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『WEAPONS/ウェポンズ』演出は魅力的だがストーリーが無い

『WEAPONS/ウェポンズ』(2025)は確かにユニークで面白い、今年を代表するホラー映画である。子供たちが1クラス丸ごと失踪するという、大変に魅力的なミステリーで物語を牽引しつつ、合間合間でレベルの高いジャンプスケアやその他様々なホラー描写を挟み、最後まで概ね飽きずに観ることが出来た。ラスト、暗い室内を飛び出して始まる"鬼ごっこ"にはどこか突き抜けた明るさもあり、観客の多くが満足感を得たことだろう。全米大ヒットも納得である。

ホラー描写として秀逸なのは、教師である主人公ジャスティン(ジュリア・ガーナー)が教え子の家の前まで行き、そのまま車内で夜を迎えるシーンだ。
カメラは助手席側にあり、運転席で酒を飲んで眠りについてしまったジャスティンを捉えている。ふとフロントガラスの方にパンしたかと思うと、その先にある教え子の家のドアに向かってズームインする。するとドアがひとりでに開き、刃物のようなものを持った女がぬっと現れる。案の定、女はそのままゆっくりとこちらに向かってくる。カメラは迫りくる女を追って、ちょうど先ほどのカメラワークを巻き戻すようにジャスティンの方に向き直る。今や女はドアを挟んで目の前にいる。やはり刃物を持っているようだ。しかし女はドアが閉じていることを悟ると、そのまま車の後方に立ち去ってしまう。観客が一瞬安心した刹那、車のバックドアが開けられる音がする。ジャスティンはまだ眠っているが、座席の後方からハサミを持った手が不意に現れ、ジャスティンの髪を切ってしまう。暗転。
決して斬新な演出ではないが、本作はこうした丁寧な視線の誘導と、絶妙に厭なムードを人物のアクション(歩き方や走り方)に織り込ませる技術に長けていて、しっかりと脳裏に焼き付く。実は人が直接殺される場面は少ないが、間違いなくホラー映画を観ているという悦楽を与えてくれる。

一方で、長編映画として評価した時、明らかにこの映画には「ストーリー」が欠落している。
例えばジャスティンは教師でありながらアル中一歩手前という設定で、警官であり不倫相手となるポール(オールデン・エアエンライク)もまたアル中なので、明らかにアルコールはこの作品において重要なモチーフである。実際、監督のザック・クレッガーもアル中の友人を亡くしたことが本作の脚本を書き始めるきっかけになったと語っている。しかし、作品の途中からはアルコールの存在は消えてしまうので、クライマックスで主人公がアルコールの呪縛から解き放たれるといった展開も全く無い。
そもそも、この映画は6人の登場人物の視点で描かれる6つの章から構成されているので、個人の大きな物語というものがない。であれば、この町自体の物語、この町自体の問題が描かれなければいけないが、どのエピソードもパーソナルなものばかりで、例えばスティーブン・キング作品なら確実に有するマクロな視点が欠けている。
それがゆえに、魔女がこの街を狙った理由、子供たちをウェポンズにする理由も不明である。どうも魔女は子供たちの生気を吸い取っているようではあるが、特に魔女が若返ったりしている描写もないので、とにかくよく分からない。魔女の目的が分からない以上、魔女を倒したことで本質的に何が解決したのか、あるいは何も解決していないのか、判然としない。

クレッガーの前作『バーバリアン』(2022)も似たようなところがあった。郊外の民泊物件を舞台にしたこの作品は『サイコ』(1960)よろしく2部構成になっているが、家の地下で何が行われていたのか、その目的も含めて全ては明らかにされない。主人公のパーソナルな物語も大して物語とは関係していなかったように記憶している。(違ったらすいません)
ただ、『バーバリアン』は女性の抑圧あるいは男性の暴力性というモチーフが通底していたため、長編映画として骨は通っていた印象だ。対して『ウェポンズ』はその骨がない(少なくとも私には見えなかった)。ただただミステリー、サスペンス、ホラーの演出をつるべ打ちにすることで、最後まで駆け抜けてしまうのだ。

というわけで、本作は魅力的な演出に溢れているが、長編としてあるべきストーリーは一切無い。だが別の言い方をすれば、ストーリーは無いが演出は魅力的である。せっかく日本で公開されたのだから、映画館で観ないのはもったいない。






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