ロボット活用で人の点検業務時間を半減可能 ugoの点検DXソリューション
2025年7月20日、幕張メッセで開催中だった「ものづくりワールド」でロボットスタートアップのugo株式会社 CEO 松井健氏が講演した。拝聴したのでまとめておく。

「人とロボットの融合」=ugo

左がugo mini、右がugo Pro
ugo(ユーゴー)の社名は、「人とロボットの融合」という言葉の「融合」を意味する。ugoではロボットをスマホやPCのように簡単に業務のなかで使っていく時代が来ると考えており、ロボット設計から量産まで自社のオフィス内にある工場で行っている。
ロボットは、大きくわけると2種類展開している。
一つはヒューマノイド型の「ugo pro」。
もう一つは小型ロボットの「ugo mini」だ。
ロボットだけではなく、ロボットを簡単に使うためのクラウドプラットフォームも開発している。管理画面では、ロボットにやってほしいアクションをビジュアルプログラミングを使ってノーコードで作ることができる。またレポート機能や、外部システムとAPI経由で連携する機能などの仕組みが用意されている。
ugoを使った点検ソリューション
現在は警備・点検・案内の3つの領域でロボット活用を進めている。「ものづくりワールド」は製造業向けイベントなので、松井氏は今回は点検ソリューションについて紹介した。
日本は少子高齢者化で労働力が減っていくことが予想されている。2025年現在、63万人が不足していると言われているが、5年後には341万人、さらに2040年には1,100万人が不足すると概算されている。

つまり、現在の人手不足は始まりに過ぎない。
労働力不足によって現場では業務負荷がどんどん増えていく。時間が取れなくなって技能継承や教育もできなくなる。それによってオペレーションの水準が下がり、問題が発生しがちになり、さらに辞める人も増えがちといった負のスパイラルが発生する可能性がある。
点検領域でも時間がとれないケースが増えている。そこで政府も「アナログ規制の撤廃」などの対策を進めている。従来は現場に人がおもむいて実際に計器を目視して確認しなければならなかったルールに対して、デジタル技術の活用を許可することで規制を緩めていこうという動きだ。
点検現場は遠方や山岳地帯、離島の場合もある。つまり現場への移動時間がかかっている。また点検は五感を使って人が行っているアナログ作業なので、どうしても属人的、カン・コツ頼りになりがちだ。災害時に、現場の状況が見えないという課題もある。
これらの課題に対して、常駐ロボットやAIを使うことでリモートから複数拠点を管理することで効率化しようというのがugoのビジネスモデルだ。

点検用途向けロボット「ugo mini」

点検用途のために開発されたのが小型ロボット「ugo mini」である。直径40cm前後の清掃ロボットサイズで、通路幅が狭い現場でも走行できる。
大きな特徴は、ちょんまげのように突き出た「テレスコピックポール」。
ポール先端には4Kカメラと、各種センサーなどが追加可能なUSBポートが二つある。照明としてリングライトがついているので、暗所でも撮影できる。伸び縮みするので高所や低い場所の設備も点検可能だ。
屋内設備の自動点検を対象としており、データセンター、電気ガス水道などのインフラ施設のほか、工場の生産設備や空調設備や熱源設備の点検に活用されている。「このような、データを日々収集する作業は、人ではなくロボットが行うべきだ」と松井氏は語った。

点検のメリットは、壊れる前にメンテナンスを行える予防保全である。予防保全を行うためには通常時のデータ取得を定期的に行うことが重要だ。ただしそのデータ取得と活用にはコストがかかるので、ロボットとAIを活用していくべきだという。
松井氏は動画で、ugoの点検DXソリューションを紹介した。デジタル化されていないアナログメーターの点検業務でもデジタル化できる。
ugo点検パッケージの特徴
ugo点検パッケージの特徴は4つある。
一つはメーター読み取り機能。カメラを活用してメーター数値を認識してデジタル化する。
二つ目は自動アラート機能。数値に異常が検出されると自動で通知してくれる。
三つ目はセンサーデバイス連携機能。環境センサーと連携して数値を記録して自動でデータ化する。
四つ目は点検結果のデジタル化で、管理が難しいデータを運用する。
点検業務フロー全体をロボット、IoT機器、システムと連携して自動化することで、従来は人が現場におもむいて、歩き回って五感をつかって記録していた作業をロボットが自動巡回してデジタル化して記録できるようになる。それによって、人は現場の状況を見ずに現場レポートを見て、何かあれば現場に行くだけでいいという業務フローに変えることができる。
ugoではレポートを作ってエクセルで出力する機能などのレポート作成支援機能のほか、各種センサーも色々なものを追加できるようにしているので、様々な点検項目が追加可能だと紹介した。
特にニーズが多いのはメーター読み取り機能で、AI技術の開発会社と連携することで、様々なメーターデータの数値化が「設定をポチポチするだけで連携可能」だという。

