【2138話】 堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第三部 六章 リベルタドーレス ~解放者たち~
2138.ヴァンプライド
「おおっ! まさかお独りで我輩等全てをお運び頂けるとはっ! お見それしました大鹿殿っ! 貴殿はまるで古代の伝説に聞く鹿の王、エレカボールの如き強者なのですなっ!」
うん、その強者そのものなんだけどさ……
ヴラドの後ろから姿を現した三人の娘が揃って丁寧なカーテシーをしながら続く。
「助かるよ、いつかこの借りは返すからね、大鹿殿」
「恐悦至極」
「強くて美しい、その上女性ですのよね? 是非、仲良くして下さいませ、ウフフフ」
「敬天愛人、即ち花意竹情へと至る、之も又善哉」
「判っているわねドルドナ」
「伺候し休まず、想いを遂げるその日まで、カーミラ」
「ありがとう♪」
日がすっかり落ちた事でこいつ等も復活を果たしたらしい、猫のカーミラ、ネズミのブルーカ、そしてフィンチで独特なセンスのドルドナ、名付けて忌むべき呪いの三姉妹である。
不吉と衰弱、そして死と縁起悪さの象徴を前にしてもグルグルを得たエバンガの覚醒は揺るがない。
『どうやらお前達がこのカスケットの中身の様だわね』
「明察だ、乗っても構わないか?」
『無論ですわ』
「ウフフフ、お邪魔致しますわ」
「光栄の至り」
「では我輩も♪」
それぞれ身軽に背まで駆け上がったヴァンプ達は、それぞれの物であろう棺桶に寄り添って準備を始める。
具体的には本体同様、大きな蓋を下ろしてフルオープン、その上で目配せし合うと渉外担当らしいヴラドが代表して叫んだのだ。
「さあ皆! 乗るが良い! いざ旅立とう、我等が主、レイブ様をお迎えに参るのですっ!」
『え? 皆、って誰ですの?』
ザワザワザワザワ ワラワラワラワラ
『ひっ!』
薄暗がりの坑道前、地を埋める勢いで現れたのは黒猫、ドブネズミ、吸血フィンチの大群である。
そう、ヴァンプは単体ではない、初出から言及されていた通り群れなのだ。
飛び出した獣達は悲鳴を発して固まるエバンガの四肢を伝わり、次々とそれぞれの棺桶へと駆け込んでいく、リーダー達は満足気な笑顔でその様を見守っている、まるで慈母の如き柔和な笑みだ。
一方のエバンガは既に声をも失っていた、のみならず荷重制限を遥かに超えた背骨は不自然に湾曲し、誰が聞いても異常としか感じられない破砕音を奏で続けている。
本来、雌鹿の背は天を指して突き出す形が自然な物だ。
まあこれは馬でもラクダでもロバでも変わらない、彼等が地に弧を描いているのは成長途中で荷を負わされた結果、苦役に因る後天的な形に過ぎない。
今、大量のヴァンプを背負ったエバンガはこの逆湾曲の脊椎を手に入れる事に成功した。
口の端からブクブクと泡を吹いて白目になっている現在は兎も角、回復すればきっとスプリングボック並みに美しい跳躍を見せてくれる事だろう、良かった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です。
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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