【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1650.ダキアの末裔
もうお判りだろう、カーミラもそんな狂信者の一人であったのだ。
スロバキアの地方領主の娘として生まれた彼女は小さな頃からダキアの裔として育てられ、怪しげな魔術に囲まれて美しく成長した。
その麗しさ可憐さは国中に広まる事となり、スヴァトプルク一世が大モラヴィア王となった八年後、彼女は後宮に迎えられる事になったのだ。
勿論、王には正妃を始め複数の后が既にいた、政略上の理由が多分に含まれた縁組である。
当然、立場は彼女の家がメッチャ下だ、求婚に際して王家からはこの時代の慣例となっていた王の肖像画すら贈られてくる事は無く、たった一通の書簡だけが届けられた程であった。
態度だけでなく内容も酷い物で、王都への立ち入り許可と、彼女の住処になる城内の居室の完成予定、後は随行出来る人員の制限や持込可能な諸道具の注意点だけと言った、事務的で到底婚儀の申し込みとは受け入れ難い代物である。
しかし、カーミラはこの結婚を殊のほか嬉しく思い、夢の様な幸福が待つ物なのだと心からの喜びで満たされて歓迎していたのである。
子供の頃からの自分付のメイドに嬉しそうに語ったのは、婚礼で身につける衣装についてである。
「ねえベラ! ドレスはお母様の赤が素敵よね? 御直しして頂いて刺繍をし直せばきっと見違えるわ! 頼んでおかなくちゃ!」
「そうですがお嬢さま、衣装はあちらでご準備頂ける筈でございますよ」
「あらそうなの…… 残念だわ」
「ええ、でも王家では純白のドレスローブを着ると伺っておりますよ」
「まあっ、純白なの? それは素敵じゃない! ああ、楽しみだわ」
ダキアにとって純白は何より高貴な色である。
皆さんの時代のハンガリーとルーマニア国境の山間で育ったカーミラにとっては、まだ見ぬ王都や王城での暮らしが夢の様な輝かしき未来に映っていたのだ。
確かに未来は夢であった、但し、その夢は思い描いた物とは違い、悪夢と形容した方が正しかったのだが。
以前に掻い摘んだカーミラに関する悲劇が起こったのである。
彼女が嫁ぐ筈だったスヴァトプルク一世がドナウ川で溺死した、所謂ドザエモンと化した、その大ニュースを聞かされたのは王都に向かう馬車の中の事であった。
一行の護衛として王都から送られてきた兵士達がざわめく中、次に齎された報せは、残された王子達がそれぞれのシンパを率いて王位を争い始めたと言う、ありがちだが大変迷惑な内輪揉めについてである。
皆さんに馴染み深い話に毛利元就と三人の息子、毛利、吉川、小早川の三本の矢があるでしょう?
その原形がこのスヴァトプルク一世とその後、兄弟で血を血で洗う泥沼の戦いを繰り広げた王子達の話なのである。
三本の棒を折れと言った父、スヴァトプルク。
誰一人折れずに憮然とする王子達。
一本だけで試させるスヴァトプルク。
見事に折ってみせる王子達。
な? 仲良くしろよ? じゃなきゃ国、滅んじゃうぞ? 諭す父スヴァトプルク。
お互いに憎々しげに睨み合う王子達。
からの内紛…… 言ったじゃん、滅ぶってぇ!
である。
まあ世界史的に有名な話ではあるが、毛利さん家ではアプローチが逆だ。
まず一本だけで折らせてからの三本チャレンジ…… ヌフンッ、我最強から急転直下のガッカリ、何だ駄目ジャンっ! を演出している、見事な手法である。
兎角、自分の力を過信している感じの子供は、シュンとなった時の方が聞く耳を持つ物だ、でしょ?
外国の話のパクリかよっ! チョーつまんねー! そう断じてしまう前に、皆さんの国が持つこう言った変態染みたきめ細やかさにこそ、着眼して誇って頂きたいっ! 私、観察者は老婆心ながら願って止まない事でもある。
良いんだよ、発明なんかしなくても! それを学んで、どこよりも良い物に昇華させるのが日本人なんだからっ! 真理だと思う。
学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆し、ってヤツだろう。
皆さんが罔くも無く、ましてや殆い目にあわない事を一心に願う私、観察者である。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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