「私、一日中媽祖廟にいたから」鉄道遅延も雨降りにも遭わなかった百合子
永山の団地群の中を歩きながら、百合子は腕時計を見た。
百合子「すっかり遅くなっちゃった💦」
東京媽祖廟を出てから新宿でティラミスを買い、ようやく福原の部屋に着いた。
ピンポーン。
しばらくするとドアが開く。
福原「お疲れ様!」
笑顔で迎えた福原に、百合子は少し申し訳なさそうに言った。
百合子「遅くなってごめんなさい。廟で頂いたおかずは常温に晒しちゃったから……」
福原は袋を受け取りながら尋ねる。
福原「器に盛る? タッパーに入れる?」
百合子「とりあえずタッパーに入れて。それとティラミスを冷蔵庫に入れてくれる?」
福原「分かった。」
福原は台所へ向かい、百合子はテレビの前に座った。
ニュース番組では地震の映像が流れている。
百合子は驚いて画面を見つめた。
百合子「なんか……地震があったの?」
福原「そうなんだよ!」
福原もテレビを見ながら答える。
福原「九州で大きな地震。」
少し間を置いて、福原が尋ねた。
福原「今日は京王線、止まってなかった?」
百合子「ええ?何事もなかったけど。止まってたの?」
福原「俺が帰る時には止まってたから、今日は小田急線で帰ってきたよ。」
百合子は今日一日を思い返す。
百合子「私は今日一日、媽祖廟にいたから、何の被害もなかったの。」
福原「雨は?降られなかった?」
百合子「雨が降ってきた時には、媽祖廟で中元節の飾りを作ってて、帰る頃には止んでたの。」
福原は少し考えたあと、穏やかに笑った。
福原「媽祖に守られたかな? 百合子さん。」
百合子は天井を見上げ、小さく微笑む。
百合子「もしかしたら、そうかも。」
福原「とりあえず、ご飯食べよう!」
福原は炊きたてのご飯を茶碗によそい、タッパーに移した素食のおかずを食卓に並べた。
一口食べると、思わず声が漏れる。
福原「うーん! 媽祖廟の素食、美味しいなあ! 信徒さんの手作りなの?」
百合子「そうなの。美味しいわよね🤤」
百合子も嬉しそうに頷く。
百合子「今日は比較的涼しかったからかな? デザートの甘いスープはなかったの。」
福原「デザートのスープ?」
百合子「うん。甘い汁物が出ることがあるの。冷たい酸梅湯とか、緑豆湯とか。」
福原は興味津々だ。
福原「手作りの酸梅湯? 美味しいだろうなぁ😋」
百合子「美味しかったわよ! 市販されてるのより、ずっと美味しいの😋!」
二人が夕食を楽しんでいる間も、テレビでは地震の被害状況が次々と伝えられていた。
百合子は画面を見つめながらつぶやく。
百合子「心配ね……」
福原も真剣な表情になる。
福原「百合子さん、台湾の知り合いから連絡来てない?」
百合子はスマートフォンを手に取り、LINEを開いた。
そこには台中の謝さんからメッセージが届いていた。
謝『心配してます』
百合子は思わず声を上げた。
百合子「謝さんが心配してる! 返信しなきゃ!」
すぐに文字を打ち込む。
百合子『私は無事です。』
送信ボタンを押くと、百合子はほっと息をついた。
遠く離れた台湾から気遣いの連絡をくれる友人がいることを、改めてありがたく感じるのだった。
