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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1695.読唇


 なるほど。
 カーミラはこの数年の間ずっと、数年前のあの満月の夜に自分に機動力を与えてくれた、謎の美女の事に思いを馳せる事だけが唯一の慰めとなっていたらしい。
 そんな日々で一番気になっている事はの美女が錫埴輪すずはにわだった自分に語り掛けていた言葉の内容に集約されて来た様だ。

 どうせ聞く者等いない廃村の中だ、彼女は独り、声に出してみる。

「オ、オフラレズ、かなぁ?」

 そう、彼女は錫製の体を動かせる様になったのみならず、なんと声帯も無いと言うのに発声可能な域まで化け物じみて、いや、成長を果たしていたのである。
 しかも遥か昔に一度だけ見た女神っぽい美女の唇の動きから、当時の発言を読み解こうとまでしているのである、余程時間を持て余していたのだろう事が伺える、暇こそ発見の母なのだな~。

 まあしかし、当時彼等が主要に使っていた言語、ラテン語にオフラレズなんて言葉は存在しない、道は未だ半ば、いや遥か遠くと言った所だろうか? 仕方が無いよね、なにせ当時は耳も聞こえ無かったし読唇術とか言う程楽では無いからね。

 特に子音の発音がはっきりしている日本語じゃなくて、最初の一文字に全振りなラテン語やスペイン語は読唇術の天敵とか言われているしな。
 非ネイティブな役者さんとかの口じゃなければ判らないよ、諦めた方が良いね。

 しかしっ、思いもよらず永遠の命? 永遠の監獄に囚われたお陰で時間だけはたっぷり腐る程持て余していたカーミラは、この夜、一つの答えを導き出したのである。

「フじゃ無いのかなぁ? ブかな? オブラレズ? オプラレズ? あっ、こっちかな?」

 ほぉ、半濁音、か…… 確かに日本語よりは口の形に差異は無い、良く気がついたな。

「あっ! じゃあ最初の音もかなっ? ポ? ポプラレス? あー、ポピュラレスっ! それって、な、仲間っ? ど、同胞って意味じゃんっ!」

 なんとっっ!
 ここまでの数年間、毎日考え続け悩み続けて一切意味を成さなかった女神(あくまでもカーミラの主観です)が残したヒント、所謂いわゆるパワーワードにして世界の言葉的な奴に気が付いてしまったのだ。

 しかも意味は『同胞』…… 独特な習慣と一部気持ち悪過ぎる倫理観にまみれたダキアさん達には意味が有りそうに聞こえる単語で、である。

 発見したカーミラ自身も呆然とした感じの声で呟きを洩らす。

「同胞…… そうかっ! そーゆー事だったのね……」

 どーゆー事かは全く全然判らなかったが、何かを決意したっぽい彼女は次の瞬間、腰掛けていた棒から飛び降りると、一切の迷い無く歩み出した。
 そしてそのまま森の中へと姿を消した彼女は二度とこの場所、生まれ育ったボレイビスタス、ブレビスタの故地に舞い戻る事は無かったのである。

 そして六百年弱、錫の変態による膨張死からすんでの所で救い出されたカーミラニャンコは、救い主で遥か昔に見た姿のままなバアル様(別人)にかしずいた、って訳なのだ。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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