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『プラダを着た悪魔2』、僕が観たかった続編とは少し違った

面白くなかった、ではないんです

観終わったあと、感想がうまくまとまりませんでした。

つまらなかったわけじゃないんです。好きな場面はいくつもあったし、あの人たちにまた会えたこと自体が嬉しかった。

ただ、最後にひとつだけ引っかかったところがあって、それが今も消えていません。作品として良くなかった、という話じゃなくて、僕が観たかった続編とは少し違った、という感じに近いです。

戻ってきたアンディは、普通に嬉しかった

今回のアンディは、ジャーナリストとして20年やってきた人として出てきます。そのアンディが、勤め先の人員削減であっさり職を失う。面と向かって伝えられるわけでもなく、まとめて切られる形で。

ランウェイのほうも安泰ではありません。広告費は削られ、紙からデジタルへの移行を迫られている。

そこへアンディがフィーチャーエディターとして入っていく。しかも、彼女を推していたのは裏で動いていたナイジェルだった、と後から分かる。

ここまでは、普通に嬉しかったです。

昔のアシスタントとしてではなく、20年やってきた人としてミランダの隣に立つアンディが見たかったので。ナイジェルがまだあそこにいることも含めて、観てよかったなと思いながら観ていました。

※ここから先は、『プラダを着た悪魔2』と前作の結末に触れます。

それでも、最後の決断だけが引っかかった

引っかかったのは、最後にアンディがランウェイに残ることを選んだところです。ここだけが、どうしても飲み込めませんでした。


前作のラストを、僕は今でも支持している

理由ははっきりしていて、前作のラストが好きだからです。

前作のアンディは、ランウェイで仕事ができなかったから辞めたわけじゃない。むしろ逆でした。仕事はできるようになっていたし、ミランダにも認められていたし、ファッションの面白さも知っていたし、ナイジェルたちがどれだけ本気であの仕事をしているかも分かっていた。

そこまで行った上で、最後に自分の道を選んだ。

「ここでは成功できない」ではなく、「ここで成功できるとしても、自分はここを選ばない」に見えていたんです。

公開当時もそう受け取りましたし、今観てもその気持ちは変わりません。

「戻る」と「残り続ける」は違う

アンディがランウェイに戻ること自体には、むしろ抵抗がありませんでした。

20年あれば人も会社も変わります。ミランダも、ランウェイも、アンディ自身も、あの頃と同じではない。だから戻ってくる展開は、むしろ見たかったほうです。

後で調べて知ったんですが、劇中のランウェイのオフィスは前作の8倍くらいの広さになっていて、デジタルや動画の部門も新しく入っているそうです。ミランダの部屋も、前作みたいに長い廊下の先にあるんじゃなくて、みんなのいるフロアのすぐ横にある。物理的な意味でも、あそこはもう前作と同じ場所じゃないんですよね。

引っかかったのは「戻る」ではなく「残り続ける」ほうでした。

アンディがこれからもランウェイで働き続けることを選んだと分かった瞬間、前作のあの決断まで、少しだけ違って見えてしまいました。

あのとき彼女が辞めたのは、自分の価値観を選んだからじゃなくて、ミランダに反抗したかっただけだったのかもしれない。

そんな見え方が、一瞬よぎってしまったんです。

20年も経っているし、アンディもランウェイも変わっている。それは分かるんです。

しかも今回は、前作と同じ監督と脚本家が戻ってきていて、20年後に今度はアンディを残す方を選んでいます。

でも、頭で分かるのと、飲み込めるのは別なんですよね。

それならなおさら、今のアンディがなぜここで働き続けたいと思ったのか、その心境の変化をもっと見たかった。僕にはその積み重ねが足りませんでした。

あとでアン・ハサウェイのインタビューも読みました。今回のアンディは「チームでいたい」と気づく、という話でした。

なるほどとは思った。でも、それでも僕の引っかかりは消えませんでした。

ナイジェルはやっぱり良かった

ここは、さっきまでの話とは切り離して書きます。

ナイジェルは良かった。

前作からずっと、ファッションもランウェイという仕事も本気で好きな人でした。だからナイジェルが今もあそこにいることには、まったく違和感がない。むしろ画面に出てくるたびに安心しました。

それに、さっき書いたとおり、今回アンディをランウェイに引き戻したのはナイジェルでした。20年のあいだ、ずっとアンディの仕事ぶりを見ていたからだそうです。表には出てこなかったけど、ずっと見ていた人がいた、という話に弱いんですよね。ナイジェルだけは、前作のアンディと今のアンディを、ちゃんと地続きで見ている人なんだと思います。

ミラノで、ミランダがナイジェルを表に立たせる場面。あそこは素直に良かったです。

ミラノの場面は、実際のドルチェ&ガッバーナのショーで撮っていたそうです。しかもそこには本物のアナ・ウィンターまでいたらしい。20年前には「アナ・ウィンターを思わせる人物」として見ていたミランダが、今度は本人と同じ空間にいる。なんだか映画の外まで20年経ったんだな、と妙に面白かったです。

最後のアンディとのやりとりも好きでした。

自分でも矛盾していると思うのは、ナイジェルがランウェイにいるのも、アンディが戻ってくるのも嬉しいのに、アンディがこれからもここに残る、という一点だけが好きになれないところです。ラストシーンが嫌いなわけじゃないんです。ただ、その場所にこれからもアンディがいるという決断だけが、どうしても引っかかる。


この矛盾は、整理しないままにしておきます。

本当は、どんな続編が見たかったのか

書きながら分かってきたんですが、僕が見たかったのはたぶんこういう話でした。

20年ぶりに戻ってきたアンディが、ミランダともう一度仕事をして、ナイジェルとも再会して、最後にもう一度ランウェイを出ていく。前作と同じ形ではなく、今のアンディなりのやり方で、自分の道を選び直す。

戻ってきてほしくなかったんじゃなくて、戻ってきた上で、もう一度出ていってほしかったんだと思います。

だから、余計に惜しい

今の気持ちに一番近いのは、惜しい、という感覚です。

好きな場面もあった。懐かしさもあった。キャラクターたちにまた会えたことも嬉しかった。だからこそ、一番大事なアンディの決断だけが引っかかってしまった。

そして何より寂しいのは、『2』を観たことで、ずっと好きだった前作のラストまで少し違って見えるようになったことです。前作が変わったわけじゃないのに、こちらの見え方だけが変わってしまった。最後の決断さえ違っていたら、僕はこの続編をかなり好きだったかもしれない。

カバー写真:Photo by Macall Polay. © 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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