【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1767.七転八倒
丸くヌルヌルした石の上、しかも押し寄せ続ける流れは強い、パダンパ自身はビビッてカッチカチ、呼吸すら忘れている位である。
と来れば、当然滑る、ってか滑り捲くる。
ちょびっと濡れた道すら恐れて出歩かない種である、当然水は大嫌いである。
滑った拍子に顔まで浸かり、水でも飲んだら大パニック、すわラグナロクかアルマゲドンってな大騒ぎとなる。
慌てて起こした体には既にバランスとか平衡感覚とか釣り合いなんかは有りはしない。
有るのは只、死にたくないっ! そんな浅ましいまでの自己保存本能だけなのだ。
慌てて立ち上がろうとした前肢が再び滑る。
そもそもネコ科の前肢は重心を掛けたり支える様には出来ていない、それらは基本、後肢の担当なのだ。
滑って濡れて飲んで慌てて滑って濡れる、苦し紛れにジャンプを敢行、たまたまあった深みに嵌って又々大慌て、からの滑る飲む、溺れ掛けて滑り、濡れて溺れて跳んだら滑る、いつの間にかぶつけたらしい裂傷から流れ出た鮮血が水面を染めた時、パダンパは子供でも口笛吹いて渡れる感じの川の真ん中で、身動き一つ出来ずに四肢をプルプルさせながら下唇を噛み締め、あまつさえ前にも後ろにも一歩も移動出来ない事態に陥ってしまったのであった。
――――こ、ここで死ぬ、死ぬのか? ちきしょう! こんなっ、こんなの惨めだ…… この肉球がせめてもう少しだけ硬ければっ! 百歩譲って俺が純粋なライオンだったならばっ! こんな惨めで無意味な最期では無かったであろうにぃっ! 親父がアムールトラ、虎の仲間でも長毛な種でさえなければっ! 指の間からはみ出た毛さえ無ければ、もう少しましなグリップ力を発揮出来たものをぉっ!
『何を遊んでるのよ? 先に行くわよ』
『えっ?』
己の毛深さに死を覚悟したパダンパの耳に、至って普段通りなペトラの声が上流側の真横から届いた。
四肢の危ういバランスをギリギリ維持しながら振り返った先には、凶悪で暴力的な流れを物ともせずに屹立する漆黒の雌ブタの姿があった。
雌でありながら雄々しく力強い豚猪は足元の水をパチャパチャ鳴らせながら言う。
『ほら、後半分位でしょ! 頑張りなさいよ!』
『あっ、ちょっと叔母さん! つ、連れて行って下さいよぉ!』
『それじゃ訓練にならないじゃない? アンタも少しは根性見せてみなさい、じゃあね、アディオス』
『え、えっ、えーっ! ウップッ!』
励ましの言葉だけを残して歩き去るペトラ…… 巨大な遮蔽物を失った水の流れは勢いを増してパダンパに押し寄せる結果となり、顔まで水に浸かったタイゴンは既に限界を迎えていた肢全てを滑らせて、浅い流れに身を委ねる事となってしまったのである。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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