異常検知もニーズが増えている。現場で撮影された写真から異常があれば人に連絡することができるようになっている。ugoではリモート点検ソリューションのLiLz社と提携しており、同社の「リルズガード」と連携することで、ugoで撮影した画像から異常検知させることができる。
異常検知の方法も簡単で、検知したいところを数回撮影して、正常なデータをAIモデルに学習させる。さらに異常の状態を追加学習させて閾値を設定することで異常検知AIが比較的簡単に作れる。
テレスコピックポールの先端にはUSBポートが二つあり、グラフィカルに温度情報を確認できるサーマルカメラや、温度・湿度センサーなどを簡単に追加可能だ。
たとえば特定エリアの温度だけが異常値を示していたら人に通知するといった使い方ができる。「非常に拡張性の高いロボットだ」と松井氏は紹介した。
点検以外にも「分身ロボ」としても活用できる。遠隔地の本部からロボットにログんすることで現場状況を確認したり、現場にいる人とコミュニケーションしながら立ち会い業務を行うことも可能だ。これによって長距離移動の削減による省力化ができる。

たとえば、海外工場の状況を見るといった使い方もできる。マイクとスピーカーもあるので、案内ロボとしての活用も可能だ。
ugoによる点検業務ソリューションによって、人が決められた時間にルート点検していたものを自動化したり、作業品質のばらつきや省力化にも繋げることもできる。予防保全に繋がる平常データを収集することも可能だ。
ロボットではいけないところもある。そのためにIoTデバイスとの連携も可能だ。「ugo mini」自体をブリッジとして使ってIoT機器からデータ収集することもできる。
何かあったときの現場駆けつけ・復旧も期待されるが、それはまだまだできない。
だが「一時切り分けの情報収集には今でも使える」という。「どの工具が必要か、どの人に対応させるべきか、どうすれば適切な対処をすくな時間ができるかといった判断が可能になる」と松井氏は語った。
製造業、データセンターやプラント点検で活用

ugoによる点検ビジネスの本格展開は2025年1月から。データセンターやプラントへの導入事例が増えていると紹介した。
点検ソリューション導入種別の内訳は、
データセンター16.1%、
製造業 32.3%、
エネルギー22.6%、
水プラント6.5%、
そのほか22.5%
となっている。
製造業では、たとえば部品工場で使われている。部品工場では毎日部品を生産するが、顧客に出荷するのは製造時よりも数ヶ月先になることもある。もし、あるロットで問題があったときには、その問題発生時点の生産設備の状態などをトレースする必要があるが、そのトレーサビリティを確保するための日々のデータ取得などに使われているとのことだった。
ugoは第8回インフラメンテナンス大賞 総務大臣賞を獲得している。
点検ロボット導入検討は、まず業務整理から
点検ロボットを実際に導入しようと考えた場合、どこが検討ポイントになるのか。「一番考えなければならない点は、今まで人が行っていた業務のうち、どこを自動化するのか、何を人に任せるのか。要するに業務の整理が重要になる。そこを間違えるとあまり効果が出ない」と松井氏は語った。

ある機械室での事例ではロボットが走行できる部分と、人でないとアクセスできない場所を整理して分担し、全点検項目の75%をugoで実施できるようにした。これによって、人の点検業務時間を半減できた。そして空いた時間は、人にしかできない作業へと業務リソースを集中できたという。
点検用途の設備にはロボットだけではなく、固定カメラやIoTセンサもある。どれも一長一短ある。常設される固定カメラやIoTセンサはデータをずっと取れるのでミッションクリティカルな設備でリアルタイム性が必要な場所には向いている。いっぽう広大な設備のなかですべてに固定カメラをつけるには電源工事なども必要となり、メンテナンスコストも必要になる。
そこで、「それほどリアルタイム性が必要ではない場所ではセンサーを搭載したロボットが巡回するというのがベストではないか」と松井氏は語った。
現場、ugoのロボットはホイールベースなので、段差は1cmまでしか乗り越えられない。障害があるようなところはスロープやカーペットなどを活用することで「ロボットフレンドリー」な環境作りも重要になる。また現状では防塵が必要なところや屋外は対応不可となっている。インターネット環境も必須だ。
松井氏はいったん「製造現場における予防保全は不可欠な取り組み。設備保全に必要なものは高頻度でデータを収集できる仕組みづくり。ugoは動くセンサー、動くカメラとして必要なデータを収集できるロボットであり、移動や歩行などのアナログ業務が削減できる」と講演を一度締め括った。
将来はVLAモデルを使って「パートナーとしてのロボット」実現を目指す

松井氏は会場からの質問に答えるかたちで、将来の話を続けた。
ugoでもいま生成AIを使った対話、さらに、視覚言語モデル(VLM)、そして視覚言語アクションモデル(VLA)の活用に取り組んでいる。VLAを使うことで、ロボットは自身に搭載されているカメラの画像から自分が見ているものが何なのか認識して、自らアクションを生成できるようになる。
現状のルールベースの行動とは異なり、ロボットはマルチモーダルデータを扱って動作するようになる。さらに将来は「エージェンティックAI」が俯瞰的に全体の傾向を分析して行動計画を立案して動作できるようになると想定される。

松井氏はアメリカのFigure社が公開している、物流倉庫でヒューマノイドが作業する動画を示し「ヒューマノイドは米中で競争が進んでいる。日本は出遅れており、非常に焦っている」と語った。
松井氏は、ugoを創業した(当時の社名はMira Robotics)頃の2019年当時、家事ロボットを目指していた時期の動画を紹介した。当時、その試みは失敗した。その後、ピボットして今日に至っている。
そして「我々が目指しているのはツールとしてのロボットではない。現状を理解し自律的に考え、先を読み、気を利かせて行動する、パートナーとしてのロボットを目指して技術開発していこうとしている」としめくくった。

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