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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1436.天啓→天恵


 ガトは再び思った。
 この猫野郎、踏み潰してくれようか? と。

 思ったが、思ってしまってはいたが、今はそれどころではない。
 必死に妙案を、そんな感じで考えている間にも、バイコーンの大群は氷の檻に取り縋って鋭い牙でガジガジガリガリやり続けているのだ。

――――くっそっ! 言い返したいけど猫の言う通り、防御としては無意味、いいえ、敵を入れて仲間を逃がせない点だけ見てもむしろマイナスばかりだわ! 猫には機会を見て復讐を果たすとして、この状況は完全な袋小路? 行き詰っちゃってるとしか思えないんだけど? あぁ、馬鹿猫の言葉に倣うようでしゃくに障るけど、せめて金属板が調整可能だったらぁ! そうすれば『結界』は駄目でも『再生雨』の強靱治癒エニシァシを逆転させて弱体治癒プトゥシ位には変えられたでしょうにぃ! ど、ど、どうすればぁっ!

 心中で思いながら苦々しく視線を送った金属板の手前、山と積まれたムスペルヘイムのホームセンターで売っていたであろう魔石が目に留まる。
 取り扱いを否定されていた社外品の安物は、何やら規則的に明滅を繰り返し続けている様であった。

 次の瞬間、両の眼をクワッと見開いたガトは大声で叫ぶ。

「魔石よっ! あの魔石がバイコーン共の真核しんかくになっているんだわっ! 早くあの石をぶっ壊すのよっ!」

「「「「「『『っ!』』」」」」」

 近くにいた獣人数人とダソス・ダロス、キャス・パダンパが即座に動き、それぞれ自慢の一撃を魔石の山に向かって繰り出す。
 しかし、紛いなりにも破壊不可能を旨とする真核として使われているのだ。
 粗製乱造な特売品の魔石であっても、それなりに強化が施されているのか上手くいってはいない様だった。

 具体的には獣人達のほとんどは手や足を押さえて悶絶の真っ最中、自慢の牙で噛み付いたキャス・パダンパはどうやら神経まで響く衝撃で苦悶と涎を垂れ流し、ダソス・ダロスに至っては巨大な胴体に数十個の魔石をめり込ませたままで小刻みに震えるだけで声も出せない有様だ。

 硬いだろうな、そんな風に予測していたガトであっても、まさかそこまで…… そんな感じでびっくり仰天、言葉を失っていると、更に最悪な言葉が耳に届いてしまう。

『グアッ! ま、魔力、が…… 持たん……』

「え、え? えぇーっ! が、が、頑張ってよギレスラ君っ!」

『す、すまん…… も、最早……』

「う、う、うわーんっ!」

 ドズーゥンッ! フッ!

 ギレスラの体が既に倒れているペトラと寄り添うようにして倒れた瞬間、それまで迎賓館を囲む様に張られていた『氷結捕縛』の格子が消失した。
 直後、間を置かずに殺到するバイコーンの群れの激しく荒々しい足音の中、既に覚悟を決めたガトは瞑目したまま静かに呼吸を整え始めた。

「『反射リフレクション』」

「え?」

 その声は子供の頃から身近に聞きなれたレイブの声であった。
 声変わりを経ても変わり切らない心根の響きをガトが聞き間違う筈はなかった。

 だと言うのに、レイブの言葉はどこか違った意識や性根、別次元とも感じる不思議な違和感を感じさせる。
 しかも、ガトには、いいや性格にはガトの中で一体化した存在にとっては、その声の響きに思い当たる物があり捲っていたのである。

 襲い掛かった全てのバイコーンが塵に姿を変える中、ガトは震える声を搾り出す。

「アスタロト、貴方なの?」

 いつの間にかペトラとギレスラの傍らまで移動していたレイブは眼球を回転させてシュカーラを背負ったままで静かに答える。

「無論、我だ…… 貴様が付いていながらこの体たらく、情けないぞ、弟サタナキアよ、いや、今生は妹、か? ガトであったな」



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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