媽祖廟の会食
団拝が終わると、空気がふっと緩む。
奥のスペースに用意された素食のテーブル。
百合子も自然と列に並ぶ。
お皿に盛られた料理はどれもシンプルだけど、どこか温かみがある。
席に座って一口。
「…やっぱり美味しい」
小さくつぶやく。
――ここの麻婆豆腐、好きなのよね
肉は使っていないのに、しっかりコクがある。
優しい辛さで、体にすっと入ってくる感じ。
周りを見ると、団拝に参加していた人たちも自然と笑顔になっている。
さっきまで厳かな空気だったのが、
今はどこか家庭的で、和やかな時間。
誰かが「好吃」と言い、
別の人が頷く。
言葉は違っても、同じものを美味しいと感じている。
百合子はその空気の中で、ゆっくりと箸を動かす。
――さっきの不安、少し薄れたかも
夢のこと、あの言葉。
完全に消えたわけじゃない。
でも今は、ここにある温かさの方が強い。
伸子はもう一口、麻婆豆腐を口に運ぶ。
――こういう時間があるから、大丈夫な気がする
静かに、そう思えた。
