一義流気功:「同調」から始まる「場の変化」 ~ 日常・武術・施術における応用のちがい
「気が合う」ことを「馬が合う」と言ったりします。
この表現は、乗馬の際、人と馬が、呼吸や歩幅・リズムを合わせると、スムーズに走行できることに由来しています。実はこの現象、人間同士でも自然に起こるもので、心理学では「同調現象」と呼ばれています。
誰かと「息が合う」と、安心感や一体感を感じる――これはごく日常的な現象です。そして、日常会話、スポーツ、武術、さらには気功施術(一義流気功)では、この同調現象をそれぞれ異なる形で応用しています。今回は、その違いについてお話しします。
1. 呼吸の同調:無意識に起こる現象
呼吸の同調とは、必ずしも「吸う息・吐く息をぴったり合わせる」という意味ではありません。正確には、歩くリズムや動作のタイミングなど、体全体のリズムを自然に合わせることを指します。
例えば、
・友人と歩くときに、歩幅が自然とそろう
・会話が弾んでいると、ふと同じタイミングで笑う
・合唱やダンスで、一体感と心地よさを感じる
これらはすべて「同調」の現象です。人は安全で安心できる相手といると、自然と呼吸や姿勢が揃い、無意識のうちに相手と同調して安心感や一体感を共有しているのです。
2. 呼吸の誘導:相手の状態を変える技術
同調に続いて、もう一歩踏み込んだ現象が「誘導」です。
例えば、相手と同じペースで呼吸したあと、自分だけ少しずつ深くゆっくり呼吸を始めると、相手もつられて呼吸がゆっくりになることがあります。
心理療法やコーチングでは、
・まず相手のペースに合わせる(同調)
・そこから少しずつ落ち着いた呼吸や声のトーンに変える(誘導)
という流れで、相手の緊張感を和らげる技術として使われます。
このとき「同調と誘導」により「場が変化」した結果、安心感が深まることがポイントです。接客や営業、スポーツや音楽、友人との会話などで、実は、多くの人が無意識に使っています。
なお、この「場の変化」とは、その場にいる人の呼吸・姿勢・感情が少しずつ揃い、心身が自然に落ち着く状態を指します。そのため、「絆を深める」方向にも働きますが、「場の主導権を握る」、つまり、自分が場の流れをリードする方向に導くことも可能です。
3. 武術における同調と誘導と場の操作
武術では、呼吸の同調・誘導・場の変化を戦略的に使います。
・相手と同じリズムに入り一体感を作る(同調)
・自分のリズムを少し変えて相手を崩す(誘導)
・自分の状態を整え、場全体に影響を与える(場の操作)
武術の達人たちによる「場の操作」は、同調と誘導から「場をリードする」だけでなく、次に紹介する気功的な「場の醸成」と「場の変化」が混在している場合もあります。言い換えれば、自分自身の状態を整え、場そのものを変化させることで、相手の意識や動きに影響を与えているのです。
4. 一義流気功の施術:場の変化で心身を整える
気功施術では、「場の変化」を起こすのに、施術相手の呼吸や動きに合わせる必要はありません。
施術者は、まず自分を深く落ち着いた状態に整え、施術に使う「気」を創ります。これは、施術者が作りたい「気」のイメージと同調する作業であり、自分自身の内部で同調が完結しています。
そして、その結果として、場の空気が変化し、施術者が意図を持つことで、相手の呼吸や筋肉の緊張が自然に変わっていきます。そこにいるだけで心身が整う空間へと「場を変化」させる――これが気功施術の本質です。
気功施術の場の空間は、100%あなたを癒すため!
気功施術中におこる「場の変化」は、100%施術相手のために整えられた空間です。施術者は、まず自分を整えますが、それは相手がより深くリラックスし、心身を調整できるようにするためです。
私自身、一義流気功を習うまでは、先生は施術中に何を考えているのだろうと思っていました。しかし、実際には、頭にあるのは「施術相手が整うための意図」だけなのです。
そして不思議なことに、この意図は強く思いすぎても効果が薄く、絶妙におぼろげに抱き続けることで、最大限の効果が生まれるのです。
