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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二部 四章 メダカの王様
741.ダゴンの守護

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 声の主はササっとナッキの横に並ぶと改めて声を掛けてくる。

「ナッキ様、この者達、カエルも配下にお加えになるのですね、王様の決断です、モロコは全面的に賛成です!」

「カーサ?」

「その上で下の池への移住ですよね、流石はナッキ様ご英断です! では我々モロコも準備を急ぐといたしますね♪」

「サムさん……」

「えーカエルの諸君、メダカの王国へようこそ、歓迎しますよ、事務的なことは後でも構いませんが私たち、モロコ議会の方で作業させて頂きますのでご協力を願います、それで良かったですよね、ナッキ様?」

「ぎ、議長さんまで…… 一体どうしたのさ君たち? モロコは話が纏まって議会で認められないと動けないんじゃなかったの? それにいつの間に君たちが王国に入ったのさ! 伝統を重んじるんでしょ?」

 どこかに隠れて成り行きを見ていたのだろう、三匹はやや気まずそうにお互いの顔を見回していたが、やがてカーサが覚悟を決めたような顔で言った。

「メダカの王様ナッキ様、どうか我々モロコも王国の民として受け入れてもらえませんか? 何卒なにとぞ何卒ぉー」

「えぇ? まあ、あんなに堅苦しい事とか言われたら嫌だけどさぁ、そこら辺は大丈夫なの? メダカやカエルの皆に強要したりしないって約束できるの? どう?」

 この言葉にはサムが答えた。

「もちろんですよ、郷に入っては郷に従え、ですよね? 皆さんに合わせます、決まってるじゃないですかぁ」

 ナッキは横目だ。

「君言ってたよね? 古くからのおきては変えられないとかさ、後はぁ、反吐へどが出るだとか、虫唾むしずが走るだっけか? そこら辺は良いの?」

「あ、あれは、その…… お、王様を試したんですよっ! こう、お慕いする気持ち故と言いますか何と言うか…… ほらあれですよ! 子供が我儘わがままを言ってぐずったりするでしょう? あれって物が欲しい訳ではなくて、親の愛情を確かめてるとか言うじゃないですか! そ、そんな感じ、で、えっとぉ……」

 ナッキの責める様な横目と、厳しさ満点で引き締められた口元を見たサムは、徐々に声のボリュームを落として行き、最終的には黙りこくったのである、今は控えめな嗚咽だけを漏らしていた。

「まあまあ、王様、許してやって下さりませんか? このサムとて必死に先祖の残した言葉を守ろうとしていたので御座いますよ」

 まだイライラしていたナッキに評議会議長のモロコが言った。
 ナッキはまだ疑っている、そうとしか思えない顔つきで聞き返すのであった。

「先祖の言葉ぁ? 何? 何か言われてるって事ぉ?」

「ええ、実はですね――――」

 その後、議長のモロコが話してくれた内容はこんな感じであった。


その昔、モロコたちの先祖は、この池ではなく遥か遠い所にある、四季折々の景色が美しいそれはそれは平和な場所、清流の中で幸せに暮らしていたそうだ。
 そこには美しいだけでなく、彼らを守護する頼もしい存在も共に住み暮らしていてくれた、まるで楽園のような所だったらしい。

守護者の名はダゴン。
 魚類をこよなく愛する豊穣の神であり、屈強な悪魔だったと言う。

やがて、神であるダゴンは彼が仕えていた自分の息子、大いなる神、『魂の牧童ソウルシェパード』バアルに従って、更に上位の魔神王と共にどこかへ去っていってしまったらしい。
 モロコ達は、敬愛するダゴンが言い残した言葉に従って、彼と共に行動していて彼が去った後も残っていた仲間たちに誘われて、この場所、池に移住をした、そう先祖達が言い残したんだそうだ。


 議長は感極まっているのか、目尻に涙を湛えながら言う。

「そしてダゴン様は旅立ちの時、我等モロコに向けて仰ったそうなのです…… 『いつの日かの大いなる存在が復活を果たし、お前たちの前にそのお姿をお見せになる日が訪れるかもしれない…… 我が子達よ、もしそうなった時は、一切の躊躇を捨てて彼の方に従うのだぞ、良いか? あの忌々しいバエルの子らに遅れを取ってはてはならんぞ! いの一番に従うのだぞ!』と…… そしてこうも言われたと伝わっている気がします、『変化を恐れてはいけない』とも…… まあ、わざわざ言い残さなくてもモロコも変化を恐れませんけどね」

 ナッキは神妙な顔で聞く。

「き、君たちも変化を恐れないの? それは? 何故?」

 議長が明後日の方を見ながら答える。

「えっ? えーとぉ、そ、それはあれですよぉ! モロコですからねぇ、モロコはモロコ、なんつって……」

 オチない事は途中で想像出来ただろうに…… 残念だ……

 いいや、むしろ出来る事を精一杯にやり遂げた議長に何か感じたのだろうか? ナッキは目尻に薄っすらと涙を湛えて大きな胸鰭を叩いてパチパチとやりながら言った。

「ナイスファイトっ! 僕は評価するよ、その勇気っ!」

 殿様も続いた。

「あれだよな、なんつっては止めてさっ、オチて無くても声のボリュームを上げてもう一回言うとか、変顔とか奇怪な動きとかに変えたらさ、これはこれで無くはないかもしれないと思ったよ! 良い流れだったと思うし、なっ? 皆」

『ははっ!』

 議長は照れて、カーサとサムは頻りにぺこぺこ頭を下げて笑顔を振りまいていた。


拙作をお読み頂きまして誠にありがとうございました。

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