セッション定番曲その243:Recado Bossa Nova (The Gift)
ジャズセッションでの人気定番曲。覚えやすい煌びやかなメロディ、ボサノバ/ラテンの軽やかなリズム、歌いやすい曲です。「昭和歌謡っぽい」と言われることもありますが、ある時期の歌謡歌曲はこういうラテンテイストを積極的に取り入れていましたね。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Hank Mobley, Lee Morgan
1959年に書かれたボサノバ曲を1965年にジャズミュージシャン達が録音したもの。当時日本で全盛だった「ジャズ喫茶」での人気盤のひとつだったようです。まだまだジャズのレコードは高価で、輸入盤しかなかったものもあった時代、コーヒー一杯でジャズレコードを大音響で聴けてリクエストも出来るお店も多かったので、音楽好きの若者の人気スポットでした。
別の項でも書きましたが、Hank Mobleyって1960年代のジャズシーンの中ではちょっとダサいというか、先進的なことをやる訳ではなく聴き易い音楽を届ける派で、トランペットのLee Morganも才気走った天才から徐々にポップな独自路線に移行しつつありました。そんな2人が敢えて「ウケ狙い」と思われても良いと開き直って制作した作品。
ポップなジャズで何が悪い!と思いますが、特に当時の日本では生演奏が聴ける機会も少なくて、勝手に「難しい詩集とか読みながら難しい顔をして聴くもの」とか「深い精神性を感じるもの」とかいう誤解もあって、偉そうに「ジャズを語る」文化もありましたね。ところが実際に人気があってヒットしたジャズ曲の多くは「覚えやすいメロディ(テーマ)」「抑制の効いたアドリブ」の聴き易いものでした。みんながみんなコルトレーンやドルフィーを目を瞑って聴いていた訳じゃなかった、と。
ポイント2:The Gift by Eydie Gormé
1963年録音、ポルトガル語の歌詞があったものを英詩に置き換えて大ヒットしました。完全にポップスです。クセの無い伸びやかな歌唱。
母音の多いポルトガル語の歌詞を英語に置き換えたものって上手くメロディに乗らず不自然なものも多いですが、ここでの作詞家(Paul Francis Webster)はいい仕事をしていると思います。Eydie Gorméはイタリア系でTrio Los Panchosとの共演盤もあってスペイン語などは堪能だったと思いますが、やはり市場の大きさを考えると英語で歌うのが賢明な選択ですね。
Paul Francis Websterの作詞曲には「Secret Love」「The Shadow of Your Smile」「Black Coffee」「I Got It Bad (and That Ain't Good)」などの有名曲があります。いずれも短い歌詞の中に印象的な物語を込めたもの。
ポイント3:Recado
ポルトガル語で「贈り物」「伝えること」という意味だそうです。曲名としても「Recado(これが原題)」「Recado Bossa Nova(英語圏での曲名)」「The Gift(歌モノとしての曲名)」とバリュエーションがあります。
ポイント4:歌詞のポイント
No strings have pearls in a velvet glove
The thing I long for is the gift of love
No ring of gold but a dream to unfold
When all the stars have flown and we′re alone
この「strings(糸)」の解釈が微妙です。文字通りなら「真珠のブレスレット(またはネックレス)の糸」ですが「何かを繋ぎ止めて操るもの」という意味もあります。「no strings attached」というのは契約などで「条件/制約が無い」という形容で使われます。
「velvet(ベルベット)」は毛足の長いパイル織物で、フォーマル衣装に使われることが多く、少しあらたまった高貴なイメージ。
ベルベットの手袋で握った真珠のブレスレットには繋ぎ止める糸なんて不要
(条件付きの恋なんて私には無理)
私が欲しくてたまらないのは無条件の「愛」で出来た贈りもの
すべての星が流れ去って、世界に私たちだけが残されても
金の指輪なんて要らない、夢が広がっていけば大丈夫
The gift of love is a precious thing
A touch of magic on a day in spring
The golden dream every dreamer pursues
Remember darling, never refuse the gift of love
ここは少し陳腐な常套句が並びます。
「touch of」は「少し(そういう要素がある)」という表現です。「A touch of magic」で「まるで魔法のような魅力」。
「The golden dream」は少し抽象的に「成功や精神的充実、望みの成就が叶う夢/幻想」という感じ。実際に夢の中に黄金が出てくる場合も。
「pursues」は「追い求める」で、発音に要注意です。
For love can be a melody that lingers
Or slip like April wine right through your fingers
「linger」は歌詞でよく使われる「いつまでも残る、なかなか消えない」という表現。
「愛」は正体が無いけれど素敵なメロディのようにいつまでも聴こえるもの
でも時には春のワインのように指の間からこぼれ落ちてしまうもの
So kiss me sweet till our secret star
Illuminates the way to Shangri-La
Whatever fate may befall all I know
Is that the gift of love is the greatest gift of all
ここで更にグッと俗っぽい内容になります。
「Shangri-La」は「架空の理想郷(桃源郷)」。
キスをし続けてよ
私たちだけの星が理想の世界への道筋を照らしてくれるまで
これから先にどんな運命が待ち構えているとしても
愛の贈り物以上のものは無いって確信している
主人公が女性だとすると、相手の男性像が全然見えてきませんが、ストレートな求愛の歌ですね。
思わせぶりな導入部から徐々に常套句の連続になって、最後までそんな調子の歌詞で、Paul Francis Websterにしては少し幼稚なレベルの歌詞ですが、メロディに上手く英語をハメるのを優先した結果でしょうか。
ポイント5:曲の構成

ポイント6:様々なバリュエーション
Manhattan Jazz Quintet、1987年ライブ録音
Zoot Sims、1962年録音
くぐもったサックスの音にスキャットが重なって聴こえます。
Major Holley、1974年録音
謎のアレンジ、ベース弾き歌い?
Joanne Brackeen、1994年録音
サンバ寄りのアレンジ
akiko、2003年録音
リズムアレンジが新鮮、英語の発音がところどころ怪しいが・・・
Maysa、1960年録音?
ポルトガル語での歌唱
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◼️歌詞
No strings have pearls in a velvet glove
The thing I long for is the gift of love
No ring of gold but a dream to unfold
When all the stars have flown and we′re alone
The gift of love is a precious thing
A touch of magic on a day in spring
The golden dream every dreamer pursues
Remember darling, never refuse the gift of love
For love can be a melody that lingers
Or slip like April wine right through your fingers
So kiss me sweet till our secret star
Illuminates the way to Shangri-La
Whatever fate may befall all I know
Is that the gift of love is the greatest gift of all
