それは突然やってくる(パソコンを初めて触った日、世界最速でCGデザイナーになった私)
1987年、私はグラフィックデザイナーをやっていた。
(まだ手描きでデザイン、写植屋さんに文字を打ってもらって切り貼りしていた時代)
しかし働いていたデザイン会社の経営が傾いてきた。
そこで社長が打った秘策は「これからCGというものが流行るそうだから、CGを始めよう!」だった。(なんだ、それ!?)
ちなみにまだ世の中にはコンピュータもさほど出回っていない時代。
もちろんWindowsも無い。
社長はもちろんCGがどんなものかも知らない。(なんだ、それ!?)
社長が翌日買ってきたのはNECのPC-98とNTTデータが開発した”GENKI”というアニメーションソフト。
(GENKIはお絵かき機能付き簡易アニメーションソフト)
そして当時一番の若手デザイナーだった私に「使ってみろ!」と。
私は早速パソコンにモニターをつなぎ電源を入れ、GENKIのフロッピーを差し込み何かが始まるのを待った。
待った…しばらく待ったが、何も始まらない…
モニターには空しく緑のプロンプトが点滅するだけだった。
「社長!なにも始まりませんよ…」
「う~ん、やっぱり一度研修に行かないと無理か…」
そりゃそうだよ!
わたしゃCGどころかコンピュータさえ触ったこともない文系人間なんだから。
そもそもコンピュータなんてものが怖いんだよ。
それで私はGENKIの販売を行っていた日本鋼管(現在のJFEエンジニアリング)が主催するGENKIのセミナーに参加することになったのだ。
セミナーは大手町の日本鋼管の本社会議室で行われた。
PCの基本知識、簡単なBASICというプログラム言語(cdとかmkdirとかそのくらい)から始まって、マウスの使い方、GENKIでの絵の描き方、アニメーション設定方法など、丸一日のセミナーだった。
セミナーが終わって、筆記用具を片づけている私に日本鋼管の営業マンが声を掛けてきた。
「絵が上手いですね。あの~GENKIのデモ作品を作ってもらえませんか?」
「えっ!?それって私がこのコンピュータを使って作るんですか?」
こうして私は生まれて初めてパソコンに触れた日に初仕事をゲット!
朝、家を出たときにはグラフィックデザイナーだったのに、帰る時にはCGデザイナーになっていたのだった。

(by 奥井雅美)
