【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1644.隠里
ここで改めてこの里について補足をしておこう。
名も付けられていない山岳の小さな集落、総人口は千に満たない、同数の羊と仲睦まじく暮らす素朴極まり無い村である。
位置は皆さんの時代で言えば、ルーマニアのブラショフの西、モルドベアヌ山の山間に当たる。
この山麓に点在する湖を中心に暮らしていたのがイーチ達である。
里に出入りするには東西の登山道、これは当時は整備されていない、ってか荒らされ捲って人が通れる代物では無かった。
となれば南北に渡る峻険な川筋を辿るしかない訳だが、これらが先程会話に出て来た北と南の峡谷、どちらも垂直に切り立った崖の隘路を越えなければならない、見るからに危険そうな場所になる訳だ。
「ふむ、見るからに伏兵がありそうな……」
多分、後世の軍師とかだったらそう言って足を踏み入れる事はないだろう。
しかもこの川の底、ボコボコの瘤だらけで唯歩くだけでも困難を極めるのである、しかも水流も年がら年中凶悪で激烈らしい、理想的な隠里な訳である。
何を隠そう、四方八方から攻め込まれたゲタイが造った防御壁、強固な砦が作れなかった二地域、これがその天然の要害だったのである。
頑張って越えた所で純朴なムキムキ人がキョトンとしているだけ、攻めるだけ馬鹿、そんなビックリ箱的な気分で要衝に数えられていた非重要拠点こそがイーチ達の故郷だったのだ。
ゲタイの首脳部、平地の民の狙いは過たず、周辺の諸民族はこの戦略的にも国益的にも何の価値も無い山奥の村を、攻め易し! そう考え攻めて来てしまったのである。
崖を飛び降りたイーチ、イートゥルは風の様に里の中を走った。
流石は成人を果たしたメンバーの中でも一番の筋肉保持者だ、後続の仲間達がぶっちぎられてキラッと光ったきり気配すら感じられない位、正に韋駄天(先祖の仇、スカンダの別名)である。
やがてゆっくりと足を止めたイートゥルの前には、報せに駆け付けたサンドラの姉、ローザリアが幾つかの生首を抱えて涙に濡れる姿があった、彼女はイートゥルの兄、カリオペと同窓の成人でもある。
南麓の峡谷とは僅かに二十キロ程である、こんなに近距離の走破で珍しく息を切らせているイートゥルの慌てた姿を目にしたローザリアは逞しい肩を震わせながら言った。
「イーチ…… ごめんなさい…… あなたの家族、守れなかったの……」
「ローザ…… そ、そんな……」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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