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「AIへの指示、いつも手戻りする」人へ。曖昧な依頼を要件にする質問リスト|テックトレンド観測室

「いい感じにまとめて」をそのままAIに投げていませんか

上司から「例の件、いい感じに資料にまとめておいて」と言われる。顧客から「もう少し刺さる感じの文章にしてほしい」と言われる。あなたはそれをそのままAIに打ち込む。出てきた答えを見せると「なんか違う」「そういうことじゃないんだよね」と返ってくる。もう一度直して出す。また違うと言われる。

この往復、心当たりがある人は多いはずです。検索で「曖昧な依頼を要件にする」というやり方にたどり着いた人は、おそらくAIの使い方そのものより先に、この手戻りのループから抜けたいのだと思います。

AIが悪いのではなく、依頼がまだ「材料」になっていない

ここで多くの人がやってしまうのが、AIの指示文(プロンプト)をいじって精度を上げようとすることです。言葉を丁寧にする、条件を細かく書く、例文を足す。それでも的外れな出力が続くなら、直すべきはプロンプトではなく、その前段階かもしれません。

AIは依頼者の頭の中にある「本当はこうしてほしい」を知りません。人間の同僚であれば、表情や過去のやり取りの蓄積から曖昧な指示を勝手に補って動いてくれることがあります。AIにはその蓄積がありません。曖昧な指示を渡せば、曖昧なまま処理して、それらしい形の答えを返してきます。「もっともらしいが的が外れている」出力が生まれるのは、AIの性能の問題である以上に、渡した依頼がまだ要件と呼べる状態になっていないことが多いのです。

つまり順番が逆なのだと思います。曖昧な依頼をAIに投げて要件を作らせようとするのではなく、AIに質問させて自分の依頼を要件に変える。この順番に変えるだけで、往復の回数はかなり減ります。

AIに聞かせる:依頼を要件に変える質問リスト

具体的な場面で試してみます。上司から「例の件、いい感じに資料にまとめておいて」と言われたとします。ここでいきなり資料の中身をAIに書かせるのではなく、まず次のように投げてみてください。

以下は上司から受けた依頼です。この依頼だけでは資料を作るには情報が足りません。

作業を始める前に確認すべき質問を、重要な順に5つ挙げてください。

質問には「なぜその確認が必要か」も一言添えてください。


依頼内容:「例の件、いい感じに資料にまとめておいて」

これを実行すると、たいてい次のような質問が返ってきます。

・誰が読む資料か(社内共有か、社外提出か)

・何を判断・決定するための資料か

・分量やページ数の目安はあるか

・既存の資料や過去の類似資料はあるか

・提出・共有の期限はいつか

ここで重要なのは、この質問リストを自分で全部埋めようとしないことです。答えられるものはその場で埋め、答えられないものは上司に聞きに行く材料にします。「いい感じにって、具体的にはどういうことでしょうか」と漠然と聞き返すより、「この資料は社内共有用か社外提出用か、どちらでしょうか」と聞くほうが、相手も一言で答えやすく、往復も減ります。

必要な情報が埋まった状態で改めてAIに指示を出せば、出力の的中率は変わってきます。要件が固まっていない依頼を何度も書き直させるより、要件を先に固めるほうが結局早いというのが、このやり方の考え方です。

この方法が効かない場面もある

一方で、この質問リストが機能しない場面もあります。依頼した本人がそもそも自分の要望を言語化できていない場合です。「いい感じ」の中身を上司自身も具体的にイメージできていないことは珍しくありません。この場合、いくら鋭い質問を用意しても「うーん、任せるよ」としか返ってこないことがあります。

このときは質問をぶつけるのではなく、たたき台を先に見せて反応で確認する方法に切り替えるほうが早いです。「A案とB案、どちらのトーンに近いですか」と選ばせる形にすると、言語化できない相手からも情報を引き出しやすくなります。質問リストは万能ではなく、あくまで「相手が答えられる形の依頼かどうか」を確認する一つの道具だと考えておくとよいと思います。

また、緊急性が高く確認の時間が取れない依頼では、質問を重ねる余裕自体がないこともあります。その場合は要件を仮置きし、その仮定を出力の冒頭に明記しておくと、あとで手戻りが起きても「どこがずれていたか」がすぐに分かります。

まず何をするか

この記事を閉じたら、今抱えている一番曖昧な依頼を一つ思い出してみてください。それを上に載せた質問文にそのまま当てはめて、AIに質問リストを出させてみる。出てきた質問のうち、自分で答えられるものと、相手に確認しないと分からないものを仕分ける。それだけで、次にAIに投げる指示文の解像度は変わります。手戻りを減らす一手間は、指示文を凝ることではなく、この仕分け作業にあります。


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