【創作小説】御厨ナギはいちゃいちゃしたい 閑話休題2話 「とある夏の午後」みやび視点
小説
夏休みのとある日。
久々にかなっぺとはるっちが夏期講習が休み、かつ私がバイト入ってないという好機に恵まれた。
丁度ナギも公休なので、どちらと過ごすのか悩んだのだけど「友達と遊んでおいで」と背中を押された。
会えなくて寂しいとは思うけど、彼のそういう所が好きだ。
「大人の余裕」ってやつなのかな。
あまり年が変わらないけど、学生と社会人の差だろうか。
「3人で会うのって久々だよね」
「そうだね~」
2人が塾休みの時には私がバイト入ってたりして、タイミングが合わなかった。
去年の夏休みは3人でよく過ごしていたのに。
はるっちが行きたいと言い出した行列のできるカフェで炎天下の中並ばされたり、生まれて初めてカラオケボックスに連れていかれて「自信無いから歌いたくないよ」と断ったのに強制的に歌わされたら目を逸らされ「……誘ってゴメン」と何故か謝られたり、好きな俳優が出てるからと全く興味のない恋愛映画に付き合わされて90分心を無にしていたり、ライブに初めて連れていかれて爆音で終始頭が痛かったり。
あれ?なんか結構酷い目に遭ってた気がする。
「夏期講習後はいつもかなっぺがへとへとになって、みやちんと遊ぶどころじゃないからね」
「塾講師は鬼だね。あいつら人の血が通っちゃいないよ」
「無理して菊花大目指さなくていいのに」
「は?はるっちと同じ大学行きたいというこのいじらしい友情が分からないのか」と2人がじゃれ合う。
本当に仲がいいな、幼馴染らしいけどこの関係、羨ましい。
「ひゅーひゅー。はるっちモテモテじゃん」
「こいつにモテてもな」
「なんだと」
なんだかこういう会話、懐かしくもある。
私が番いの託宣を受けてナギと出会って、それからすぐに夏休みに入ってから菊花大進学を目指す為に本格的に塾通いを始めた2人とはあまり遊べなくなったからなぁ。
ナギとは違う、この「友達」という距離感の会話が好き。
「あたしはかなっぺとしょっちゅう一緒にお昼食べてるから、今日はみやちんの食べたいとこに行こうよ」
「いいね」と、かなっぺも同意してくれる。
言われて考える。
「お昼ご飯、ねえ……」
食べたいものがあるといえばあるのだけど、多分かなっぺ達には難色を示されるだろう。
「希望あるなら言いなよ!みやちんと過ごすの久しぶりって感じだしどこでもいいよ」
「いいの?」
「もちろん!アタシたち友達じゃん!遠慮せずに言いなよ」
やっぱり持つべきものは友達だなぁ。
温かい想いが胸に広がる。
友達っていいなあ。
「……じゃあ吉牛」
「なんでだよ」
「吉野家の回し者か」と、痛くはないのだけど額にチョップを食らった。
ほら、やっぱり嫌がったじゃない。
「……だって……久々の牛丼……おにく」
いや普通に普段肉食べてるけどね。
主にナギが差し入れしてくれる常備菜は栄養のバランスも考えられてて梅しそ豚しゃぶとか煮込みハンバーグとか豚の西京焼きとかあるし。
でも、そういうきちんとした物じゃなくてジャンクフードが無性に食べたくなる時があるんだよ。
デートの時にナギは私が食べたいものを優先してくれるとはいえ流石に、ファーストフード店の中でも回転率を第一に考える牛丼チェーン店には入れないので、ずいぶんご無沙汰だ。
彼と一緒に過ごせるのは楽しいのだけど、ニンニクたっぷりの餃子とかも食べられないからちょっと不満もある。
世の中の恋人たちってこの辺りの悩みはどう解決してるんだろ。
匂いのきついものはバイトが控えてる日は食べられないし、学校のある日も食べられない、中々食べる機会がないんだよ、この手の食べ物は。
「女子高生が吉牛行くとかどんな羞恥プレイだよ」
「なんでもいいって言ったくせに、ぶーぶー。並盛なら1コインでお釣り来るんだよ!庶民の味方だよ」
とはいっても2円しか返ってこないけど。
ついでに言うとすき家の方が安いし、なんなら松屋なんてお味噌汁が付くしコスパがいい。
でもあの吉牛の味が好きなんだよ。
わざと口をとんがらせて抗議の声をあげる。
こういう事を言えるのも相手が友達だから。
気安くていいなぁ。
「限度ってもんがあるでしょ」
いいじゃん、吉牛。
久々につゆだく食べたーい!!
