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【1920話】 堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三部 六章 リベルタドーレス ~解放者たち~

1920.醸せ

 加害者ペトラはまともな面々に口早に告げる。

『どうしよう皆っ! あの馬鹿が余計な真似したせいで起きちゃいそうだわ、竜王っ! どうするの? 起きたら怒るんでしょっ? ねえ殺る? 今の内に殺っとくっ?』

 再びの物騒な物言い。
 しかし状況的には最適でなくとも次善の策だ、目覚めた竜王が怒る確率は非常に高く、そうなった際に彼に忠誠を誓うドラゴン共が一斉に攻めかかって来る事が明らかだったからだ。

 幸い現在はガックンガックンしているので戦闘力は低そうだ、とは言え竜王の里の精鋭兵士、言ってみればドラゴンウォーリアー(近衛)達である、きっといつもは強いのだろう、強敵なのだ。
 竜王の合図と同時に、息を合わせて足を揉み解し、鬱血が回復した瞬間には阿修羅の如き形相でこちらに襲い掛かって来る事だろう、考えるだに恐ろしい。

 そんな想像を一瞬で終わらせたギレスラは躊躇なく妹に指示を出す。

かもせ……』

『え、何? ギレスラお兄ちゃん? 何て言ったの?』

『醸せペトラ、右も左も過去も未来も、自分が誰なのかすら判らなくなるほど醸してやれ! そう言ったのだ!』

『え、えーっ!』

『う、ううーん…… あれ? 余は一体ぃ? つ、痛ーっ……』

『あっ!』

『急げっ! 醸しまくれっ! 死んでも構わんっ! いや、むしろ酔い殺すのだっ!』

『う、うんっ!』
 
 覚悟を決めたペトラは兄の命令に従って、即座にスキルを発動させた。
 その表情からは血の気が失せて大きな鼻は唇同様紫色に変じ、のみならず全身が小刻みな震えを続けている。
 いつもの殺る殺る発言は虚勢、実は優しく常識的なスリーマンセルの良心にして賢い担当、それがペトラの本質だった事が明らかになったのだ、今更。

 しかし敬愛する兄、ギレスラの命には逆らえない、必死に自分を押し殺し、スキル『魅了酒作成』を行使し続ける彼女の目には、対象、グラムランドの急激な変化が見て取れてしまうのであった。

 具体的には覚醒し首をもたげた姿勢のまま、グラムランドの全身は再び紅潮し、間を置く事無く受身ゼロで大地に倒れ込み、同時に大量の失禁、即座の大鼾、追いかける様に戻り続ける吐瀉物と不自然な咳き込みに急激な体温の低下が原因そうな痙攣と呼吸不全、である。

 目に見えて危険な急性アルコール中毒の症状に、術を掛けた張本人、ペトラの双眸そうぼうからは訳も無く滂沱ぼうだの如き涙が溢れて止まらなかった。

『あ、ああー、ごめんなさい、ごめんなさいー、うっううぅーっ』



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です。
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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