累積債務を大きく増加させたアメリカの大統領トップリスト

「アメリカの富を流出させた(債務を増大させた)」という観点から、近現代の主要な大統領がどれだけの金額の累積債務(公的債務)を増加させたかをまとめました。

サックス教授が指摘するように、米国の貿易赤字の裏側には、政府が「稼ぎ(税収)」以上に「使う(支出)」ことで生じる巨額の財政赤字が存在します。


累積債務を大きく増加させた大統領トップリスト

以下の金額は、各政権の任期中に増加した米連邦政府の債務残高(概算)に基づいています。

1. ジョー・バイデン(2021年 - 2026年現在)

  • 増加額:約 8.1兆ドル以上

  • 主な要因: インフラ投資、気候変動対策(IRA)、そしてウクライナやイスラエルへの巨額の軍事・経済支援。

  • 現状: 2026年現在の米国の累積債務は約34兆ドルを超え、利払い費用だけで年間約1兆ドル(国防費を上回る規模)に達しており、サックス教授はこの「使いすぎ」の構造が止まらない現状を危惧しています。

2. ドナルド・トランプ(2017年 - 2021年)

  • 増加額:約 7.8兆ドル

  • 主な要因: 2017年の大規模な法人・所得減税、およびパンデミック時の巨額の経済対策。

  • 経済的影響: 4年間で債務は約40%増加しました。サックス教授は、彼が関税によって「貿易赤字」を解消しようとしたものの、この財政赤字という根本原因を放置したことを批判しています。

3. バラク・オバマ(2009年 - 2017年)

  • 増加額:約 8.3兆ドル(8年間)

  • 主な要因: リーマンショック後の大規模な経済刺激策、医療保険制度改革(オバマケア)、そして低金利環境下での継続的な財政出動。

4. ジョージ・W・ブッシュ(2001年 - 2009年)

  • 増加額:約 5.9兆ドル

  • 主な要因: 「対テロ戦争」に伴うアフガニスタン・イラクでの莫大な戦費、および「ブッシュ減税」。

  • 転換点: クリントン政権末期の財政黒字を、任期中に巨額の赤字構造へと転換させました。

5. ロナルド・レーガン(1981年 - 1989年)

  • 増加額:約 1.9兆ドル(就任時の債務をほぼ3倍に増加)

  • 主な要因: 冷戦下での国防費の倍増と、大規模な減税の同時実施。

  • マクロ的意味: 米国が「世界最大の債権国」から「世界最大の債務国」へ転落した歴史的分岐点とされます。


サックス教授が示す「富の流出」の金額規模

ジェフリー・サックス教授は、インタビュー動画の中で具体的な数字を挙げて説明しています。

  • 年間支出の不均衡: 米国政府は、所得(税収)が約30兆ドルであるのに対し、支出が約31兆ドルという「年間1兆ドルの赤字」を垂れ流している状態にあると例えています。

  • 時価総額の消失: トランプ氏の不合理な関税発表(一国につき最大145%の関税など)により、わずか2日間で世界市場から10兆ドルの時価総額が失われた(富が破壊された)と指摘しています。

結論

金額面で見ると、近年の大統領ほど「稼ぎ以上に使う」規模が加速度的に膨らんでいます。サックス教授の視点では、これらの巨額の赤字(借金)こそが、アメリカの富を他国へ流出させ、ドルの信頼を損なう「ならず者(Rogue)」的な行為の源泉であると言えます。

この表を見る限りバイデンもトランプもあまり変わらないですね。

マクロ経済的な「借金の総額(累積債務の増加)」という数字だけを見れば、バイデン氏もトランプ氏も巨額の赤字を垂れ流しているという点では、サックス教授の言う「稼ぎ以上に使う」構造において大差ありません。

しかし、サックス教授がトランプ氏をより厳しく批判しているのは、その「使いすぎ」という同じ病根に対して、トランプ氏が取った**「解決策のデタラメさ」**にあります。

バイデンとトランプ、何が違うのか?

サックス教授の分析に基づくと、両者の違いは以下のように整理できます。

  • トランプ氏:理論の欠如と市場の破壊

    • 貿易赤字の本当の原因(政府の使いすぎ)を無視し、「相手がズルをしている」という誤った前提で関税をかけた。

    • その結果、わずか2日間で10兆ドルもの富を世界市場から消失させた。

    • 「相互利益(Win-Win)」という経済学の基本を理解せず、分業体制を壊したことが「経済学的に落第」と批判される理由です。

  • バイデン氏:構造的な支出の継続

    • 巨額の債務を増やし続けている点では同罪ですが、少なくともトランプ氏のような「恣意的で予測不能な関税(145%など)」による市場のパニックは(動画の時点では)引き起こしていません。

    • ただし、サックス教授は米国全体を「ならず者(Rogue)」と呼んでおり、バイデン政権下の巨額の対外支援や軍事支出もまた、世界の安定を損なう「使いすぎ」の一部であると厳しく見ています。


まとめ:サックス教授の視点

サックス教授からすれば、**「どちらの大統領も、アメリカが所得(30兆ドル)以上に支出(31兆ドル)しているという現実に正面から向き合っていない」**という点では同じです。

その上で、トランプ氏については「経済の仕組みを理解しないまま、力ずくで(ベネズエラの石油を略奪するような手法で)他国から富を奪おうとし、結果として世界経済全体を沈ませている」という点が、より危険な「ならず者」として映っているようです。

結局のところ、大統領が誰であれ、この「借金に依存した構造」を改めない限り、アメリカの富は流出し続けるという絶望的な状況を教授は指摘しています。

経済学者、特にジェフリー・サックス教授のような構造主義・マクロ経済的な視点から、この「借金に依存した(デッド・ベース)経済構造」と「ならず者的な対外政策」を是正するための解決案を提示するとすれば、以下の4つの柱による抜本的な改革が考えられます。