2人にプレゼンするように、スマホで吉牛のサイトを表示する。
「ね!ほら見て。今なら麦とろ丼があるよ。とろろだよ。夏限定だよ!暑い時にはやっぱり麦とろだよね!」
「冬は牛すき鍋、夏は牛麦とろ丼って完璧に吉野家の回し者じゃないかアンタ」
吉野家が私の心の隙間を突いてくるんだよ。
とはいえ、すき家のニンニクの芽牛丼も気になるっちゃ気になる。
流石にダブルニンニク牛丼はアレだけど。
「……麦、とろ……食べたい」
「こんだけ吉牛を熱く語る女子高生って珍しいんじゃない?」
そうかな?
別に誰が何を好きでもいいじゃない。
「……じゃあはるっちたちは吉牛隣のサブウェイにでも行ったらいいじゃん。私は1人で麦とろってくるから。こうなったら、お新香セットまでつけてやるんだから」
もう今日の昼は、吉牛以外は考えられない。
「というかさりげなく、みやちんあたしたちよりも吉牛選びやがったな」
「とんだ薄情もんだな、こいつ」
そして。
「久々っ……!美味しい……美味しいよお」
折衷案として、私は牛麦とろ丼、かなっぺたちはサブウェイで注文したものをテイクアウトして近所の公園のベンチで食べることになった。
気のせいか、噴水近くで遊んでいる子供たちとその親の視線が痛い。
一応この公園は各自ごみは持ち帰る事を条件に飲食可能だからマナー違反ではないのだけど、そんなに女子高生が吉野家食べてるのが奇異なのだろうか。
「すげえ、みやちんの満面の笑みなんて初めて見たんじゃない?」
「うちに遊びに来た時に出す上等な肉喰う時と同じ顔だよ。吉牛、高級肉と同じ扱いかよ。帰ったらお母さんに密告してやる。みやちんはどんな肉でもいいって」
「それはやめて」
吉牛は好きだけど、流石に志島家で出されるお肉とは比べ物にならない。
とはいえ、牛麦とろ丼の、とろろとオクラのとろとろねばねば感が牛肉、そして吉野家の特製のタレの浸みたご飯と絡んで最高。
以前、冷凍の具を買って食べたことがあるけど、やっぱり店のものとはどこか違うんだよね。
牛麦とろ丼を堪能する私とは若干距離をあける2人。
同じ年頃の女が3人並んでベンチに座ってるんだからツレだと思われてるのに無駄な努力を。
なんか悔しいから「ちょっと食べてみる?」と誘ってみる。
あ、すごく嫌そうな顔をされた。
失礼な、美味しいのに。
「夏限定だよ!今食べなきゃ来年までないよ!」と力説する。
「あなたどなたですか?話しかけないでもらえます?」
はるっちが私を他人のように真顔で見る。
「え!ひっど!!!!」
やっぱり女同士の友情なんてゴミだな。
信じた私が馬鹿だったよ。
「もういいよ。2人は麦とろできないままこの夏を終えたらいいんだ」
「あはははは、ごめんごめん。じゃあアタシの生ハム&マスカルポーネサンド食べる?」
「チーズじゃん!食べるわけないよ!」
私がチーズ嫌いなの知ってるから、わざとだな。
「しょうがないな。あたしのアボカドベジーをわけてやろう」
「……アボカド嫌い」
「あんた本当に好き嫌い多いな」と、私の肩めがけて丸めた紙ゴミを放り投げられる。
ゴミを投げ捨てるんじゃないよ。
そんなんだから公園からゴミ箱が撤去されるんだよ。
いやでも普通にアボカドってそんなに美味しいわけじゃないと思うんだけど。
というか味が無く、舌触りが特徴的なだけじゃない?
