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社労士事務所で仕事を任せるなら、何から始める?_職員・AIを入れる前の3つの問い_自分・職員・AIの役割設計 1/6

「仕事が増えた。そろそろ誰かを雇った方がいいかもしれない」。一人で事務所を続けていると、そんな時期がやってきます。でも、採用する人や任せる業務を考える前に、決めておきたいことがあります。その人やAIによって、自分は何のための時間を取り戻したいのか。今回は、仕事を渡す最初の設計について考えます。

夕方になっても手続きが終わらない。

電話に出て、郵便物を確認して、電子申請をして、データを入力する。その途中で顧問先から相談が入り、気がつけば本来考えたかった仕事がまた翌日に延びている。

「もう一人では無理かもしれない」

一人で社労士事務所をしていると、そんな瞬間があると思います。

私にもありました。

私が最初の職員を雇った背景には、仕事量が増え、一人では回りにくくなったことがありました。売上も一定のところまで増え、これからさらに仕事を続けていくなら、一人のままでは難しいと感じるようになっていました。

ただ、もう一つありました。

顧問先との打ち合わせに使う時間を、もっと増やしたかったのです。

今振り返ると、こちらの方が大切だったと思っています。

「何を手放したいか」から考えると、仕事の設計はズレやすい

人を雇おうとすると、多くの場合、

「何をやってもらおうか」

から考えます。

電話対応。郵便物。入退社手続き。給与計算。データ入力。

AIなら、文章作成、調査、議事録、資料作成――。

もちろん、最終的にはそれを考える必要があります。

ただ、私はその前に一つ決めた方がいいと思っています。

「その仕事を渡して、自分は何をするのか」です。

例えば、月に20時間分の仕事を職員へ渡せたとします。

ところが、空いた20時間でまた別の細かな作業を始めたら、忙しさはあまり変わりません。

「少し楽になりたい」

だけでも、目的としては弱い。

忙しくなると、空いた時間には自然に別の仕事が入ってくるからです。

だから、仕事を渡すときには、

手放したい仕事ではなく、戻したい時間を先に決める。

私はこれを、「戻したい時間の設計」と呼びたいと思います。

私が最初に渡したのは、電話、郵便、手続き、入力だった

最初の職員にお願いした仕事は、電話対応、郵便物、入退社手続き、データ入力などでした。

社労士業務の中では、比較的切り出しやすい仕事です。

ただし、最初からスムーズだったわけではありません。

入退社手続きを教えていると、

「これなら自分でやった方が早い」

と思うこともありました。

一人で仕事をしてきた人にとって、これはかなり自然な感覚だと思います。

10分で自分が終わらせられる仕事を、30分かけて説明する。

しかも質問を受け、確認し、間違っていないかを見る。

短期的に見れば、自分でやった方が早いのです。

それでも私は、任せると決めた仕事については、なるべく自分でやらないようにしました。

なぜなら、そこで自分が取り返してしまえば、仕事はいつまでたってもこちらへ戻ってくるからです。

ただ、この「任せる決断」については、第2回で詳しく扱います。

その前に、第1回ではもっと上流を決めておきたいのです。

問い① 今の働き方のままでは、何ができなくなっているか

「忙しいですか?」

と聞けば、ほとんどの社労士が「忙しい」と答えるかもしれません。

大切なのは、忙しさそのものではありません。

忙しいことで、何ができなくなっているかです。

私なら、例えばこう考えます。

顧問先の話をもう少しゆっくり聞きたい。

就業規則を作るとき、条文だけではなく会社の背景まで考えたい。

職員と話す時間を取りたい。

研修の準備をもっと丁寧にしたい。

新しい仕事について考えたい。

ここに、その人が本当に戻したい時間があります。

最初に確認したい質問は、シンプルです。

「今、時間があれば本当は何をしたいですか?」

これに答えられないまま人を雇うと、「仕事を減らすための採用」になりやすくなります。

答えられると、「時間をつくるための採用」に変わります。

似ていますが、私はかなり違うと思っています。

問い② その仕事は、本当に自分がやる必要があるか

一人で長く仕事をしていると、

「これは自分の仕事」

という感覚が強くなります。

しかし、

今まで自分がやってきた仕事

と、

これからも自分がやるべき仕事

は同じではありません。

ここは一度分けて考えた方がいいと思います。

