なぜか、東京は着物がよく似合う


昨年末、
知人の忘年会に顔を出すため
わざわざ、新幹線で東京へ赴いた。

男着物、一人旅。

一泊二日の小旅行。

行きの移動は、
ウールの長着に、
紬の羽織。

さすがに、
車内はちょっと蒸せるので
羽織を脱いで。

夜の忘年会は、
小さなイタリア料理店。

長着を茶の小紋に着替えて

いざ、出陣。

初対面の方々を前に
自己紹介。

「このためだけに
 上方から参った次第・・」

うけた。

うけなかったら、暴れたところだ。

ここに来るのに
相当なコストとリスクを
背負ってきたのだから。

旅費もさることながら
着物での小旅行は
ちょっとした冒険。

どんな、不具合や
困り事が起きるか
試したくも、あった。

結論から言えば
困り事などなく
いたって快適で、
普通だった。

忘年会の翌日は
明治神宮を参拝後
表参道でお土産探し。

表参道に、
着物姿は実に映える!

見渡すところ
着物姿は自分一人。

外国人も多く
ちょいちょい視線は感じつつも

結局、ソフトネグレクト。

相も変わらず、
男着物はアンタッチャブル。

ハリーポッター原宿店ですら

着物が、透明マントの如く
誰も彼も、一切、無視。

ならば、こっちから

スタッフに
「老眼で値札が見えない。
 このボールペン、おいくら?」

「900円です!」

実に、にこやかな、拒絶だ。

きっと、客に
余計な口を利くなという
マニュアルなのだ。

東京は、色々な人が
いるものね。

下手に、距離感
間違えると
怖い目に会いかねない。

距離感。

そう・・
この距離感こそが
東京のステキなところ。

ハリポタスタッフは別としても

この東京の街を覆う
独自の距離感こそが

着物姿が映える
空気感を生んでいる。

過去
しばらく仕事で東京で暮した。

仕事で見る景色と
遊びで出会う景色は
まるで違う。

人は人、
好きにしなはれ

という、
人同士が作り出す
距離感や空気感が
独特な感じがする。

休日には、ちょうどいい。

だから、
着物姿が見られているようで
でもどこか、孤独で
居心地の良さがある。

むしろ、
都会の冷たい雰囲気
寡黙な空間に
着物はとても品が良く
スタイリッシュで
クールに調和する。

そして・・

田舎もん根性、丸出しだけど
BIG CITY TOKIO
着物姿で闊歩する自分が
なんとも気持ちよく
なんとも誇らしい。

冷たさや寡黙さは
東京にいる人達が作り出す世界。

今で言う、
多様性の価値観が完成してる。

どんな奴がいても、
不思議ではない。
という感じ。

包容力というか、無関心というか。

一方
ある程度、都会チックな地方都市は、
予定調和がある。

だいたい、
街とか、人ってこんな感じだよな
っていう
常識的なライン。

東京は、そこがあいまいで
適度に非常識で、非日常。

着物姿のおっさんという
小さなノイズは
いい感じで混ぜてしまう。

メトロやら砂利道やら石畳やら
歩行者天国やら

昇ったり下ったり
走ったりつまずいたりの2日間。

よそ行きの、のめり下駄が・・。

前月のお伊勢さんと
今回の東京で、いじめ抜いた結果

たった3日で
随分と、歯が削れてしまった。

現代じゃあ、
下駄も結構な贅沢品。

東京のあちこちへ
削りカスを置き土産にして

いざ帰路へ。


都会と信じて暮らしてきた
我が町の、
なんとも小さく貧相なこと。

妙に、着物が浮いてくる。

そそくさと、逃げるように
我が家へ、駆け込んだ。

帯をほどき、足袋を脱ぎ
ほっと、我に帰る。

ああ、つかのまの
夢のような着物旅・・。

ちょっとした
小旅行を、
とっておきの
思い出にしてくれた。

ふうっと、ため息ひとつ。

魔法のマントを
そっと、脱いだ。


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