【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1220.息詰まる
なんと言う事だろう、戻って来た金属の巨人はスリーマンセルが身を潜めていた池の目の前で立ち止まり、あろう事か膝を崩して座り込んでしまったではないか。
それだけでなく、巨大な顔面を水面に寄せて、感情の読めない凹目で池の内部を凝視している様にも見える。
ペトラとギレスラは水越しに眺めていたが、自然、水面から突き出している鼻先の息が荒くなっていた。
一方のレイブは既に苦しくなり始めてしまっていた様で、ギュッと目を瞑ったままで、頬を膨らませたり萎めたりを繰り返して胸の苦しさを誤魔化している様だ。
余談かも知れないが、この対処法は一概に間違いとは言い切れない。
ニンゲンが呼吸後に吐き出す空気には、今回の置換作業によって使用されなかった純粋な酸素が結構な量含まれているからである。
二酸化炭素は呼吸に足らない。
しかし、この吐き出しているCO2にも二つの酸素原子が含まれているのだ。
肺で血液のリフレッシュに使用し切れなかった余剰な酸素は吐気と共に排出されているのである。
新たな供給源を失った際の、緊急用の吸気には取り敢えず事足りるのである。
無論、そのままでは生命を維持する事は出来ない。
徐々に細胞の汚染率を上げた身体は、頭痛や四肢の麻痺を経て、耳鳴りや吐き気、体温の急上昇、全身脱力に至り、やがて幻覚やチアノーゼ、更には全身痙攣の後、失神昏眠、呼吸停止、身体麻痺、心臓停止、つまり死を迎えるのだ。
全ては食事として捕食した炭素を気化させて自然界に戻す、その為の行動や熱の燃料に酸素は不可欠、そう生まれた生物の避けられない機能ゆえである。
カーボンニュートラル? えっ! 炭素ベースのニンゲンがそれ言っちゃいけないんじゃあ?
そんな私、観察者の気持ちは兎も角、今レイブは自分自身の排気リサイクルによってボーっとしつつも何とか命を紡いでいる最中だったのである。
一方のギレスラとペトラは、呼吸だけはしっかり確保しつつも、目の前に迫った無感情な巨人の顔に恐れ戦いてしまい、肝心の呼吸も忘れて固まるのであった。
巨大な鉱物の塊には一切の知性や感情、意思の類は持ち合わせていないかに思われたが、その予想は呆気なく裏切られるのである。
『生者が何故この地に足を踏み入れた? ここは死に行く運命の魂が一時だけ留まる場所、『石化の谷』である! 我はこの地の番人、魔王タロース、又の名を鉄人…… さあ、その水から出て生者の住処へ戻るが良い、そして再びこの地に足を踏み入れてはならぬ! 努々忘るるなかれ』
『『っ!』』
意外にも丁寧な名乗りを織り交ぜて話し掛けられただけでなく、さりげなく立ち去るように促されたのである。
オーディエンスの皆さんに馴染み深い故事成語に置き換えると、『お嬢さん、お逃げなさい♪』的な出来事が起こった訳だ。
とは言え、池の水越しにも声の迫力は重低音で暴の気配が滅茶苦茶強い。
ペトラとギレスラは素直に顔を出すべきか、聞こえない振りでシカトを決め込むか、思い悩んだ一瞬後、赤い巨人、タロースが選択肢を潰してくれる。
『優しく言っている内に聞いておけよ、おい! なんならその水溜りごと踏み潰してくれようか? あ?』
ザブッ! × 2
事ここに至っては最早詮無し、覚悟を決めたペトラとギレスラは同時に池から顔を出すのであった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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