【2065話】 堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第三部 六章 リベルタドーレス ~解放者たち~
2065.和菓子
負け犬と負け猫の声は勝者には届く事も無く、二人の間を悠々と通り過ぎたサルガタナスは彼等が命懸けで守ろうとした存在、ギレスラとペトラに水で出来た目を落とした。
周囲の草木や地面が凍りつく中、完全に無防備で鼻提灯を氷らせながら大イビキのペトラと、半目を開いたまま睡眠時無呼吸症っぽく不正確な寝息を立てているギレスラ、揃って爆睡中なのは大した物だ、頼もしさすら感じる。
不快なモノを見る様な蔑みと哀れみが入り混じった感じで見下ろしていたサルガタナスは不意に突飛な動きを見せる。
具体的には突如人型をやめて最初の水型、中にアンコが入っていない水饅頭っぽく姿を戻したのである。
地を這ったままで、きな粉無しのワラビ餅っぽいサルガタナスの声は響く。
『この汚らわしい豚と不気味なトカゲはウチの馬鹿…… いえ、我が至高の御君、アスタロト様! ……ん、でも何か変ね? 存在が不安定ってゆーか、中途半端とゆーか? 存在の絆も繋がらないし…… これ、本物なの?』
凍らされて振り向けないミロブロは後ろ向きのままで答える、シュールな絵面だ。
「無論本物だ…… 我が君は我々がお会いしお仕えした時には既に魂魄を三つに分けておられたんだ」
「その上スリーマンセルのリーダー、レイブ様はバアルめの結界に囚われたまま未だ救う手立てすら無い状況…… 悲嘆にくれるお二方を我々がお守りしてきたんだ……」
『魂魄を三つに? へー何でそんな無茶を…… それに悲嘆? ふーん……』
背を向けたまま項垂れるミロンとブロル。
「感情の表現はその、それぞれだし……」
「こ、これでも悲しんでいるんだ! 苦悩が大き過ぎて逆にとかそーゆー、ヤツだよ!」
まるで自分に言い聞かせるが如く、つくづく大変だよな、こいつ等も……
溶け掛けのミズクラゲが返す。
『アタシが言ったのはそーゆー意味じゃないわ! ウチの馬、グフン、アスタロト様は脳筋、じゃなくて豪放磊落で大胆不敵、何かを嘆くなんて随分まとも、グフン、英明で慎重になられたと思ってね』
なるほど場違いな気楽さには慣れているらしい、上がアレじゃあこいつも苦労して来たんだろうな。
サルガタナスは気を取り直すかの様にちょっと盛り上がって言葉を続ける、少し葛餅っぽくなってだ。
『兎に角、アンタ達は弟の配下からこっちに乗り換えたって訳よね?』
「はい」
「です」
そうなんだよな、サルガタナスはアスタロト配下のムスペル軍団の最高幹部、副官の一柱、且つ、アガリアレプトの姉ちゃんでもあるのだ、複雑な気持ちになるのは無理もない立場なのである。
『まあ判ったわ、一所懸命働きなさい』
単純だった…… まあアレの副官だからな、そりゃそうか。
ミロンとブロルの体を覆っていた氷が忽然と消え失せる、サルガタナスがやったのだろう。
自由を取り戻した二人は再びシェイプシフトを発動して人型に戻り、慌てて手足の指を擦り合わせたりしている、多分冷えたのだろう。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です。
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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