてあげれば良いんじゃない? ほらダダ坊! アイツ等手を振っているわよ!」
「え?」
赤壁が言いながら指差した方を振り向くと、ついさっきまで倒れていた魔獣達が立ち上がり、揃ってブンブン手を振っている姿があった。
いつの間に合流したのか『煉獄の笹枯らし』や『密林の暗殺者』なんかも一緒だ。
『平原の馳せ王』は無理して肢を上げたせいでよろけたりしている。
「は、ははは、あはははは」
思わず口をついて出た笑いが途切れるのを待たずに、赤壁が悪戯そうな顔をしながら言う。
「見ず知らずの魔獣にも好かれてんのねアンタ♪」
私は答えた。
『ぐすっ、すみません嘘なんです、アイツ等私の仲間だった、いいえ、私の大切な仲間なんです! ぐすっ』
「そんなの判ってたわよ、アンタって本当に馬鹿なのね」
『へへ、すみません、ぐすっ!』
ピョン壁は私の頭を擦る手を早め捲った。
お蔭で頭頂部に出来た毛玉が暫らく解れなかった事は今でも忘れられない。
何故だか涙が溢れた私は視界を失い、その後、足を踏み外して岩山から真っ逆さま、結構な重傷を負ってしまった。
獅子壁のキャス・パリーグが掛けてくれた『回復』は暖かかった。
こうして、『回復』の取得を心に誓った私は生まれて以来、二度目の旅へと発ったのである。
今度の旅は生涯無二の友となる、へんてこで最高の仲間達と一緒だった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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