【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1704.呪いの伝播
兎に角、価値観のほぼ全てが他者から得る豊かさと安全、相対的な安心へと変化してしまったダキアの里には、禁忌を破って呪われる様なまともな人間は皆無だったのだ。
ダキアの誓いはサルモクシスやゲベレイジスを介して己に課す約束だ。
端からこうありたい、そんな風に願った事が無い者が破った所で呪いが発動される事は無い。
『お母さん、今日友達の家で羊を食べるんだけど行っても良い?』
『まぁ、本当はいけないのよ、家はほら、ダキアだから』
『えぇーお願ーい! 友達も皆来るって言ってたんだもーん!』
『仕方無いわねぇ、今日だけ特別よ? それとお父さんやお婆ちゃんには内緒にしときなさいよ』
『やった、お母さん大好き♪ いってきまーす!』
『あ、待ちなさい! ほら、お土産にこのワインを持って行きなさい! これも内緒だからね』
『うん、判ったよ』
『遅くならずに帰って来るのよ』
『はーい』
的な家庭環境で育ったダキアが呪われる事は無いのである。
最初の砦に辿り着いた後、現状を知ったカーミラはガックリと肩を落としトボトボとその地を後にした。
以来五百年余、一人ヨーロッパ中を彷徨った結果、かつての自分と同じく呪いにかかる同胞を二人見つける事に成功したのである。
一人はトランシルバニアの領主子息、オスマンに囚われていた人質だったが頑なに羊を食べる事を拒否し、体を鍛え続けてきた様だった、当然、場所が場所だけに飲酒も無しである。
一時的に国に帰った際に生じた誤解によって、共に囚われていた弟を処刑され怒り心頭に発した時に訪ねて来たカーミラに諭され、甘んじて呪いを受ける事になったらしい。
彼は不死の肉体と吸血し眷属とした軍の力によって弟の敵を討ち、国内外から英雄と呼ばれたままその姿を消した。
生死も判らぬままの彼を、人々は畏怖を込めて『ドラキュラ』『串刺し公』と呼んだ、ヴラドである。
いま一人の同胞はニュルンベルクの娘、出会ったのは嫁ぎ先のリヒテンシュタインの城での事であった。
持参金と政略目的で嫁いだ家に彼女の居場所はなかった。
夫とその家族だけではなく、彼女に対する執拗な虐待は使用人達にまで及んでいた、正に針の筵だ。
何より辛かったのは毎日の食事の殆どに羊の肉とワインが供された事であった。
隠れてサルモクシスへの信仰を残していた彼女はそれを拒否し続けた。
その姿を家の者は侮辱と捉えた。
都市部の新興貴族が山間の旧家を馬鹿にしていると考えたのである。
直に彼女の食事は一杯の水とカビの生えた硬いパンだけとなった。
辛く孤独で楽しみの一つも見つからない生活の中、彼女は夫に願った。
『小さくても良いのです、地下に祭壇を造って下さいませんか?』
と……
夫は彼女の願いを聞く代わりに、彼女を地下牢に幽閉した。
かつては男勝りで活発が代名詞だった彼女の容姿は、見る影もなくやせ細りまるで老婆の様に変わってしまっていた。
遠からず衰弱して死に至るだろう、そんな日々を彼女は薄暗い地下室で手紙を書き続ける事に費やし続けていた。
宛先は実家のニュルンベルク家、父の跡を継いだ兄である。
迎えに来て下さい、そう書き綴った手紙が捨てられていた事を悟った時、絶望に沈む彼女の前に現れたのが錫人形のカーミラであった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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