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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
16.ネルソン・マンデラ

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 庫裏くりの中の居間に上がり込んだコユキは、座布団の上にどっかりと腰を下ろした。
 座卓の上にあった茶菓子を次々と口の中へ放り込んでいく。
 善悪に弱い自分を見せたくなかったのに、我慢出来なかった。

 悲しいやら悔しいやらで、

「……なんか、いかにも坊さんのお菓子って感じっ」

 フンッ、と鼻を鳴らし文句を言った。

 塩羊羹、六方焼、栗しぐれ、ぱり○こ…… そして塩羊羹、おっ、アルファベ○トチョコ発見、ラッキ~……

――――もう、最悪、こんな時でも食欲ばっかりだよ、アタシ……

 コユキは、また泣きそうになるのをグッと堪えた。

「……善悪ー! まだぁ? こんな事してる場合じゃ無いんだってば!」

「はいはい、ただいま~」

 お盆には大きめのグラスが二つ、一つには氷入りの麦茶、もう一つにはカ○ピス。

「お待たせ~! はい、コユキ殿っ! ちゃんと八対二で割ってあるから安心するでござる」

 もちろん八が原液、二が水である。

「ふぅ、もう喉カラカラだよ…… ありがと」

 コユキの中ではどちらかと言えば濃い目、のカル○スをグビグビと一気に飲み干した。

 善悪はコユキの向かいの座布団に腰を下ろした。
 座卓の脇にお盆を置いた動きに続いて、ついっとコユキにほど近い畳に何かを置いた。
 見てみると、そこには新品とおぼしいピンクのソックスが置いてあり、更にその上には大判の絆創膏が二枚乗っていた。

――――あ、かかと

 善悪のこうした細やかな気配りに、コユキは毎回感心させられて来た。

――――憎い程、気が回るのよね、それに相手を恐縮させ無いさり気無い所作、あくまでも自然体に影響しない絶妙のタイミング。 昔から、こいつのこういう所って、素直にモノ凄いって思う。 何となく、人としての格って言うか、魂の位階が違うって言うのか? うーん? 僧侶って職業だから、当然って言えばそうなのかもだけど、単純に坊主だから出来るとは思えないし…… 尊敬するし、アタシももっと大きくなったら(今以上?)見習ってみたいと心から思う。 でも、今大事な所は…… そこじゃないっ! 今一番に確認すべき事は……

「ねえ、善悪? なんで女物の靴下とか持ってんの? あんたしかして…… 女そぅ」

「拙者のママンの物でござるっ! ちなみに新品でござる」

 喰い気味に答えられた。
 善悪に対する疑惑は晴れた、良かった。
 しかし、コユキは小首を傾げて、再び善悪へと疑問を投げ掛けるのであった。

「そういえば、善悪ん家のママン、いや、おばさんは? おじさんも。 今、奥に居るの?」

 言葉にした瞬間、不意に目の前の善悪から表情が消えただけでなく、眉間に皺を寄せ、大きな体が小刻みに震え出した。

「っ!」

 コユキは理解した。

 二十年近く引き篭もっていた身では、ご近所の慶弔けいちょうにはうとくなっていても当然だった。
 主な情報源はインターネットのニュースなのだから。
 ネルソンマンデラの訃報ふほうに涙を流して悲しんだコユキであっても、善悪ん家のご不幸には気付けなかったのだろう。

「ごめん、善悪。 なんか悪い事聞いちゃったよね…… あたし今自分の事でパニクってて…… ごめんね」

 コユキが申し訳なさそうに言うと、善悪は俯いたままゆっくりと顔を左右に振った。
 そして、無言のまま立ち上がると、部屋の端にある戸棚に向かい、引き出しの一つから数枚の写真を取り出した。

 再びコユキの前に腰を下ろした善悪は、写真をコユキの手前に置いて口を開いた。

「これを」

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拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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