堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
16.ネルソン・マンデラ
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庫裏の中の居間に上がり込んだコユキは、座布団の上にどっかりと腰を下ろした。
座卓の上にあった茶菓子を次々と口の中へ放り込んでいく。
善悪に弱い自分を見せたくなかったのに、我慢出来なかった。
悲しいやら悔しいやらで、
「……なんか、いかにも坊さんのお菓子って感じっ」
フンッ、と鼻を鳴らし文句を言った。
塩羊羹、六方焼、栗しぐれ、ぱり○こ…… そして塩羊羹、おっ、アルファベ○トチョコ発見、ラッキ~……
――――もう、最悪、こんな時でも食欲ばっかりだよ、アタシ……
コユキは、また泣きそうになるのをグッと堪えた。
「……善悪ー! まだぁ? こんな事してる場合じゃ無いんだってば!」
「はいはい、ただいま~」
お盆には大きめのグラスが二つ、一つには氷入りの麦茶、もう一つにはカ○ピス。
「お待たせ~! はい、コユキ殿っ! ちゃんと八対二で割ってあるから安心するでござる」
もちろん八が原液、二が水である。
「ふぅ、もう喉カラカラだよ…… ありがと」
コユキの中ではどちらかと言えば濃い目、のカル○スをグビグビと一気に飲み干した。
善悪はコユキの向かいの座布団に腰を下ろした。
座卓の脇にお盆を置いた動きに続いて、ついっとコユキにほど近い畳に何かを置いた。
見てみると、そこには新品と思しいピンクのソックスが置いてあり、更にその上には大判の絆創膏が二枚乗っていた。
――――あ、踵の
善悪のこうした細やかな気配りに、コユキは毎回感心させられて来た。
――――憎い程、気が回るのよね、それに相手を恐縮させ無いさり気無い所作、あくまでも自然体に影響しない絶妙のタイミング。 昔から、こいつのこういう所って、素直にモノ凄いって思う。 何となく、人としての格って言うか、魂の位階が違うって言うのか? うーん? 僧侶って職業だから、当然って言えばそうなのかもだけど、単純に坊主だから出来るとは思えないし…… 尊敬するし、アタシももっと大きくなったら(今以上?)見習ってみたいと心から思う。 でも、今大事な所は…… そこじゃないっ! 今一番に確認すべき事は……
「ねえ、善悪? なんで女物の靴下とか持ってんの? あんた若しかして…… 女そぅ」
「拙者のママンの物でござるっ! 因みに新品でござる」
喰い気味に答えられた。
善悪に対する疑惑は晴れた、良かった。
しかし、コユキは小首を傾げて、再び善悪へと疑問を投げ掛けるのであった。
「そういえば、善悪ん家のママン、いや、おばさんは? おじさんも。 今、奥に居るの?」
言葉にした瞬間、不意に目の前の善悪から表情が消えただけでなく、眉間に皺を寄せ、大きな体が小刻みに震え出した。
「っ!」
コユキは理解した。
二十年近く引き篭もっていた身では、ご近所の慶弔には疎くなっていても当然だった。
主な情報源はインターネットのニュースなのだから。
ネルソンマンデラの訃報に涙を流して悲しんだコユキであっても、善悪ん家のご不幸には気付けなかったのだろう。
「ごめん、善悪。 なんか悪い事聞いちゃったよね…… あたし今自分の事でパニクってて…… ごめんね」
コユキが申し訳なさそうに言うと、善悪は俯いたままゆっくりと顔を左右に振った。
そして、無言のまま立ち上がると、部屋の端にある戸棚に向かい、引き出しの一つから数枚の写真を取り出した。
再びコユキの前に腰を下ろした善悪は、写真をコユキの手前に置いて口を開いた。
「これを」
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拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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