私なら仕事を見るとき、最初から「職員かAIか」では考えません。

まず、

「私はここに時間を使う必要があるか」

を考えます。

必要なら自分に残す。

必要でなければ、初めて「では誰に、何に渡すのか」を考える。

この順番です。

AIを使う場合も同じです。

目的を決めないまま新しいAIを入れていくと、便利そうなツールは増えても、「結局どこで使うのか分からない」という状態になりやすい。

人を雇う場合もAIを導入する場合も、最初に必要なのはツール選びではなく、自分の時間の使い方を決めることだと感じています。

問い③ 空いた時間を何に戻すのか

ここが一番大切です。

例えば、

「月20時間空いたらいいな」

で終わらせません。

その20時間を、

顧問先との面談に10時間。

就業規則や人事制度を考える時間に5時間。

事務所の今後を考える時間に5時間。

というところまで決める。

数字は仮で構いません。

重要なのは、空白をつくらないことです。

仕事を渡す目的は、暇になることではありません。

自分が使うべき場所へ、時間を戻すことです。

一人社労士の場合、特に大切なのは、自分にしかできない仕事を一度言葉にしてみることだと思います。

例えば、

  • 顧問先の経営者と話し、背景を確認する

  • 複数の選択肢から判断する

  • 相手の表情や言葉の違和感を拾う

  • 難しい説明を、その会社に合う言葉へ翻訳する

  • 事務所の方向性を決める

こうした仕事まで、すべて自分の手元の事務作業に埋もれさせてしまうと、一人であることの強みまで失ってしまいます。

採用前に私が不安だったこと

もちろん、人を雇うとなれば不安もあります。

私の場合、特に大きかったのは、

「給与を払い続けられるだろうか」

ということでした。

これは経営者として当然考えることだと思います。

だからこそ、

「忙しいから、とりあえず一人」

では決めにくい。

採用によって何時間をつくり、その時間をどこへ使い、それが事務所に何をもたらすのか。

そこまで考えられると、採用は単なる固定費ではなく、事務所の仕事の形を変える判断になります。

AIについても似ています。

「月額いくらだから安い」

ではなく、

どの時間を戻してくれるのか。戻った時間を何に使うのか。

そこまで考えて初めて、導入する意味が見えてきます。

人を雇う前、AIを入れる前の3問チェック

今、人を雇うかAIを使うか迷っているなら、いったん次の3つだけ書いてみてください。

  1. 今の働き方のままでは、何ができなくなっているか

  2. 今、自分がしている仕事のうち、本当に自分がやる必要があるものは何か

  3. 仕事を渡して空いた時間を、何に戻したいか

この3問への答えがまだ曖昧なら、誰を採用するか、どのAIを使うかを急がなくてもいいと思います。

逆に、この3つが見えてくると、

「では、どの仕事を渡すのか」

という次の問いが具体的になります。

仕事を渡すことは、仕事を減らすことではない

以前の私は、仕事を任せることを「自分の仕事を減らすこと」と捉えるところがありました。

今は少し違います。

仕事を渡すことは、自分の時間を、自分が使うべき場所へ戻していくこと。

一人でやってきた社労士ほど、何でもできるようになります。

だからこそ、何でもやり続けることもできてしまいます。

しかし、事務所が次の段階へ進むときには、

「できるかどうか」

ではなく、

「自分がやるべきかどうか」

で仕事を見る時期が来るのだと思います。

そして、その最初の一歩は、職員の採用でもAIの導入でもありません。

自分は、何のために時間を取り戻したいのか。

そこを言葉にすることから始まります。


明日できること

明日の予定表を見ながら、30分で構いません。

今日自分がした仕事を書き出し、その横に、

「この仕事がなくなったら、その時間で本当は何をしたいか」

を書いてみてください。

まだ「誰に渡すか」は考えなくて大丈夫です。

第1回で決めるのは、渡し先ではなく、目的です。

次回は、その目的が見えたあと、多くの一人社労士がぶつかる、

「でも、自分でやった方が早い」

という壁を考えます。

仕事を渡せる人と、ずっと自分で抱える人。

その違いは、能力よりも「一つの決断」にあります。

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smile 社労士・キャリアコンサルタント・産業カウンセラー・コーチ、複数の視点から一つの悩みを見るよう心がけています。この記事が、貴方や会社の判断を少し楽にできていたら幸いです。