それでも山に行く理由 vol.90 「楽」と「楽しい」は、同じじゃない。The Glenmore Hotelのルーフトップから。
18:22
Katoombaを出て約2時間。
Central Stationで乗り換え、
Sydneyへ戻ってきた。
この旅も終わりに近づき、
すっかり電車やバスでの移動にも慣れた。
オーストラリアを旅していて
感じたことの一つが、公共交通機関の
使いやすさだった。
クレジットカードをタッチする。
基本的には、それだけでいい。
電車もバスも、専用の交通カードを
わざわざ用意する必要がない。
旅行者の私にとって、これは想像以上に
便利だった。
一方、日本では近年、
オーバーツーリズムが問題になっている。
急激に増えた海外からの観光客に対して、
受け入れる側のインフラやルールが
追いついていないという話も聞く。
例えば、日本の路線バス。
地域や車両によっては、千円札を
運賃箱に入れれば自動的に
運賃を引いて「お釣り」が
出てくるわけではない。
まず千円札を両替する。
すると千円分の硬貨が出てくる。
その中から、正しい運賃分の
小銭を自分で運賃箱へ入れる。
日本人でも面倒だ。
だから多くの人は、
交通系ICカードを使っている。
でも、初めて日本を訪れた旅行者が、
その土地の交通やICカードのシステムまで
最初から知っているとは限らない。
円安傾向が続き、LCCが普及し、
日本を訪れる外国人旅行者も大きく増えた。
それでも日本は、いつまで「円」
という現金を王様にしておくのだろう。
そして、ふと思った。
あの時、世界に向けて発信した、
「お・も・て・な・し」
あれは、本当に日常の仕組みにまで
届いているのだろうか。
そんなことを考えながら、
The RocksのYHAまで歩いて戻った。
シャワーを浴びる。
今夜は、この旅最後の夜だ。
せっかくだから、外で食べよう。
向かったのは、
The Glenmore Hotel。
1921年創業の歴史あるパブ。
名前には「Hotel」と付いているが、
現在は宿泊施設としてではなく、
パブとして営業している。
高級レストランのような料金を
払わなくても、Sydneyの景色を
気軽に楽しめる場所として知られている。
今朝のScenic Worldのゴンドラは
予約していなかった。
だけど――
この店は、しっかり予約しておいた。
ルーフトップのカウンターには、
地元の生ビールのタップが
ずらりと並んでいる。
私は黒ビールを注文した。
この旅、最後の夜に乾杯。
サラダ
チキンとポテト
生牡蠣
ライスコロッケ
そして最後は、温かいシュー生地に
冷たいアイスクリームを挟んだデザート。
目の前には、ライトアップされた
オペラハウス。
Sydneyの高層ビル。
そして足元には、The Rocksの
古いレンガ造りの街並みと
中庭が広がっている。
贅沢な時間だった。
確かに、この旅を楽しむために、
かなりの労力と、お金と、時間を使った。
でも、驚くほどではない。
もしこの旅を旅行会社のツアーで
回ったなら、もっと簡単に、
もっと楽に、そしてもっと効率よく、
質の高い旅ができたのかもしれない。
だけど、
それは私が望んでいる旅ではない。
ヒッチハイクをする。
レンタカーを借りる。
長い距離を運転する。
スーパーへ買い出しに行く。
自分で料理をする。
知らない街を走る。
自分で調べて、迷って、失敗して、
また考える。
世の中が便利になればなるほど、
私たちはお金で「手間」や「時間」を
買えるようになる。
きっと、これから先はもっとそうなる。
だからこそ私は、自分たちが
楽をすることよりも、
楽しめることを優先したい。
便利なことは悪くない。
楽をすることだって悪くない。
でも――
「楽」と「楽しい」は、同じじゃない。
きっと旅も人生も。
この山の自然の空気を、
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北タイの手仕事から生まれた
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