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マイケル・ジャクソンに学ぶ身体操作10:体軸が立つと聞こえてくる「動きのある音」の世界(中編-2)

中編-1からの続き)
ここからは、まず「音の深さと高さ」と体軸リズムの関係について見ていきます。実は、体軸リズムをどれだけスムーズに刻めるかで、音は「動きのある音」として感じられるか、あるいは『没入型世界』のように「水のように流れる音」として感じられるかが変わってきます。

4.低音と体軸リズムが生み出す声で、立体感が続く

先ほどの『Rock with You』の冒頭、マイケルの「Girl ♪ Close your eyes ♪」という歌声が、まだ耳に残っている頃でしょうか。

「なぜ、あんなに柔らかく、自然に高い声が出てくるのだろう?」と思った方もいるかもしれません。この声の秘密は、低音が生み出す「重さ・深さ」と、それによって自然に生まれる体軸リズムにあります。

冒頭のビートの低音は、身体の中に下方向への「重さ」や「支え」を自然に感じさせます。自分が無理に踏ん張らなくても、音そのものが身体の内側に安定した土台を作ってくれる感覚です。

その土台があることで、呼吸や声は力まずに、自然と上へ向かって抜けていきます。結果として、あの軽やかで柔らかな高い歌声が生まれるのです。

言い換えれば、マイケルは声を「出そう」としているのではなく、音が作り出した体軸リズムの上に、そっと声を乗せている、と捉える方が近いかもしれません。

曲の冒頭から終わりまで、低音のビートが体内で土台を作り続け、体軸リズムの上に軽やかな高音の歌声を乗せ続ける――この構造によって、「深さ」と「高さ」を感じさせる立体感が曲全体に維持され、聴く側にも軽やかで柔らかなふわふわ感が続くのです。

5.体軸リズムが感じさせる音の立体感

体軸リズムとは、音さえあれば“いつでも自然に誰にでも”生まれているものです。——歌っているとき、聴いているとき、そして、歌おう・聴こうとしていないときも生まれます。ここでは、音の「深さ」(下方向への感覚)と「高さ」(上方向への感覚)が、体軸リズムとどのように関わるのかを見ていきます。

5-1. 歌うときの感覚で、体軸を知る

まず、自分が歌う場面を想像してみてください。
高い音を出すときは、無意識のうちに「上に向かって声を出す」と感じていませんか? 一方、低い音を出すときは、意識的に「下へ向かう」ように声を落とそうとしつつも、「どうやって下に落とそうか」と考え始め、「うまく出せない」と感じることもあるでしょう。この違いは、前編で触れた「体軸の通り具合」の差によるものです。

上方向の体軸は自然に通っているのに対し、下方向の体軸は、通り道がまだ十分に育っていなかったり、どこかで遮断が起きていたりするだけなのです。

体軸とは、胸やみぞおちを中心に、上へ、下へと――両方向の感覚と音の振動がスーッと遮られずに通ったとき、はじめて一本の線として身体の中に立ち上がります。これは意識的に操作するものではなく、無意識に起こる現象です。言い換えれば、「無意識の意図」あるいは「無意識の意識」とも言える、顕在意識ではコントロールできない部分なのです。

この無意識を働かせるために大切なのは、繰り返しになりますが、まず「音楽って、楽しい!」という無邪気な感覚です。

そして、その一本線の揺れを、意識せず“なんとなく”感じること――それが「体軸リズム」を感じるコツです

5-2. 体軸とは、音をキャッチするアンテナ

体軸は、音を受け取るアンテナのようなものだとイメージしてください。「体軸を立てる」とは、アンテナをしっかり立てることです。

前編でお伝えしたように、「体軸が立つ」ことに加え、「振動通路の遮断が少ない」状態を、私は「体軸が開通する」と呼んでいます。その遮断が少ない状態とは、アンテナのメンテナンスが行き届いているかどうかに例えることができます。

音楽を無邪気に楽しみ、体軸の通りのメンテナンスをしておくと、体軸は開通し、立体的な音が「動き」をもって周囲を包み込み、「流れ」として現れてきます。

6.立体的な音が「動き」を持つ世界

体軸というアンテナは、音の方向や重さを感じやすくする役割を果たします。この上下に走る一本線は、地球の重力のように当たり前すぎて、普段はほとんど意識されません。「地震かも」と思ったときに、多くの人は左右や上方向に目を向ける一方で、足元を意識することは少ないのと似ています。音の立体感が分からないと感じる理由も同じです――あまりに当たり前で、意識する機会がなかったのです。

ここまでの記事で紹介した「縦、横・八の字、前後の体軸リズム」は、誰もが感じられる動きを「あえて言語化した」にすぎません。特別なことではありません。

6-1. 身体の中心点を意識してリズムを楽しむ

大好きな曲を聴きながら、胸やみぞおちあたりを「身体の中心点」として意識してみましょう。左右や前後方向の体軸リズムを、ノリノリな気分で感じてみてください。このとき、ポイントは「低音」に意識を向けることです。

点や線だった音の感覚が、前後左右の「面」として広がり、さらに「八の字の体軸リズム」を感じられると、音は全方向に広がる空間として捉えられ、やがて「動き」として認知できるようになります。

そしてその先には、絶え間なく動き続ける「流れ」を感じる、いわゆる『没入型世界』が広がっています。

6-2. 体軸リズムと音の「動き」「流れ」

音の立体感を感じるとき、体軸リズムがあるかどうかで、同じ曲でも印象が大きく変わります。体軸リズムをスムーズに刻めるほど、音は単なる立体的な情報にとどまらず、耳の中で「動き」を持って流れ始めます。そのリズムの滑らかさによって、音は「動きのある音」として感じられることもあれば、先に触れた『没入型世界』のように「水のように流れる音」として感じられることもあるのです。

まとめ

体軸リズムを感じながら「動きのある音」が身体に刻まれると、聴覚だけでなく体全体で音の広がりや動きをさらに感じられるようになります。曲に身を委ねることで、「動きのある音」が続く時間も少しずつ増えていきます――これが、中編-2で描いた『動きのある音の世界』です。

そして、この体験をさらに進め、音の連続性や無意識のパターン認識などが加わることで、音楽が“流れる”感覚、いわゆる「流れのある音」の世界=『没入型世界』へと繋がっていきます。

まずは、低音に意識を向けて、音を楽しんでみてください。

次回予告

次回、中編-3では、この「流れのある音」の世界に視点を移し、誰もが持つ音への認知の癖やマイケル・ジャクソンの認知の癖を踏まえつつ、体軸リズムと音の流れの関係をより深く見ていきます。初めて聴く曲でも自然に流れを感じられる理由や、流れの中で生じる微細な違和感への反応にも触れる予定です。

中編-2で体感した「立体的で動きのある音」が、次回の中編-3ではさらに「流れのある音」としてどのように身体に響くのか、一緒に体験していきましょう。(中編-3へ続く)

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