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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

978.砕いた鱗


 一瞬だけ思い悩む姿を見せた後、ギレスラは躊躇ちゅうちょ欠片かけらも見せずに行動に移したのである。
 分厚く変じた自身を覆った鱗、幼い竜種にとっては身を守る為の唯一無二の鎧を、鋭いくちばしで力任せに抉り取り始めたのである。

 ビチッ! ビチッ! ビビリリッ! ビツッチッ!

『グ、グガアァッ! アアアァァッ!』

『なっ! 何してんのよっ! ギレスラお兄ちゃんっ! そんな事したら、し、死んじゃうわよぉっ!』

『ペ、ペトラッ! コノ、ウロコ、フ、フミクダイテェッ! ンデッ、レ、レイブノクチニィッ! ク、クチニィ…… グ、グガ、グガアァ! ア、ア、アァ…… ウ、ウーン……』

『ぎ、ギレスラお兄ちゃーんっ! くっ、まずはレイブお兄ちゃんが先か、えいっえいっえいっ! 良しっ砕けたぁ! ほらほらレイブお兄ちゃんっ! ギレスラお兄ちゃんの鱗の欠片かけら、飲んでっ! 飲んで元気になってぇっ!』

 言いながら気を失っているままのレイブの口に踏み砕いたギレスラの鱗を押し込むペトラ。
 竜も猪も、まだ子供だ…… 仕方が無い事なのかも知れない……
 
 石化予防、石化解除の妙薬、粉薬の素材は、ここまで何度もお伝えしてきたとおり竜種の鱗、それは間違いない。
 だがしかし、素材が正しかったとしても砕いて飲ませればたちまち治る、そんな好都合な代物である訳が無いのだ。
 そんなに簡単に出来ないからこそ、かつてのバストロも現在進行形で修行中のレイブも一所懸命に猛説教を受ける事も与える事も辞さない覚悟で勉強中なのである。

 アミュレットやタリスマン、強壮剤に比べても、特に粉薬は難しい工夫が求められる物なのだ。
 現在最強の呼び声も高い、北の魔術師バストロをして『無心っ!』と口煩めの指導を繰り返させてしまうほど繊細な物なのである。

 二年以上修行に明け暮れてきたレイブですら、気が散っていれば失敗してしまう程の精緻せいちな作業を、親切心からとは言え、兄を助けたいと言う我欲にまみれたペトラの魔力が影響を及ぼさない訳は無い。
 そもそもでは有るが、未だ稚竜であるギレスラの鱗には確実な効果は期待できない、と言うより皆無なのである。

 幼猪が必死に踏み砕いて細かくした竜の鱗は、気を失って飲み込む事もままならないレイブの石化を止める事は適わなかった。
 ペトラの目には少しづつ硬質化が進む長兄の姿が映る。

『ど、ど、どうすればぁ…… ねぇギ、ギレスラお兄ちゃん? はうっ!』

 困惑を表情に浮かべて次兄であるギレスラに視線を移したペトラが見たものは、思いもしなかった兄の姿であった。

 つい先程、苦しそうな声と共に言葉を途切れさせたギレスラは、全身をビクンビクン痙攣させながら、自ら鱗を引き千切った全身のそこかしこから、見るからにヤバそうな灰色のもやを噴出させて、残っている紅だった鱗まで土気色に変じさせ、判り易く言えば死に掛けの竜と化していたのである。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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