【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1741.触らぬカイムに祟りなし
…………
賢明なオーディエンスの諸氏であれば既にお気付きだろう。
バアル達がいるクルムバッハから見て、カイムが向かっているルターさん家があるアイスレーベンは北東に位置している、つまり少し前に飛び立った村、ノヴァ・ルダから真っ直ぐに向かった場合、真北を飛んでいる筈が無いのだが…… 残念ながらこの時点のバアルには知り様も無い事なのである。
バアルは異常に高められた視力で更に目を凝らす。
「あはは、一所懸命に翼を動かしてるよアイツぅ! 良い悪魔、それも魔王種が野生動物みたいに移動に必死だよぉっ! あはははは! なんか色々可笑しいよねアイツ? 魔力とか強い筈なんだけどさぁ、あはははははーっ!」
魔力の残滓が不穏だった、そんな事態は一旦横に置いておく事にして、まずは嬉しそうな主に惻隠してあげる忠臣のハミルカル、優しい。
「それはケッサクですね我が君ぃ、どうです? やはり真剣そのもの、真顔なんですかね? 鳩?」
「見てみるねー♪ ……はうっ!」
調子に乗ったバアルは視界に捉えたカイムの姿を限界までズームアップした。
どこの豆を目指しているのか必死に翼を羽ばたかせる姿はどこか滑稽ですらあったが、ハミルカルのリクエストに答え様とその焦点、ピントをカイムの顔に合わせた瞬間、何か不自然さを感じて思わず変な声が出てしまうのであった。
理由は単純明快、前方を目指して飛び続けるカイム鳩の顔は真剣そのもの、本来飛翔が苦手な鳩が高高度の長距離移動だ、それも無理は無い。
無いのだが、真っ直ぐ前だけを見ているカイムの片目がこちら、遥か遠くから見ているバアルの瞳に照準を定めている様に感じられたからである、普通の鳩、いや凡百の魔王であっても容易な事では無い。
見ている? そんな馬鹿な! そう思ったバアルは、自分に向けられた鳩の瞳に更なる視力と注意を集中させる。
そこに……
有でも無でもない、不安定でありながら弾け出しそうな飽和と緩慢、先程スキルカルマで潜行した際に見た『混沌』が確かにあった、少なくともバアルには同質の不気味さが感じられたのである。
ゾクっ!
「帰るよっ! ハミルカル、ハスドルバル!」
首を振って視力を戻したバアルの決断は早かった。
やっと和気藹々としたムードからの唐突な帰還宣言、二柱の悪魔は口々に言う、当然だ。
「我が君? どうされました?」
「カイムが真顔じゃ無かったんですか?」
そんな暢気な声には答えず、無言のままで空間にクラックを開いたバアルは険しい表情のままで告げる。
「さあ入るんだよ! 暫くはヘルヘイムに篭もっていよう!」
「は、はいっ!」
「承知! あ、でも我が君、南の山際に数体のモンスターもいるみたいなんですけどぉ……」
「そんなのどうでも良いよっ! そんな事よりもヘルヘイムをしっかり護らなければならないんだっ! 急ぐよっ!」
「はいっ! 倅よ!」
「は、はいっ、只今っ!」
カイムの瞳に何かを感じ取ったバアルは、こうして現世を後にした。
これより暫らくの間、とは言ってもフランスのランでニコールオベリーに話し掛けるまでの八十年程の期間に過ぎないが、取り敢えずは現世をフラフラして趣味のコスプレ衣装集めは少しだけ慎む様になったらしい。
兎に角、十世紀から五世紀間に及ぶバアルとサタナキアの暗躍は、一先ずここで途切れる事となるのである。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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