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SS【風が吹く】#シロクマ文芸部『熱帯夜』
小牧幸助さんの企画「熱帯夜」に参加させていただきます☆
お題 「熱帯夜」から始まる物語
【風が吹く】(565文字)
熱帯夜という言葉が意味をなさなくなって久しい。
熱帯夜という言葉に意味があるのは、そんな夜が稀にしかないからだ。
日が暮れても25度を下回らない夜を熱帯夜というのだが、25度なんて夢のような数字である。
その程度で熱帯とは片腹痛い。
というより、暑さのせいで片頭痛が酷い……。
昨夜も30度を下回らなかったうえに風もなかった。
夏が終わる頃には、脳みそが半分くらい溶けているのではないだろうか。
すると、多くの人がダメ人間になるかもしれない。
ダメ人間が増えれば世界はどうなるのだろう。
ダメ人間は働き者ではないし、なにをするのも遅く、気が向かなければ約束も破り、やりかけたことも放置して昼寝をするような人間だ(今の私だ)。
こんな人間が増えたら……?
……案外、平和になるかもしれない。
ダメ人間が少数しかいない場合は、そうでもない人間から大いに責められて生きにくいのだが、ダメ人間が多数派となれば、そうではない人間たちに対して「おまえたちは働きすぎだ、いいかげんにしたまえ、常識をわきまえよ」と言って責めることができる。
衆寡敵せず。
多は、この世界では今でも正義なのだ。
ああ、多数派になりたい……。
そんなことを痛む頭で考えながら寝返りをうつ。
かすかに風が吹く。
しかし風鈴が鳴るほどでもない。
涼はまだ遠く、熱帯夜は続く。
生きづらい世に風が吹くのはいつだろうか。
おわり
© 2026/7/25 ikue.m
……エッセイじゃなくて創作ですからね~
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