【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1182.干将と莫耶
青白い顔を冷や汗でビシャビシャに濡らした狙公は、その場しのぎの言葉で武官の元を辞し、自分の宿営に駆け込むと長持ちをひっくり返して何かを探し始めたのである。
探していたのは二振りの剣、名を干将と莫耶と言う。
この時代より二百年以上前に滅亡した呉国の王が、同名の刀匠夫婦に命じて作らせた隕鉄由来の雌雄剣である。
夫の干将の名を冠した黒剣は雄剣で陰陽の陽を表し、対となる莫耶は白剣で雌剣、陰剣とされている。
又、干将には亀裂が文様として、莫耶には水波が浮き出ていたと言う。
水波は一目瞭然だが、実の所、亀裂も又、水に関わる物でありズバリ言えば長江流域の河川湖沼を表した俯瞰図であった。
理由は使用された隕鉄に因る。
隕鉄の元は本観察でも登場したレヴィアタン、ねじれ渦と呼ばれる大物水棲悪魔の欠片である。
最初の観察でアフラ・マズダとしてコユキ善悪に敵対し、その後、アンラ・マンユに降格されてしまった大徳にして大罪の一部、と言う訳だ。
さて……
この一連の説話は同種食いに端を発していた事に再び注意を戻して頂きたい。
同種食いを当然の如く繰り返し、禁忌どころか嫌悪の感情すら有せず、だというのに身体精神に一切の不都合を生じていない生物と言えば、脊椎動物として始祖に近い生き物、魚類である。
魚類を中心とした水生生物にとっての神、それが他ならぬレヴィアタンなのだ。
その主な能力は、同種食いによって高められ、しかし普段は分厚い水の加護によって抑えられている蛮力の解放、そして再びの抑制、この二つであった。
地球に舞い降りた際、体から剥離した欠片を鍛えて造られた剣の効果も同じである。
陽剣の干将は対象の生物、この場合は狙の狂化を加速させ、陰剣の莫耶は反対の効果、つまり狂乱を抑え僅かではあるが正気を取り戻させる事が出来た。
狙公の焦りは頂点に達していた。
確かに二振り揃えて仕舞っていた筈の剣の内、陰剣の莫耶がどこにも見当たらなかったからである。
――――よりにもよって陰剣が無いとかヤバいな…… まあ、狙共も独断ではあるが明確に命令違反をしているわけじゃないし、まだ話位は通じるか? 仕方ない、干将だけでも良いか……
狂気と凶暴性を抑える莫耶が見つからない事に一抹の不安を抱えたまま、狙公は陣の端に位置した狙の宿営を訪ねるのであった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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