1. 財政の「規律」と「透明性」の回復

サックス教授が指摘するように、最大の問題は「稼ぎ(30兆ドル)以上に使う(31兆ドル)」という1兆ドルの構造的赤字です。

  • 社会保障と軍事費の聖域なき削減:

    • 予算の大部分を占める「義務的経費(医療・年金)」の効率化と、世界中に展開する過剰な「軍事費」の大幅な削減が必要です。

  • 「緊急令」による独裁的支出の禁止:

    • 憲法に基づき、予算の決定権を議会に戻し、大統領が「緊急事態」を名目に恣意的に予算を動かす慣習(一人支配)を終わらせるべきです。

2. 貿易・外交における「相互利益(Win-Win)」への回帰

トランプ氏のような「奪い合い」のゼロサムゲームではなく、比較優位に基づく多国間協調へ戻る必要があります。

  • WTO(世界貿易機関)の再強化:

    • 一方的な関税(145%など)を廃止し、ルールに基づいた公平な紛争解決メカニズムを復活させます。

  • 「ならず者(Rogue)」的振る舞いの停止:

    • 他国の資源(ベネズエラの石油など)を力ずくでコントロールしようとする略奪的な外交を止め、主権を尊重した安定的な供給網を構築します。

3. 通貨システムの「多極化」と「責任」

ドルの基軸通貨特権(シニョリッジ)に甘え、借金を他国に押し付ける構造を是正します。

  • ドルの特権の段階的縮小:

    • 米国債を「世界で最も安全な資産」として他国に買わせ続けるために軍事力や制裁を背景にするのではなく、財政の健全化によって信頼を回復させます。

  • 多極的な通貨体制の容認:

    • ドル一極集中から、他の主要通貨や国際的な決済手段(SDR等)が共存する、よりバランスの取れたグローバル金融システムの構築を支援します。

4. 国内の「構造的解決」

貿易赤字を解消するために他国を叩くのではなく、アメリカ国内の「貯蓄・投資バランス」を整えます。

  • 国内貯蓄率の向上:

    • 消費を煽る「借金推奨型」の経済から、教育、インフラ、技術開発への「長期投資」を促すモデルへと転換します。

  • 所得格差の是正:

    • サックス教授は、富裕層への過剰な減税が財政赤字を招いていると指摘しており、適切な課税によって政府の「稼ぎ」を適正化すべきだとしています。


結論

解決策の核心は、**「アメリカが普通の国として、所得の範囲内で生活することを学ぶこと」**にあります。

他国の石油を略奪したり、不当な関税で隣国を屈服(capitulate)させたりする行為は、一時的な「 quick fix(その場しのぎ)」にはなっても、長期的にはドルの信頼を失墜させ、アメリカの富を破壊することにしかなりません。

サックス教授が説くように、私たちは「 David Ricardo(デヴィッド・リカード)以来、200年以上かけて築き上げた経済の知恵」に立ち戻り、狂気から正気への道を選び直す必要があります。

日本との相違点:借金をしている相手が「誰か」

ここが日本とアメリカの最も大きな違いであり、貿易赤字に直結する部分です。

  • アメリカ(対外債務型):

    • 相手: 世界中の国々(日本、中国、中東など)。

    • 状態: 国内の貯蓄が足りないため、海外からお金を借りてモノを買っています。これがサックス教授の言う「貿易赤字(=資本の流入)」の正体です。

    • リスク: 海外投資家が「ドルは危ない」と判断して米国債を売れば、通貨暴落や金利急騰を招きます。だからこそ「ならず者」と言われるような強引な手法でドルの価値を維持しようとする動機が働きます。

  • 日本(対内債務型):

    • 相手: 主に日本の国内部門(家計の貯蓄や国内金融機関)。

    • 状態: 日本は政府が巨額の借金をしていますが、国全体(民間部門)では膨大な貯蓄があり、海外に対しては世界最大の対外純資産を持つ「債権国」です。

    • 結果: 国内でお金が回っているため、アメリカのような「貯蓄不足による貿易赤字(恒等式上の赤字)」にはなりにくい構造です。


3. 日本の健全化論が直面する「ジレンマ」

サックス教授のアメリカ批判を日本に当てはめると、日本の健全化論者が抱える課題が見えてきます。

  • 「稼ぎ」の減少: アメリカは「稼いでいるが、それ以上に使っている」状態ですが、日本は「稼ぐ力(生産性や輸出競争力)」自体が弱まっており、近年では貿易収支が赤字になる月も増えています。

  • 出口戦略の欠如: 日本銀行が国債の半分以上を買い支えることで、債務貨幣制度を極限まで引き延ばしていますが、これはサックス教授が批判する「一人支配(または中央銀行による市場支配)」による市場原理の破壊に近い状態です。


まとめ

日本の財政健全化論とサックス教授の議論の最大の共通点は、

「数学的な現実は、政治的な嘘(バラマキや減税の約束)では誤魔化せない」

という警告です。

  • アメリカの教訓: 借金で他国の富を買い続ける「ならず者」の道は、いずれ他国からの信頼を失い破綻する。

  • 日本の課題: 国内の貯蓄があるうちに、いかに「稼ぐ力」を復活させ、借金依存からソフトランディング(軟着陸)するか。

サックス教授が説く「身の丈に合った生活」という教訓は、基軸通貨特権を持つアメリカだけでなく、人口減少と低成長に悩む日本にとっても、より切実な「解決案」として響く内容だと言えます。



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