堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
291.幕の内弁当 (挿絵あり)
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駅に着いたコユキは東海道線に数駅揺られた後、乗り替えの為に新幹線の改札を通るのであった。
善悪からの忠告を忘れていなかった賢いコユキは、持たされた弁当は昼食に摂る事に決めて、取り敢えず午前中の栄養補給(二度目)を確保すべくホーム上にある駅弁屋に向かったのだが、売り子と二人の客が何やら揉めている様である。
近付いて行くコユキの耳に凄みの効いた若い男性二人の声が届くのであった。
「おんどれ! この店はあれか、客にゴキブリの入った弁当喰わせんのかよ、おんどれ! この不始末どうすんだ、ああ? おんどれ!」
「あー、これ腹やったな兄貴! おいテメエ、兄貴はこう見えてお腹とかめちゃくちゃ弱いんだぜ! 治療費とか貰うしかねーよなー! なあ兄貴!」
「まあ、只の売り子にゃ治療費とか言っても難しいだろうぜ! ここは穏便に弁当二つで手を打とうや、
おい! おんどれもそれで良いよな! 感謝しろよ、おんどれ!」
「流石は兄貴だ男気に溢れてるぜ、って事でそこの幕の内弁当二つこっちに寄こせよ、貰ってやるからよ、詫びの印としてな」
二人揃って差し出された手を交互に見ながら、十代だろう売り子の女性は震える声ながら、頑張って反論をした。
「あの、お持ちになっているお弁当の空箱、そうすっかり食べ終わった空っぽの容器ですが、先程向こうのゴミ箱から拾っていらっしゃいましたよね? それに、その後こちらに歩いてらっしゃる途中でそちらの、お兄様ですか? のポッケから黒々とした虫の死骸を取り出していましたよねぇ? 違っていたら失礼ですけど最近噂になっている新幹線のホームにいる兄弟の不審者、キセルを繰り返しつつ言いがかりを付けて金品を強請ろうとして悉く失敗している、通称『ホームホームレス兄弟』のお二人では無いでしょうね?」
言いながらチラリと目を向けた売店横には、顔の半分がケロイド状の火傷に包まれた男と、顔の真ん中で綺麗にクロスした傷を持つ男、二人揃って男前の手配書が張られていて、目の前で凄んでいる二人に似ていなくも無い、と言うより写真並みに似ている、というか本人としか思えない、いや、本人だった。

二人組みは誤魔化せるとでも思っているのか、より声のボリュームを大にしてスゴムのだった。
「お、おんどれぇ、何言ってんだよ、おんどれ…… 意味わかんないよ、おんどれおんどれおんどれ……」
「お、おいお前あれか、お、俺達が寸借詐欺でも、や、やってるってのか、よ…… ち、違うぞ、あの、あ、あれだ、その、じ、事情があるんだよ(ゲロった)」
分かり易く狼狽える二人の後ろにスッと現れるツナギに身を包みアライグマのキャップを被った巨漢の人物、コユキは呆れたように声を掛けるのであった。
「はあ~、アンタ等相変わらずつまんない事やってるわね、全く! ほらそこ退きなさいよ、アタシがおベント買えないじゃないの」
「おんどれは!」
「お前は、あの時の!」
半年振りの再会に驚いて道を空ける二人の間を、堂々と進み出たコユキは売り子の女性に言うのであった。
「おねいさん、おベントどれでも良いから十個…… ううん十二個チョウダイ!」
途中で左右の二人の事をチラッと見てから注文を済ませたコユキは渡された弁当入の二つに分けたビニール袋を、左右それぞれに渡しながら言うのであった。
「付いて来なさいよ、お腹減ってんでしょ? ちょいと大事な話もあるしね」
「え、食べさせてくれるのか? おんど、姐さん?」
「信じるのかよ? 兄貴!」
「ふう~、あんた等の父母から頼まれてんのよ、その傷ガス爆発で負ったんでしょ? 父親は手首叩き切って死んだのよね、んで秋沢明に世話になったそうじゃないの」
「なぜ、その事を!」
「あんた、一体……」
「だから、本人達に聞いたって言ってるじゃない、兎に角付いて来なさいよ、ほら新幹線来たから、続きは食べながらにしましょ!」
停車したこだまに乗り込むコユキの後ろを、狐につままれた様な顔をして付いて行く男前兄弟であった。
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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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