【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1729.ドルドナ
一件落着ムードの中、燃えるカイムはまだ何か言い足りないらしく、勝手に話を続け出す。
「おい、ところであのフィンチ、あれはお前の何なのだ?」
「アトリね」
「え、あ、私の妻ですけど?」
「そう、か……」
どうやら聞かれた内容とは直結していないらしく余計な事には答えない様だ。
しかし、サタナキアが余計な口を挟んでしまう。
「何よ? 気になる言い方するじゃない! 何なのよ? はっきり言いなさいよ!」
発注しちゃったな。
カイムは躊躇無く答える。
「あのフィンチが入手したパッシブスキルは『笑い』だ、あの鳥が鳴く声、話す言葉を聞いた者は理由も無く愉快になり、聞き続ける限り笑い続け、終いには呼吸器不全に陥って死に至るだろう、割と恐ろしい種類の呪いだな…… 民や配下の安泰を望むのであればお前の妻、あのフィンチも一緒に遠ざけるのが最善であろう」
「アトリ、ね」
「え、そ、そんなぁ~」
愛する妻で子供達の母親なのだ、この前年、側室とも死に別れていたヨハンの嘆きは当然だろう。
サタナキアとカイムも強くは言えず、駄々を捏ね始めるヨハンを諭したのは、何とビックリ、フィンチかアトリと化した奥方、本人だったのである。
小さな体で一所懸命に物の理、領主としての役割に伴う覚悟と矜持、所謂ノブリスオブリージュについて語った彼女の誠心からの言葉は、自分勝手で幼稚極まり無いヨハンの心を動かしたのだ。
とは言え、覚醒直後で人間にはチュンとかしか聞き取れない言葉を必死で伝えたサタンとカイムの働きが無ければこの結果、領民を呼吸困難の危機から遠ざける事は出来はしなかっただろう、彼等の名誉の為にも付け加えさせて頂こう。
この辺りでカイムがぶっ倒れた、生来熱に弱い体質の割には良く頑張った方だろう。
全身に及ぶ火傷の治療に当たったのは、散々馬鹿にされて雑魚扱いされて来たピンクオーラの魔核、シャールカである。
ヨハンは少し見直したが、やはり炎を意のままに操る赤の方が良いなぁ、そんな風に心に決めた。
その後も続けられた話し合いの結果、クルムバッハから最も近い山の洞窟、緑の魔核、竜人ズメウが隠れ潜んでいた鍾乳洞が四レッサーの新たな住処として選ばれ、翌日にも移動する事が決定された。
せめて不自由が無い様に…… そう願うヨハンの心を表す様に、物資や調度品を運ぶ馬車の列は日を跨いで十日以上も途切れる事は無かった。
もうお判りだろうがフィンチになった奥方が最初のドルド、つまりドルドナである。
余談かも知れないが、彼女は変身した後も小さな翼を羽ばたかせ毎日この城を訪れていたらしい。
山間に自生していたレッドクローバーの四つ葉を咥え、ヨハンや子供達が集うだろう中庭へと届け、会わないまま飛び帰る際には上空を賑やかに歌いながら戻っていったそうだ。
程無く、領主館の建つ丘はレッドクローバーに埋め尽くされ、やがて街中や郊外まで赤く可憐な花で覆われる事となった。
いつしか、呪いから解放された人々の表情には笑顔が溢れ、それは時代が移り、幾度となく領主が代わり、様々な困難がこの地を襲った時でも尚、続いたと言う、めでたしめでたし。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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