物語を歩く─兵庫編Part2─
前回は『横溝正史生誕の地碑』を訪ねたが、Part1で頂いたコメントを見るかぎり、あまり知られていないスポットのようだ。

たしかに、大御所の記念碑としてはあまり目立たない場所にある。休日にもかかわらず、感動に浸って立ちどまっているのは私だけ。
写真は並ばないと撮れないんじゃないかと心配していたので、拍子抜けするほどだった。
二つのメビウスの輪が繋がったデザインは、難事件が名探偵によって見事に解決される横溝作品のイメージなのだそう。
ここから神戸港へ行く途中に、横溝氏の生家近くに連なる赤煉瓦倉庫があるということで再び歩き出す。
しばらく歩くと海の方面に大きな観覧車が見えてきた。ハーバーランドにあるモザイク大観覧車で、神戸の街並みや六甲山、神戸大橋などが一望できるという。目印にしながら歩いていると、赤煉瓦の倉庫が目の前に現れた。

こんな塀だったんだろうか🤔
たぶん当時とは雰囲気が違うのだろう。

これが横溝氏が少年時代にインスピレーションを受けたという赤煉瓦塀だろうか。『監獄の塀』を想像していた少年は大人になり、作品の中にその情景を描いた。これから読んでいく横溝作品の中で出会う原景色になると思うと楽しみだ。
ここまで来たら神戸港で海が見たい。
手元にある本は、内田康夫氏の『神戸殺人事件』。
ざっくりとしたあらすじは──神戸港で元船長が殺され、アリバイのない浅見光彦が嫌疑をかけられる──というもの。
舞台は三宮や神戸港。

ドラマの浅見光彦のイメージが強いからだろう。

神戸港内は静かだった。
ここで物語の旅はおひらきとなる。あとは夕方の飛行機に乗るため三宮のホテルに引き返すのだけれど、ちょっと寄り道を。
最寄りの元町駅を目指して歩いていくと、途中『うみねこ堂書林』という古書店が見えてくる。
店主さんは横溝正史氏の熱狂的ファンで、前出の『横溝正史生誕地碑』建立に尽力されたらしい。
ガラス戸の閉まった店を覗き込むと、奥に店主らしい方が座っているのが見えて、入るのを躊躇する。(こんな時に発動する人見知り🫥)
人ひとり通るくらいの通路に大きめの鞄を持った私が入ったら、邪魔な上に、鞄で積んでいる本をなぎ倒すかもしれない。

西村京太郎氏の推理小説だった。
再び、駅へ向けて歩く。


あとは空港で551の肉まんを買えば旅は終了だ。
──では姫路城はいつ行ったんだ⁉️となるが、兵庫に着いた日が唯一晴れマークだったので、飛行機を降りたその足で向かったのだ。
というわけで、ここから話は二日前にさかのぼる。
姫路駅を降りたら、正面に姫路城が姿を現した。別名『白鷺城』の名の通り、白く美しい佇まいに心が躍る。
お昼時だったこともあり、歩いて向かう途中で『紅宝石』という中華菜館に入った。コスパ最高のメニューの数々の中から『麻婆麺』を注文する。
すると店員さんから「同じお値段で、こちら生ビールがつきますがいかがですか?」と、驚きの提案が!(ちなみにドリンクバー付き税込1100円🍜)

この時は姫路城の階段があんなに過酷とは知る由もない。
ボリューム満点の食事を終えて、姫路城までのんびり歩く。思ったより遠く感じるのはアルコールのせいだけではないだろう。
ようやく姫路城に着き、さっそく真正面から写真を撮っていたら、知らないおじ様にダメ出しされた。
「姫路城はそこから撮るんやないで。あっちから撮らんと」
どうやら姫路城には綺麗に撮るスポットがあるらしい。
「え、そうなんですか?😳(誰だろう、この人)」
「そこから撮るんは観光客だけや。姫路城は両側の斜めから撮るんが一番美しいんや」
私、観光客なんで...という言葉を飲み込み、綺麗に撮れるところまでスタスタ歩くおじ様のあとを追う。
小高い場所まで歩くと振り返り、「ここから見たら全然違うやろ」
なるほど...そう言われるとそんな気もしてくる。
おじ様は何者なのかという謎は残るが、とりあえずそこから写真を撮ってみる🏯


見比べて首をかしげている間におじ様の姿は消えていた。と思ったら、向こうでカップルを捕まえ「写真はそこちゃうで」と話しかけており、カップル二人はコクコクとおじ様の言葉に頷いてこちらへ向かってくるところだった。
いよいよ姫路城の中へ進む。
その前に入場料がいるのだが、今年3月に一般1000円から2500円と一気に大幅値上げ!姫路市民は1000円で、18歳未満は無料という。
18歳未満ねぇ...。
一瞬遠い目をするも、おとなしく支払う。

『暴れん坊将軍』で頻繁に登場することから、
『将軍坂』の愛称で親しまれている。
他にも『天地明察』や『忠臣蔵』に登場。

当時の建築技術の凄みを感じる圧倒的な高さと守り。

国宝姫路城の文字と、初代藩主池田家の家紋入りの
立派な肩掛けビニール袋が配られ、靴を入れる。
(この袋は翌日の大雨の中、本を守るのに役立った)
何枚かお城内部の写真を。
泉鏡花の『天守物語』では、天守に棲む妖かしの姫と鷹匠・姫川図書之助の悲恋が描かれる。
物語を彷彿させる『武者隠し』の部屋や、外の地下部分にある『腹切丸』。(ここで実際に切腹があったということはないようだ)
物語を読んで行くと、さらに見学が楽しめるかもしれない。

当時の日本の技術と経済力の粋を集めて造られた、
まさに国家プロジェクト。



まさに『天守物語』の舞台である。
この刑部神社(長壁神社)は、災害や空襲からの
焼失から城を守った神として祀られている。
もともと姫路城が建つ前からあった地主神。

傾度は緩やかな階段で約44度、急な階段では50度以上。
かなりハードな見学で、体力は確実にいる。
最後の最後を締めくくる、もう一つの物語の舞台を。
「いちま〜い、にま〜い」と皿の数を数え、啜り泣く女の幽霊。そう、お菊の『番町皿屋敷』......
ではなく、『播州皿屋敷』だ。

挙げ句にこの深い井戸に投げ込まれ殺されてしまう。
播州皿屋敷は『皿屋敷伝説』の元祖であり、室町時代の恐ろしい古典的怪談として語り継がれている。
そして『番町皿屋敷』のほうは、大正時代に劇作家によって『播州皿屋敷』を参考に、江戸を舞台にして書き下ろした近代的な作品なのである。
場所の違う二つのお菊物語があったことを、私はこの旅で初めて知った。
皆様はご存知だっただろうか。
よく歩いた物語の旅。兵庫県はとても素敵な街だった。また近いうちに訪れようと思う。
〜追記〜
ここまでの長い旅に、読んで同伴してくださった皆様、本当にありがとうございました😊
書きながら、再び皆様と一緒に歩いているような楽しいひとときでした。
兵庫で親切にしてくださった方々、楽しく触れ合ってくださった方々にも心より感謝申し上げます🙏
なな
