【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1721.ハイヤーンの痛み
サタナキアは無表情で首を傾げたまま溶けた指先を噛み捨ててから言葉を続ける。
「『偽神』、ねえヨハン、何か思い当たる事とか無いのアンタ?」
瞬時に新品同様のマリス・ステラ(欠損無し)に戻るサタナキア、このスキルって便利だな。
ヨハンは腕を組みながら答える。
「いえ皆目ぅ? まあ病気の妻から出て来た物ですから、としか……」
「そう……」
ヨハンは自分の仮説を確認するかの様に丁寧に繰り返し分析だ。
「それ位しか考えられないですよ、尿瓶に使っている容れ物だってどこにでもある物ですし…… 以前の使い道だって極々ありふれた用途でしたから……」
「以前の用途? 何に使っていたのよ?」
「あ、はい、私の錬金術実験ですけど…… 明礬と硝石を混ぜて蒸留した溶液を入れるのに使っていただけですし……」
「明礬と硝石、ってハイヤーンのヤツよね?」
「はいジャービル・イブン・ハイヤーンのです」
「くっ! 痛い筈だわっ!」
なるほど。
ジャービル・イブン・ハイヤーンはこの時代より七百年程遡ったアラビアの錬金術師、所謂科学者、化学に造詣がある方ならゲーベルと言えば馴染み深いのでは無かろうか。
例の観察と実験の重要性を説いた化学の父である。
で、明礬や緑礬と硝石を混合し蒸留させると出来上がるのは…… 悪魔の天敵、硝酸なのだ。
理由は魔核が鉛、Pbで構成されているからなのだが、通常、悪魔が触った位で痛がったりましてや指先とはいえ溶けちゃったりする事はない、かなりの下っ端、レッサーデーモンでも、である。
魔王種以上の上位悪魔、所謂アークデーモンは己の魂魄である核を酸化膜等で保護している事が一般的であるし、それ以下のグレーターやレッサーのデーモンであっても即座に影響は受けない。
何故なら位階が低く脆弱な彼等は生身の悪魔として現世に顕現する事が出来ない、つまり依り代を使わざるを得ない事から、纏った肉体がそのまま盾の役割を果たすからなのである。
…………そうか!
見た目が人間、ってか聖母のまんまなのでうっかり失念していたが、コイツ、サタナキアは依り代を使っていなかったな…… 生身のままだった。
ってまさかっ!
サタナキアの『偽神』の変身能力とは剥き出しのアートマンの可変性で化けている、のか?
だとしたら常に魔核丸出し、つまりマッパな状態で、その上、変化に邪魔な一切の防御策を排した無防備、超紙装甲ペラッペラなのでは無かろうかっ?
ば、馬鹿な真似を…… なんて無茶な奴だ、流石、悪の中の悪、無鉄砲だな。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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