【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1192.稽古
慎重に視線の先を遮りながら不自然な方向転換をしつつ答えるレイブである。
「ヒュッた、ゴホンゴホゴホッ! か、型ですか! で、ではこちらで…… えっと、何からやりましょう?」
じわじわと立ち居地をずらして草の山から、いや元々草の山が有った辺りから距離を取ったレイブはオドオドとした態度でグフトマに問い掛けた。
グフトマは呆れた表情に笑顔を混ぜて答える。
「いや、いつもお前がやっているままを見てやろうと思ったんだが…… まあ良いか、んじゃ『水波』からにするか、出来るか?」
「は、はいっ! 『水波』」
『水波』はグフトマが編み出した鍛錬の型、主に五体全身の筋肉の連動をスムースにする為の基本動作、平たく言えば、所謂準備運動の類である。
とは言え、単純な動作の繰り返しによって前後、左右、上下の随意筋の相互補完関係を知る事ができる稀有な鍛錬法として名を馳せており、この時代では師匠から弟子へ直伝で、要は一門以外にとっては門外不出の技の一つとされているのだ。
右手を前に差し出す際、意識は左の腰付近の硬化と左ひざの開き、同時に正中線の背面の脱力、更にはその周辺の緊張までを一つの動作とする。
同様の所作が各部位で五十六。
その全てを無意識で繰り出せるまで反復し、水面に広がる波紋の様に淀み無く流れる連舞が『水波』である。
レイブ自身も幼き頃から休む事無く続けて来たこの舞いに、いつしか無心となって没頭し始め、やがて滞りなく一連の所作を修めて静かな残心に至るのであった。
「ふむ、では続けて『雪風』」
「はい、『雪風』」
足捌き体捌きを主とした『雪風』、相手の動きに合わせたカウンター技が中心となる『虎牙』、突き蹴りの打撃の動きに特化した『苛星』と続き、最後に受け技といなしを集めた『虚草』、一連の型を終えたレイブは全身に鋭気が満ち溢れ、普段の朝と変わらぬ充実を感じるのであった。
「以上です」
「ふむ、教えを守って真面目に繰り返して来た様だな、一つだけ良いかな?」
「は、はい!」
「ではもう一度、『苛星』からだ」
「はい、『苛星』」
素直に型を始めるレイブに相対したグフトマは、足元の地面に落ちていた小枝を拾い上げると気軽な調子でレイブの間合いに踏み込んでくる。
手順通り、激しく繰り出される拳と蹴り、手刀や肘、膝、頭突きを難なく交わしながら、時折手にした小枝でレイブの体を軽く打ちながらグフトマの声は響く。
「少し出過ぎだ、こちらは遅い、その引き足は余計だな」
「は、はいっ!」
「むきになっても無駄な力を入れるなよ? 基本は『水波』のまま、良いな?」
「はいっ!」
「ではそのまま『虚草』だ、この小枝を避けきれよ?」
「お願いしま、うおっ!」
宣言の直後、間を置かずに繰り出された小枝はレイブの顔面に迫り、必死の形相で躱したレイブの左肩を真っ直ぐに打ち据えたのである。
「くっ!」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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