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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1652.一時帰国


 常在戦場、それを自ら示したカーミラに対して、メイドのベラは微笑を浮かべ一頭の馬を曳き出して答えとした。

 その馬を見た瞬間、カーミラ嬢は呟く様に言葉を洩らす。

「ぶ、ブレオ? 何故、ここに……」

「万が一の備えに付いて来て貰いました、まあ、止めた所で無駄だったでしょうが」

 ブレオは彼女が生まれた年に生まれた、言わば同窓の仲間、彼女にとっての身内で愛馬、兄弟以上の存在である。

 因みにダキアは馬を道具や乗り物として使いはしない。
 彼等が崇める神の内、疾風と評されるヴォルクスオルクスの化身、陸上で最も早く駆ける生き物が馬だからだそうだ。

 当然、馬車を曳く獣もロバである。
 馬に騎乗を無理強いするなんて神への冒涜に他ならない、遥か昔にスキタイなんかの遊牧民を完膚なきまで叩きのめした理由や、戦車を主戦力にしていたローマやペルシャを心底憎んでいた根拠が、ここら辺の狂信にあるのであった。
 つまり、兄弟同然なブレオは自ら望んでカーミラ嬢だけにその背を許したのである。

 ベラは続けた。

「ブレオであれば明日の朝には館まで帰れるでしょう」

『ブルルフッ! ブルゥッ!』

 ブレオ氏も自信がありそうじゃないか。

 こうして使用人達に半ば強いられる形で馬を駆ったカーミラは、メイドのベラが予測した通り、翌早朝には領都と生まれ育った屋敷を見下ろす高台へと到着していた。
 払暁ふつぎょうまではまだ時間がある筈だと言うのに、慣れ親しんだ景色は彼女の瞳に暖かく映った。
 街から然程離れてはいない、所謂いわゆるご近所のこの丘には当然来た事があった、何度もだ。

 しかし、これまで感じた事が無い暖かみ、街自体が発する熱気を浴びながらカーミラは掠れた声を洩らした。

「こ、これはぁ…… えっ! ちょっ! ウッソォっ!」

 街は文字通り燃え上がっていたのだ。
 比喩では無く正真正銘の炎が全てを飲み込みつつ紫の空に朱を射し、カーミラの顔に暖かみ、いや熱さ、いいや灼熱の略奪が如き無情の息吹をこれでもかと叩きつけていたのである。

「父上や母上は…… いや、それよりも民はっ! それに不埒な侵略者は一体っ!」

 そう気分を無理に切り替えると、カーミラは田舎育ちで培われた良過ぎる視力を駆使して眼下の惨状を確認し直す。
 微塵も想定していなかった惨劇を前にして、自分が今出来る最善を模索する胆力は、流石は勇猛果敢、精強無比で知られたダキアの子孫と言えるだろう、たとえそれが受け入れ困難な現実からの逃避だったとしても、だ。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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