サラダが増量されて、引き寄せられた話。
理屈より先に、直感で感じてしまうもの。
スピリチュアルの世界には「波動」や「引き寄せの法則」という言葉がある。
人にはそれぞれエネルギーの状態のようなものがあって、良い波動は良いものを、悪い波動は悪いものを引き寄せる。
意識したものが、現実として引き寄せられてくる。
正直、これだけ聞くと、ふわっとしすぎていて掴みどころがない。
科学的に証明されているものでもない。
それでも、日常の中でこの2つの言葉が、案外バカにできないものだと感じる瞬間が、最近いくつかあった。
まずは「波動」の話から。
社会人になって、とある職場で働くようになってから、朝、職場に入った瞬間、なんとなく「あ、今日ここ暗いな」と感じることがある。
誰かが何かを言ったわけじゃない。
説明できる根拠なんて、特にない。
それでも、空気でわかる。
逆に、なんとなく「今日は活気があるな」と感じる日もある。
理由を聞かれても、うまく答えられない。
ただ、そう感じる。
一若手として現場にいると、こういう直感的な感覚が、意外と当たっていることに気づく。
これって、たぶんスピリチュアル的な「波動」というより、もっと単純な話なのかもしれない、と思うようになった。
人は、相手の表情や声のトーン、態度から、想像以上に多くの情報を直感的に読み取っている。
心理学者アルバート・メラビアンが行った実験でも、感情や態度が矛盾したメッセージを受け取った時、人は言葉の内容そのものよりも、表情や声のトーンといった非言語の情報を優先して信じる傾向があることが確かめられている。
いわゆる「メラビアンの法則」と呼ばれるものだ。
ただし、これはあくまで感情や態度を伝える場面での話で、「話の内容より見た目が9割重要」というような拡大解釈は、本来の実験の趣旨とは違うらしい。
それでも、表情や声のトーンが、思っている以上に相手に伝わってしまう、というのは間違いなさそうだ。
だとすれば、職場の「暗い空気」の正体も、案外シンプルなのかもしれない。
誰かの不機嫌な表情、ため息、声のトーン。
そういうものが、言葉以上に周りに伝染していく。
それを、僕らは「波動」という言葉で、なんとなく直感的に察知しているだけなんじゃないか。
そう考えると、まず大事なのは「笑顔」なんだと思う。
笑顔でいると、悪い空気に多少ブロックされている感覚がある。
逆に、無表情や不機嫌でいると、悪い気をそのまま吸い込んでしまって、自分まで沈んでいく感覚がある。
だから、なるべく笑顔でいようとしてきた。
ただ、ここで一つ気をつけていることがある。
無理に笑顔を振りまきすぎると、今度は自分がすり減る。
愛想笑いを続けるのは、思っている以上に体力を使う。
だから、常に全力で笑顔でいる必要はないと思っている。
疲れている時は、無理しない。
意識できる時だけでいいから、笑顔を心がける。
それくらいの気楽さでちょうどいい。
正直、これをやったからといって、すぐに何かが劇的に変わるわけじゃない。
時間はかかった。
それでも、続けているうちに、なんとなく自分の周りの空気が変わってきたのは感じている。
暗い空気に飲み込まれる回数が、前より減った気がする。
次に、「引き寄せの法則」の話。
これも似たようなことが、もっと身近な場面で起きる。
先日、「今日は野菜をちゃんと摂らなきゃ」と、なんとなく意識していた日があった。
いつものスーパーに、いつものサラダを買いに立ち寄る。
売り場に着くと、値段が上がっていた。
「あ、値上げか」と、一瞬がっかりする。
でも、それしか選択肢がなかったので、よく見てみることにした。
すると、以前と比べて、量が1.5倍くらいに増えていることに気づいた。
前はこんなに入っていなかったはずだ。
値上げされた分、内容量も増えていたらしい。
「野菜を摂らなきゃ」と意識していなかったら、たぶん気づかずにそのままレジに向かっていたと思う。
意識していたからこそ、値段の変化にも、量の変化にも、ちゃんと目が向いた。
これは、心理学でいう「カラーバス効果」に近い現象らしい。
人間の脳は、意識して注目したものほど、無意識のうちに目に入りやすくなるという性質を持っている。
「赤を意識すると、赤いものばかり目につくようになる」というのが、よく使われる例だ。
脳は、日常のあらゆる情報を一つ残らず処理しているわけじゃない。
膨大な情報の中から、「今、自分にとって重要」と判断したものだけを、優先的に拾い上げている。
引き寄せの法則が「意識したものが現実化する」と語るのに対して、心理学ではもう少し引いた説明になる。
現実そのものが変わるわけじゃなく、意識したものに、気づきやすくなるだけ。
それでも、体感としては近い。
意識していたからこそ、値上げというネガティブな変化だけじゃなく、量が増えたというポジティブな変化にも、ちゃんと気づけた。
意識していなければ、見過ごしていたかもしれないものに気づけた、という意味では、これも一種の「引き寄せ」なんじゃないかと思う。
――
波動も、引き寄せも、スピリチュアルという言葉を使わなくても、説明できる話なのかもしれない。
表情や声のトーンが、思っている以上に周りに伝わってしまうこと。
意識したものに、気づきやすくなること。
どちらも、特別な力があるわけじゃない。
ただ、「意識する」ことで、見える景色や、感じ取れる情報の量が、少しだけ変わる。
それだけのことなんだと思う。
それでも僕は、この感覚を「波動」や「引き寄せ」と呼んでおきたい。
理屈で説明しきれる部分も、しきれない部分も含めて、なんとなく感じ取れるこの感覚を、気楽に信じていたいから。
