見出し画像

【禁煙の失敗学】飲み会で禁煙が崩れる人へ

禁煙してからしばらくは平気だった。

朝も吸わなかった。仕事の合間も吸わなかった。食後もなんとかやり過ごした。自分でも少し驚くくらい、ちゃんと禁煙できている気がした。

それが、飲み会の夜に崩れる。

最初から吸うつもりはない。むしろ、今日は大丈夫だと思っている。店に入る前までは、たぶん本当にそう思っている。久しぶりに会う人がいて、最初の一杯があって、少し笑って、仕事の話がどうでもよくなってくる。体がゆるむ。気も大きくなる。

誰かが「ちょっと外行ってくる」と言う。

その瞬間に、禁煙中の自分と、昔の自分が同じテーブルに座る。

外に出るだけならいい。吸わなければいい。一本くらいなら戻れる。むしろ、ここで断れるなら本物だ。そういう考えが、酒の入った頭の中で妙にもっともらしく聞こえる。

外は少し涼しい。店内の音が遠くなる。誰かが火をつける。煙のにおいが、懐かしいより早く、体に届く。

そこで一本もらうまでに、あまり時間はかからない。

飲み会で崩れる人は、意志が弱いのではないと思う。飲み会が、喫煙に戻るための条件を静かにそろえてくるだけだ。酒が入り、判断が雑になり、喫煙者が近くにいて、外に出る口実がある。しかも、そこには少し楽しい空気まである。禁煙初期の人にとって、これはかなり分が悪い。

やっかいなのは、飲み会での一本が「事故」ではなく「思い出」に寄ってしまうことだ。

久しぶりに吸った一本。
楽しい場で吸った一本。
誰かと笑いながら吸った一本。

それは、禁煙で忘れかけていたたばこの良い部分だけを、かなり都合よく蘇らせる。

翌朝になると、別の現実が来る。喉が少し重い。服ににおいが残っている。スマホを見ると、帰り道にコンビニで買った形跡がある。一本だけのはずが、箱になっている。昨日の夜はあんなに軽かったのに、朝の後悔はちゃんと重い。

ここで自分を責め始めると、禁煙はさらに戻りにくくなる。

本当に見るべきなのは、自分の弱さではなく、あの夜の流れだ。店を出た時点で、もう半分危なかったのかもしれない。喫煙者について外に出た時点で、かなり危なかったのかもしれない。酒が二杯目を越えたあたりで、断る力はもう弱くなっていたのかもしれない。

飲み会の失敗は、たばこを吸った瞬間だけで起きているわけではない。

たぶん、その少し前から始まっている。

禁煙中に飲み会へ行くなら、楽しんではいけないという話ではない。人と会うことまで捨てる必要はない。ただ、昔と同じ夜を過ごして、昔と違う結果だけを期待するのは難しい。

飲み会で禁煙が崩れた人は、自分を嫌いになる前に、あの夜のどこで昔の自分に戻ったのかを見たほうがいい。

たばこは、灰皿の前だけで待っているわけではない。
笑い声の中にも、二杯目のあとにも、店の外の少し冷たい空気の中にもいる。

そのことを知っているだけで、次の夜は少し違う。


参考にした海外記事・資料:

  • Smokefree.gov “Alcohol & Smoking”

  • Verywell Mind “Why Am I Craving Cigarettes Months After Quitting?”

  • Medium “I Quit Smoking for 3 Months and Relapsed. Here’s What Actually Went Wrong.”

いいなと思ったら応援しよう!