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タイの湯気ノムコウ vol.53 タイと果物

― 完熟の甘さ ―

朝の市場を歩いていると、
季節の変わり目を最初に教えてくれるのは、空気の匂いではない。

山のように積まれた果物の色だ。

濃い緑のマンゴー
赤く尖ったドラゴンフルーツ
鋭い棘をまとったドリアン
そして、手のひらほどもあるライチの房

気がつけば、店先の景色が
少しずつ変わっている。

日本では、南国の果物は
どこか特別なものだった。

贈答品として箱に並び、
値札を見て少し驚く。
けれど、ここでは少し違う。

市場の片隅には、切り分けられた
スイカが無造作に並び、
学校帰りの子どもたちが
ビニール袋に入った果物を
つまみながら歩いている。

車を運転していると、
道端には果物を積んだトラックが止まり、
その場で完熟したカットフルーツを
売っている。

そして
青いマンゴーには、砂糖と唐辛子を
混ぜた粉をつけて食べる。

酸味と辛味と甘味が、
口の中で少し喧嘩をする。

初めて食べたとき、正直に言えば、
なぜ果物に唐辛子をかけるのか
理解できなかった。

けれど、暑い昼下がりに汗をかきながら
食べていると、不思議とまた手が伸びる。

この国の味覚は、単純な甘さだけでは
できていない。

甘いものの隣には辛さがあり、
酸っぱさがあり、ときには
強い匂いもある。

それは、どこかタイという国
そのものに似ている。

穏やかに見えるタイの人々の暮らしの
裏側には、政治の不安や経済格差、
移民問題や大気汚染がある。

それでも人々は市場へ行き、
果物を買い、夕方には家族や友人と
食卓を囲む。

遠い国のニュースが流れ、
燃料の値段が上がっても、
果物の季節は今年もやって来る。

タイの湯気ノムコウでは、
果物は単なる食べ物ではない。

暑さをやわらげ、季節を知らせ、
ときには暮らしの豊かさを
思い出させてくれる、
小さな自然の贈り物なのかもしれない。


タイの自然の空気を、
服として纏える場所があります。
北タイの手仕事から生まれた
ナチュラル・ハンドメイド・ウェア

この感覚を形にした服がGENIEです。
→ プロフィールから
https://genienature.official.ec/


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