【2129話】 堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第三部 六章 リベルタドーレス ~解放者たち~
2129.フォーミュラ
『何よ、エバンガ、アンタやる気無いわね』
師匠筋のペトラに言われたエバンガは必死の抗弁を試みる。
『違うのよ、ほら、あたし達の蹄や足ってロケットスタート向き、所謂、猪突猛進用じゃない? 牛やラクダみたいな荷役より別格のスピードスター、つまりファンタジスタな訳でしょ! やる気云々とかじゃなくて生まれつきの役目ってか個性? 体の構造がほら、ね? 周囲の期待的なモノだって無碍には出来ないじゃない!』
そこはかとない選民意識が見え隠れしている。
『ふーん、アタシは沢山背負えるけどね……』
だよね。
『あら良いの? 観客の声は? アレ等があたし達に求めているのは爽快な疾走、革命的なコーナーワーク、挑戦と進歩、そして時折垣間見せるドラマティックな物語、なのよ?』
何のフォーミュラなんだよ、そもそも観客って?
『はぁ~』
ペトラの溜息は深い、調子に乗った大鹿は更に声量を増して畳み掛ける。
『思い出したようね♪ さあ邪魔な荷物なんて打ち捨てて草原を疾駆しましょう! 駆け抜ける風、それがアタシ達選ばれし者の役目よ! 誇り高き、追われ続け逃げ続ける運命を謳歌するのよっ!』
それ被食者、プリィ、つまり獲物って事だよね? 誇りを感じていたのか…… 意外だな。
吐息以来、俯いたままのペトラの周囲を剣呑なオーラが包み込む、何と言うかご機嫌斜めなご様子だ。
『なってないわね…… エバンガ、アンタ自分が何か判っているのかしら? 魔術師の厳しい日々を支え闘竜と共に歩む名誉ある獣奴なの? それとも気ままにフラフラして草だの木の皮だの食むだけの無意味な生涯、害獣だとかジビエだとか呼ばれて旨みと弾力ある歯ごたえ、それに慮外に臭みの少なさをウリに晩餐会の主役として食われて有終の美、それを目指す野生の獣のままで良いのかしら? 強制はしないわ、自分で選びなさいっ!』
口調と例題の示し方で充分圧迫していくスタイル。
『あ、えと…… アタシ、どうすれば……』
『自っ分っで選びなさいぃぃっ!』(アゲイン)
語調と共に圧迫を強めていくブルスタイル。
後ろから口を挟んだのはギレスラだ。
『エバンガはグルグルすらさぼっていたのだ! つまり、そーゆー事なのだろう、な……』
『えっ、いや、それは……』
俯いたまま、いつになく眼を見開いて固まるペトラ…… ほんの一呼吸、深く吸い込んだ息と同時に立ち上がり、どこか遠くを見る様な素振りで横を向きつつ言葉を続ける。
『…………うん、そっか、そうなのね』
短い言葉、しかし、それだけに様々な意味を深読みさせるには十二分だったらしい。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です。
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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