【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1603.追悼
炎は命の残滓を燃やし尽くし喰らい尽くす事で闇に光を、そして命が不足した生き物に新たな活力と回復への切欠、未来へと続く希望を与える。
主に熱と食事としてである。
日々の灯火と糧としては勿論の事、不安と期待が一緒くたに入り混じる旅路の途上、ましてや先行きに懸念を抱いている集団の夜、しかも大切で掛け替えの無い存在である仲間を失った後と来れば、その恩寵と恵みに対する感謝と喜びは一入どころでは無い、より極まり格段の物としてどこか享楽的にすら歓迎される事となる。
この日、クルン=ウラフの民は十では足りない同胞、兄弟を失っていた。
この日まで、彼等は庇護された民、つまり護られて然るべき存在であった。
始祖であり彼等の遠祖でもあるナガチカが、ヒトとケモノのミックスである獣人にとっての楽園足るべく作り上げた居住地、クルン=ウラフは時代毎に選ばれた森王の犠牲の下で問答無用に護り続けられ、外の世界の残虐な現実から彼等を遠ざけ続けさせて来たのである。
何千年もの間、ほぼ隔絶されて代わり映えの無い単一化された社会生活は、獣人達の心に安寧と言う名のアンカーを下ろしていた。
日々からは刺激や驚きの一切が駆逐され、当然の様に当たり前の毎日が繰り返されて来たのである。
家事も鍛治も畑仕事も本来危険を伴う狩りすらも、昨日と同じ、十年前とも数百年前とも全く同じ、言わばパターン化した日常のリピートと化していたのである。
無論、そんな社会でもヒトは死ぬ、当然の事だ。
いや死はヒトに限った事ではない。
事実、彼等が愛でていた家畜や愛玩動物も僅か数百年ぽっちで身罷ってしまう事が常であったのだ……
獣人達とて例外ではなく、短い者であれば千年程度、長く生きた者でも三千歳には満たなかったと言う…… 悪魔や神々に比べればほんの一瞬、なんとも虚しいものである。
とは言え、クルン=ウラフにはジローやユイが残した『再生雨』の金属板があった。
毎夕、病気も怪我も一旦リセットしてくれるアーティファクトの恩恵は、外の世界に比べれば随分チートで恵まれた社会構築に寄与していた事は誰にとっても想像に易い。
その強固な庇護を突然失い、同時に現れたレイブ達スリーマンセルとガト、ダソス・ダロスにキャス・パダンパの新たな守護者に導かれて始まった外界への旅立ち。
他に選択の余地無く始まった不慣れな日々も、外の世界でも屈指の実力者に守られた道中は、彼等にどこか非現実的な娯楽の如き印象を与え続けてきた。
若しかすると内に秘めていた未来への漠たる不安が、殊更、現実感を薄めさせていたのかもしれない。
野営や野宿の闇にモンスターの気配や天候の急変、寝床に潜り込んだ虫にまで胆を潰されながらも耐え続け、忍び続けて漸く、一旦のゴール、竜王の里が見えた途端の悲劇である。
獰猛で文字通り血に飢えた巨大蝙蝠は、長旅の疲れを癒そうと腰を下ろしていた獣人達に襲い掛かったのだ。
全身の姿はモフリ属性が高いドーベントンコウモリに酷似していたが、縦に並んで伸びた前牙や犬牙は中南米のチスイコウモリのそれと見紛う位に鋭く凶悪な殺意を剥き出しにしていた。
被襲撃者が抗いと戦闘の覚悟を決める一時の間も許す事無く、無音で始まった襲撃を、彼等は持ち前のバイタリティと仲間意識、見た目通りの獣性に由来する突出した個性だけで乗り越えようと試みたのである、それこそ反射的な行動としか言えない瞬時の判断で、である。
具体的に語る事は些か憚る、なにせ無辜の命が奪われたのだ……
………… 観察した内容を伝えよう、そう、私は『観察者』なのだ!
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
Copyright(C)2019-KEY-STU
いいなと思ったら応援しよう!
励みになります (*๓´╰╯`๓)♡