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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1666.ドーピング


 考えても四、五百年では解決策一つ見つからないであろう事に思いを馳せている間に、十数回の刺突を繰り出したイザベラであったが、攻撃を避けもせず受け止めたハスドルバルの胸は、次の瞬間には何事も無かったかの様に塞がり、あまつさえ一滴の血すら流れ出してはいなかったのである。

 この回はトラキアの刃がフェニキアに届く事は無かったらしい、歴史は幾度でも繰り返されるのだ。

 そうこうしている内に、一方的な凶刃を振るっていたイザベラの腕が、ボロボロと崩れ出して見る見る間に短刀を掴んだ形のまま、脇の地面に生生しい音と同時に落下して動かなくなった。

 ハスドルバルは目の前で鬼婆っぽく髪を振り乱したイザベラに語り掛ける。

「ほら、既に朽ち始めてるじゃないか」

「くっ! なんのっ!」

 どちらかと言えば物静かに話すハスドルバルだがイザベラはとっくに敵認定を決め込んでいるらしく、スカートを翻してバク宙を決めて距離を取り、回転しながらエプロンから取り出した成人の指位の何かを残った片手で口元に運びながらニヤリと毒づいてみせる。

「見るが良い、これぞダキアが最強と言われる所以ゆえん! さぁ、同胞の血肉よっ、我に力をっ!」

「ほぉ~」

 興味深げに腕を組んで眺めるハスドルバルに見せ付ける様に、イザベラは指サイズの何か、いや、はっきりお伝えしよう、数日前、カーミラを脱出させる際に自分と共に殿しんがりを買って出たフットマン二人の内、年長だったアディンが託した左手の人差し指を口にし躊躇無く飲み込んだ。

 そう、グールっぽいイザベラの自信の源、お嬢様を守り抜く根拠になっていたのは又しても胸糞悪いカニバリズムの儀式、平たく言えば人食い復活劇だったのである。

 恐らく千年を越える人生で何度も同じ復活を果たして生き抜いて来たのだろう。
 喰った相手の力を我が物に、喰った仲間の力を我が物に、って奴に絶対の信頼を置いたイザベラの体は劇的な変化を遂げる。

 具体的には飲み込んだ指が嚥下えんげされると同時に、食道だろうか? 胸の辺りが赤く輝きだし、その部位がドロリと鎔ける様に足元へと流れ出し始め、ボタボタと滴る肉体の中心から、今飲み込んだ指がそのままこぼれ落ちて来たのである。
 
 パッと見、回復よりも追い詰められての覚悟の服毒自殺っぽい感じになっているイザベラにカーミラの声は悲鳴に近くなっている。

「ベラぁっ!」

『ぐがあぁぁーっ! ご、ごんなブワァカァなぁーっ!』

 胸の穴から漏れ出た声の反響で既に怪獣っぽく言うイザベラ本人にも慮外の展開らしい。

「ほれ、言わぬ事じゃない」

 一人事情通っぽい呟きを溢すハスドルバルを睨みつけるイザベラ、聞けばこの事態について何か判るかも知れないのに困った物である。



お読みいただきありがとうございます。
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まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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