私はあれの魅力がわからない。
好き好んで食べる人たちを批判する気はないけど。
それから色々と会話をして食べ終わってゴミを鞄に入れ、街を久々に3人で見て回った。
雑貨屋では可愛いイヤーカフがあったのでかなっぺとお揃いで買ったけど、やっぱりはるっちは装身具には興味が無いみたいだ。
3人でお揃いってのもやってみたかったんだけど、こればかりはしょうがないな。
はるっちの両親は、娘が着飾るのを好まないらしいし。
セールに釣られてアパレルショップを見て回って、他愛もない話をしながら本屋で新刊をチェックして、100均で適当に買い物したらその合計金額に青ざめて、チョコクロワッサンのカフェでやけ食いしたり。
そこでも「前の卵サンドは、にんにくがきいてて美味しかったんだけど、今は普通のに成り下がって残念」という話をしたら「吉牛の次はにんにくの話かよ」と罵られた挙句に飲んでた期間限定の白桃スムージーをかなっぺに半分ほど飲まれてしまった。
半分は飲みすぎだよ、1/3程度ならともかく。
「いいじゃん。今日、明日とバイト休みだし、今晩はラーメン屋行ってにんにくたっぷり餃子食べるつもりなんだよ」
「ホントに女子高生かアンタ?」
「ラーメンと餃子とかって、食の好みがおっさんレベルだ」
「ぶーぶー。美味しいじゃーん」
ラーメンには半チャーハンつけたいのだけど、流石にそれは糖質がアレだし、ラーメンと言ったら餃子でしょうが。
半ラーメン、半チャーハン、半餃子ってセットどっかでやってくれないだろうか。
いつもラーメンにつけるのにチャーハンか餃子かで悩むんだけど。
ラーメン屋のチャーハンってパラパラしてて美味しいのに、調理するの家では難しいんだよね。
だからもう諦めて冷凍の炒飯を買ってる。
そんな事を考えていたらスマホが震えた。
私宛に電話をかけてくるのなんて、ナギだけだと思っていたら案の定彼からの電話だった。
何の用事だろう?
2人に断り、一旦店を出て人通りの少ない所に行き通話ボタンを押す。
「お待たせ、ちょっと今カフェだったから。何か用事?」
「そうか、すまない。今晩一緒に食事を、と思ったのだが……どうかな」
会いたいと思ってくれたんだ、嬉しい。
私も同じ気持ちだ。
会いたい……だけど。
「ん~今日はちょっと都合が悪いかな。……明日?明日もちょっと、ね」
今晩はニンニクたっぷり餃子とラーメンって決めちゃったんだ。
かといってナギと一緒にそんなものを食べる勇気はない。
そしてちゃんとケアするとはいえ、明日も匂いが残るかもしれない。
好きな人に「ニンニク臭い」と思われたくない。
幻滅されたくない。
私の言葉を受けてナギは戸惑ったようだった。
しばらく沈黙が流れた。
「ナギ?」
「ああ、いや。そうだよな、みやびにも都合があるよな」
心なしか、気落ちした声だ。
折角誘ってくれたのに。
でも「にんにくたっぷり餃子食べたいから」なんて言えない。
流石に好きな人相手には言えない。
「……ゴメンね」
「謝らなくていいよ。じゃあ、月曜に」
「うん、またね」
名残惜しいけど、カフェに2人を待たせてるし通話を打ち切る。
「はぁ」
タイミングが悪いなぁ。
でももう決めちゃったものはしょうがない。
明日はコインランドリーに行ったり、部屋の大掃除をするとしようか。
そして夕食にと一人入ったラーメン屋で「今だけ限定ルーローチャーハン」というメニューを見つけてしまい、ラーメン・餃子セットとどちらにするのか真剣に悩む羽目になるのだった。
掲載ページへのリンク
御厨ナギはいちゃいちゃしたい
掲載ページ一覧
なろう小説
https://ncode.syosetu.com/n2960ki/
pixiv
カクヨム
ノベルアップ
https://novelup.plus/story/834831670
Solispia
ノベルバ
ネオページ
下記のこちらは更新停止してバッドエンド1を置いています
エブリスタ
https://estar.jp/novels/26389511
アルファポリス
https://alphapolis.co.jp/novel/315615347/570953909
ラノベストリート
https://ln-street.com/novels/a49c887d-8ce9-4285-9412-31355cb0939e
